Appleジョズウィアック副社長、iMac G5を語る

» 2004年09月13日 19時15分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Apple ComputerがパリでiMac G5を披露した後、同社ハードウェア・プロダクト・マーケティング担当副社長であるグレッグ・ジョズウィアック氏はMacworld誌の編集者に新しいデスクトップ機のデザインについて語った。iMacの冷却ファンについて、FireWire 800が外された理由、新モデルがどのように位置づけられているか、といった質問に同氏は答えた。

――AppleはG5チップの熱問題がG5ベースのiMacを作るうえでの障害となっていることを明らかにしていました。どのようにして、冷却システムを対応させたのですか。

グレッグ・ジョズウィアック 冷却用のゾーンは3つあります。ひとつはG5プロセッサの上にあり、アクティブなシステムです。高熱化する部品であるハードディスクの上部にもあります。さらにもうひとつが電源とロジックボードをカバーするものです。3種類の異なる冷却ゾーンにおいて、巨大な熱を、複数の小さい熱に転換しようと努力しました。これが、良い熱設計の基本なのです。昔のやり方は、片側にファンを1個、反対側にさらに1個設置して、片方から吸気、もう片方から排気するという仕組みで、その空間に十分な量の空気を通せば冷却できるという考えでした。つまり、うるさいということです。われわれはの新しい手法では、ファンの騒音は非常に静かになりました。ファンをパルスのように制御する技術を使い、超低速で動かし、必要なら速くすることもできるのです。ボード上には、この目的のためにパワーマネジメント技術を導入しています。

――G4 iMacはどの方向にも動かすことができましたが、新iMacの位置調整機能はどうですか?

ジョズウィアック ディスプレイはマイナス5度からプラス25度まで傾けられます。上下方向への移動はほとんどの人が使わないということが分かりました。重要なのは、傾きの方向で、マイナス方向への傾きを実現したところです。これは大事なところで、特に子供たちがコンピュータの前に座っているとき、ディスプレイを見上げがちになるからです。また、左右へのスイベル機能も残してあります。これはベース全体で動作可能なのです。そのためにアームを据え付ける必要はなくなりました。これにより、G4 iMacとほとんど同じことを別のやり方で達成できました。私たちはこちらのほうが、ベターな方法だと考えています。

 このアームに関して付け加えておきますが、このアームは陽極酸化アルミ製で、iMacの重心に位置しているので、容易に傾けることができます。非常にシンプルなデザインに見えるものの中にも、動きを抑制するためのテクノロジーが含まれているのです。運動エネルギーが即座に消されて動きが止まるのが分かるでしょう。このような動きをするものがほかにあるかどうか確かめてください。もし、そのようなものがあるとしたら、動きが止まるのにどれだけの時間を要するかチェックしてみてください。

――新しいiMacの外見はeMacと新しいCinema Displayをかけあわせたものみたいですね。

ジョズウィアック ご存知のとおり、私たちのデザインチームは一つです。Appleはデザインを外注しないので、類似性があるのは疑いのないことです。iPodとも明確な類似性があります。2段成形プラスチックを使っているのは偶然ではありません。不透明の層とクリスタルの層の2層式のプラスチックなのです。これは見た目が非常に優れているのと同時に、機能的な働きも知れくれます。たとえば、CDの裏側を見れば、1曲目が何か、すぐ分かるでしょう。そんな小さいことの積み重ねが、Macを人々から愛されるものにして、あなたがたのような専門誌をインスパイアするのです。PCを使っている人たちが次第に腹を立てていくのとは対照的に。

――下部に隠されているスピーカーについて説明してくれますか?

ジョズウィアック 小さなスピーカーエンクロージャーが下向きになるようデザインされています。その理由は、人々は音を聴きたいだけで、スピーカー自体を見たいわけではないからです。そのためのデザインなのです。個人が聴くためのデザインで、とてもよい周波数帯域を確保しています。

 このモデルでは、真の意味でのオールインワンを実現したいと考えていました。これが、以前の液晶オールインワンiMacで突き当たった壁の一つなのです。というのは、ステレオサウンドを実現するには外部スピーカーをつなげる必要があったのです。iMacをデザインする場合には、究極のものでなければならないと分かっていて、オールインワンを突き詰めて考えると、スピーカーを中に組み込まなければならない。そこでまた、外見のシンプルさ、見た目の清潔さについて妥協せず、良質な分離度とレンジ特性を持ったステレオサウンドを持たせたかったのです。

 このプロジェクトのゴールを達成する方法については特筆すべきもので、それは常にiMacとは何かという問いかけにあてはまるものです。iMacの魂は、4つのキーワードに集約されます。第1に、オールインワンのエレガンス。箱から取り出して、プラグインし、作業をし始める。すべてそこにあるから、ジグソーパズルを組み合わせるために四苦八苦する必要はない。

 第2に、究極のシンプルさ。このコンピュータを見れば、シンプルなものだということがわかります。iLifeやMac OS Xのユーザー体験がどのようなものか、あなたがたは誰よりもよくお分かりでしょう。PCでできることよりも、ずっと簡単なのです。

 第3に、iLifeに完全に適したものである必要がある。デジタルライフスタイルに最適のものでなければならない。つまり、写真や音楽、ムービーを自分のスペースに取り込み、扱うときです。iMacはデジタルライフスタイルを取り扱うときの最良の方法でありたいのです。

 第4は、革新的なデザインです。いつもそうですが、まったくのゼロからスタートしています。一般的なコンピュータメーカーのように、OEMメーカーのところへ行って、ロゴをどこに入れるか決めるだけというのと違い、われわれの顧客のニーズに合致するよう、ゼロからコンピュータをデザインすることができます。この4つのポイントは1998年でも2002年でも守られ、2004年でもiMacのアイデンティティとして遵守されてきたのです。これらのデザインゴールの達成に関しては、これまでのどのiMacよりも成功したと思っています。

――より軽く、小型になったiMacは、持ち運びもしやすいということですね。このiMacを持って家の中を移動するということを想定していますか?

