次世代Pentium Mは日本的モバイル機にミートできるか?

» 2004年09月09日 23時29分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 IntelはIDF Fall 2004で、65ナノメートルプロセスで製造される次世代Pentium M「Yonah」と、それを含むモバイル向けプラットフォーム「Napa」を発表した。中でもYonahは、省電力性能を改善しながらデュアルコアを採用しているという意欲的なプロセッサである。内部アーキテクチャも、現行Pentium Mともデスクトップ用のPentium 4とも異なる新しいものになる。

 しかし、Yonahは平均消費電力では低くなるものの、PCを設計する上での基準となる熱設計電力(TDP)は上昇すると見られている。

基調講演でのチャンドラシーカ氏 基調講演でモバイルプラットフォームについて語るチャンドラシーカ氏

 Intel副社長兼モバイルプラットフォームグループ事業部長のアナンド・チャンドラシーカ氏は「Carmel(現行Pentium M機向けプラットフォーム)からSonomaへの移行では、全く同じシャーシ設計をそのまま維持できるようにした。SonomaからNapaでも同様の移行が可能になるだろう」と話しているが、Napaの実装に向けて技術評価を行っているというあるIDF参加者は異を唱える。「最初に登場するYonahは、現在の14.1インチ(ディスプレイを備えた)薄型軽量モバイル機の筐体には入らない。少なくとも15インチクラスの筐体は必要だ。平均消費電力は悪くないが、TDPが高過ぎるため薄型筐体に入れるのは難しい」

 Intelは最終的にYonahの通常電圧版が、現在の通常電圧版Pentium Mと同等のシャーシ形状に収まると踏んでいるようだ。Yonahを搭載したシステムがリリースされるまで、1年以上の時間がある。その間に問題を解決できると考えている。

 しかし、日本のビジネスシーンでは14.1〜15インチディスプレイを持つ薄型ノートPCではなく、12.1インチクラスの小型ノートPCが企業で採用される事も多い。また、現在の超低電圧版Pentium Mを搭載するサブノートPCも、主たる市場は日本だ。TDPの上昇が与える製品への影響は、より大きくなる。

 TDPが大きく上昇する原因はデュアルコアのアーキテクチャにある。2つのコアが同時に全負荷状態になると、ひとつのコアが全負荷の時よりも多くのトランジスタが稼働することになる。Intel社長兼COOのポール・オッテリーニ氏は質疑応答で「デュアルコア化でTDPは上昇する。しかし2倍になるわけではなく、電力効率が向上するため、処理能力あたりの電力は低下する」と話していた。実際、YonahでもTDPが2倍になるわけではない。だが、それでも小型の筐体に入れるのは厳しい。

Yonahのダイ画像 Napaの中核となるモバイル向け初のデュアルコアプロセッサYonahのダイ画像

 アナンド・チャンドラシーカ氏は低電圧版・超低電圧版が今後どうなるかについて「低電圧版、超低電圧版ともにシングルコアになるだろう。コアのマイクロアーキテクチャも(現行Pentium Mではなく)新しいものになる計画だ」と話す。

 ただし、低電圧版・超低電圧版の仕様や扱いに関しては、現在まさにIntel社内での議論を進めている段階で事態は流動的のようだ。Baniasの設計チームを率いた事で知られるIntel副社長兼モバイルプラットフォームグループマーケティングディレクターのモーリー・イーデン氏は「超低電圧版は確かにシングルコアで決定だ。ミニノートブック(日本で言うB5〜B5ファイルサイズクラス)をサポートするため、16ワット以下の電力設計枠に収める必要がある。しかし、低電圧版に関してはまだ議論が尽くされておらず、デュアルコアで登場する可能性もある」と話す。

 この話が正しければ、これまでバイオ type Uなどの超小型PCに搭載が可能だった超低電圧版Pentium Mは、10〜13インチ程度のノートPCに向けた製品へと位置づけが変わることになる。また、これまで採用例が少なく目立った存在ではなかった低電圧版だが、デュアルコアとなる場合は“超低電圧版よりもやや高速な小型ノートPC向け”ではなく、“より薄型筐体を採用する13〜14.1インチクラス向け”へと変身するかもしれない。通常電圧版のYonahが、TDPの上昇でフォームファクタを維持できなくなるようならば、低電圧版はデュアルコアを採用する方が利にかなっている。

 さて、ではシングルコアとなる超低電圧版は、シングルコア用のマスクで製造される専用ダイなのか、それともデュアルコアのダイを用い、その一部を無効にして出荷するものなのか?

 「デュアルコアの片方を使わないという選択肢はもちろんある。しかし、無効にしただけでは電流のリークは防げないため、全く使われない片方のコアから常に電力が漏れることになる。単純に片方だけを使えばいい、という結論にはならない」とイーデン氏。

 とはいえ、デュアルコア版とは別にシングルコア版シリコン向けマスクを作る必要が出てくれば、マスク代だけでもばかにならない。互換性検証やその後のリビジョンアップなどを考えると、マスクを2つ作ることが本当にリーズナブルかどうかは微妙だろう。

 そもそも、日本でしか売れていない超低電圧版にそこまでする必要があるのか? という意見が出てもおかしくはない。しかし、現在のCeleron Mも、いずれはYonah世代へと移行していくと考えられる。おそらくCeleron Mはシングルコアを採用するだろう。もしそうならば、ダイサイズがおよそ半分になるシングルコア専用マスクを開発してもおかしくはない。

 ある日本のノートPC開発者は「我々のレベルでは、まだ超低電圧版Yonahがシングルコア専用マスクになるかどうかは連絡を受けていない。Dothanが当初期待していたよりもずっと大きな消費電力だったこともあり、少しでも省電力となるならマスクを変更して欲しいとは思うが」と話す。

 果たしてYonahの世代でも、日本的モバイルノートPCにミートしたプロセッサをIntelは提供できるのだろうか? 超低電圧版Yonahは2006年の出荷を予定している。

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