このように、PanasonicがノートPCで必要と考える「7項目」でバランスを取りつつ、すべての要素で秀でたスペックを実現しようとすると、日本のが持つ高い生産技術が必要となる。
「コア技術で差別化し、海外生産では不可能な製品が必要。この技術は生産拠点を海外に置いているメーカーでは実現できない」」という彼らの言葉に、コスト競争力では不利になりがちな日本に生産拠点を構える理由があるといってもいいだろう。
その、高い生産技術を集約している神戸工場。細分化するユーザーの需要に対応するために、生産ラインを自由に構成できる「セル生産」や、TOUGHBOOKシリーズが誇る堅牢性を生み出した各種環境テスト機材など、ユニークな生産方法を率先して導入してきている。その神戸工場で、さらなる製品品質向上のためにいま試みられているのが「KISSシステム」だ。
「Kobe Intranet Solution of Super-Production」と名づけられたこのシステムは、生産設備、製品部材をバーコードで印字したシリアル番号で管理し、その情報をイントラネットで共有するもの。常に動作状況のデータを集積しており、エラー発生率がある一定の値を超えると、生産設備の場合はその部分のメンテナンスを促し、製品部材の場合は不具合発生の可能性をサポートセンターなどに告知する。
このほかにも、ユーザーごとの細かいカスタマイズに対応しながら、発注から3日以内でユーザーに製品を配送する「My Let's倶楽部」や、企業ユーザーに対してPC単体だけでなく、周辺機器やセキュリティー/ネットワーク設定など総体的なシステムとして納入する「コンフィグサービス」など、ただ作るだけでなくユーザーの満足度を高める質の高いサービスの供給源としても、神戸工場は機能し始めている。
ほかのメーカーでは真似できない、日本発のノートPCをこれからも供給しつづけていくPanasonic。軽量化を突き進めたRシリーズ、内蔵ドライブを持ちながらも軽量化を果たしたWシリーズともにその完成度は高い。しかし、高いがゆえに、それが、ユーザーにインパクトを与える次世代製品の登場を阻んでいる、といえなくもない(先日発表された秋冬モデルは、既存モデルのマイナーバージョンアップである)。
「Let's noteシリーズの中で一番バランスがとれていて完成度が高い」と自ら認めるLet's note Rシリーズを超える製品をいかにして開発するか。開発スタッフが「途方にくれる」とこぼすほど難しい問題に、神戸工場はいま取り組んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.