ジョズウィアック 家の中のどこにでも、学校のどの場所でも、小さなオフィスのさまざまなところに移動でっきるようなコンピュータを作りたいと思っていました。気分次第で変えることができるような。あるときはリビングにあったほうがいいと思うかもしれないし、後で寝室がいいと思い直すかもしれない。その後はキッチンに移動させたいかもしれない。気が変わるたびにヘラクレス的な苦労をするのではいけない。われわれにはPCを持っている友人がいるが、彼らの最初のセットアップときたら、死にそうになるくらいです。いくつもの部品すべてを移動させるのに苦労し、コンピュータそのものの移動にも四苦八苦する。この20インチiMacに無線LANを組み込んでおけば、コードは1本、電源ケーブルだけですみます。インターネット接続はAirPort(AirMac)で、キーボードやマウスとの接続はBluetoothですみます。だから移動するときにはシャットダウンし、電源プラグを抜いて、どこでも好きなところに運べばいい。そして電源ケーブルを差して、パワーオンすれば、仕事に戻れるのです。

――背面部分の取り外しはどうするのですか?

ジョズウィアック 3本のネジがありますが、完全には外れないようになっています。だから、「ああ、どうしよう。ネジをなくしちゃった」といって慌てることはないのです。ネジを緩めるだけで、背面のフタは開き、下向けに出てきます。これで背面は外れます。これでマシンへのフルアクセスが可能になります。AirPortの追加は簡単です。アンテナはコンピュータ本体に組み込まれているので、AirPortカードを手に入れて、アンテナジャックをつなげれば、すぐに動き出します。標準的な400MHz DDRメモリを2Gバイト、RAMとして内部のスロットに追加することができます。

――その他のマシン内部について解説してください。

ジョズウィアック 電源部はが床にゴロンと転がっている、ということはなくなりました。本体の中にすべて収納されています。これは本当に画期的なことです。このiMacは、これまでで最もコンパクトなデザインであり、内部へのアクセスも最も簡単。タブがついているので、作業がしやすく、サービス担当者だけでなく、ユーザー本人でも増設が可能です。マザーボードには4個のインジケータランプが付属しており、どのランプが点灯しているかで、それぞれのサブシステムの状態が分かるようになっています。

――ポートについて、なにか特別な配慮はされてますか?

ジョズウィアック 標準アナログオーディオ出力が付いていますが、AirPort Expressのようなコンボジャックもあります。これにより、デジタルオーディオ出力が可能で、例えば、DVDプレーヤーから5.1チャンネル信号を取り出すことも可能です。

――FireWire 800インタフェースがないのはなぜ?

ジョズウィアック FireWire 800を魅力的に感じるのは、プロフェッショナルの人たちです。そして、実のところ、プロフェッショナルにとっては、スピードよりもケーブル長のほうが大きなメリットなのです。

――なぜSerial ATAを採用したのですか?

ジョズウィアック これは、Power Mac G5で採用したものに由来しています。AppleはSerial ATAを採用して出荷した最初の企業の一つです。多くの意味で、これが関係しています。

――これまで、iMacの中にアクセスするのは週末にやるような大プロジェクトになるか、技術者を必要としていましたが、これならずっと簡単にできそうですね。

ジョズウィアック このiMacが本当に光っているのは、きわめてアクセスが簡単だというところです。iMacの内部へのアクセスは、これまでは少々困難を伴うものでした。エンジニアチームに、「小さくしろ、もっと強力にしろ、もっと静粛にしろ」と言ったとしたら、部屋から蹴り出されなかったとしても、「OK。じゃあ、そのなかから2つだけ選んでくれ」と言われるでしょう。今回は、PowerBookと同様に、「うちでは全部実現できる」と返答してくれました。iMacの前モデルよりもずっと小さくなっています。G5プロセッサでより強力になり、静粛性も向上しました。ささやき声が32デシベルのところを、25デシベルという騒音レベルを達成したのです。iMacの前モデルは28デシベルでした。

――iMacの開発で得られた成果はG5 PowerBookの実現に役立ちますか?

ジョズウィアック PowerBookの中にどんなものが入っているかということを考えれば、PowerBookの1インチ以下という厚みと比べてiMac G5の2インチという奥行きは余裕ありと言っていいでしょう。デスクトッププロセッサをノートPCに流用するという、PCの連中がやってるような戦艦スタイルの製品を作りたくはありません。今はiMacの成果から学びつつあるところですが、「おお。この画期的な技術があれば、来月には出せるぞ」というものでないことは確かです。

――iMac G5の出荷はいつ頃ですか? フィル・シラー氏は9月中頃と言っていましたが。

ジョズウィアック 現実的な見方をしてみましょう。それは、出荷を開始するのが9月中旬ということです。立ち上がる勢いはゼロからフル生産までのいずれか、ということになります。初日はこれだけの需要があるわけなので、不可避的に品不足は起きるでしょう。われわれの製品に大騒ぎしていただいているのはよいことで、それに水を差すことはしたくないのですが、現実として新製品はすべて供給不足になってしまうのです。



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