モデルチェンジした新PIXUSの実力は――「PIXUS iP8600」「PIXUS iP7100」(2/3 ページ)

» 2004年10月26日 11時00分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]

PIXUS iP8600とPIXUS iP7100の画質差は、小さくもあり、大きくもある

 今年のキヤノンが掲げた画質に対するコンセプトは、プリント写真としての「好ましさ」を重視、である。基本的には従来と同じ記憶色の発色だが、色調の基礎である「ニュートラルグレー」を重視している。ハイコントラストと高彩度の路線も踏襲し、従来よりもトーンカーブをS字にしたという(コントラストアップ)。

 そこでiP8600とiP7100の画質だが、両者の違いは特色インクのレッドとグリーンの有無だけだ。全体的な画質傾向と合わせて、特色インクがもたらす画質差もチェックしてみたい。印刷サンプルの出力には、付属の印刷ツール「Easy-PhotoPrint」を使った。

 画質優先の設定にして、自動画像補整処理のオンとオフの出力も比較している。というのも、Easy-PhotoPrintの自動画像補整処理をオンにして印刷すると、コントラストが高くなり(画像によっては明度と彩度も高くなる)、階調性が損なわる場合もあるからだ。この傾向は、従来のPIXUSシリーズから各モデルで共通して見られた。

 PIXUSシリーズを購入したら、Easy-PhotoPrintの自動画像補整処理をオンとオフで印刷してみて、違いを確認することをおすすめしたい。ユーザーの好みも多分に影響するが、オンのほうがよい画像と、オフのほうがよい画像に分かれるはずだ。

 まずは「Easy-PhotoPrint」で出力した画質だ。全体的な傾向では、iP8600とiP7100の違いはない。自動画像補整処理をオンにすると、ハイコントラストでも階調はしっかり表現されており、空は青く、人肌には適度な赤みなど、記憶色重視の発色がより洗練されているように感じた。S字のトーンカーブを実感できる画質だが、派手になりすぎない程度でうまくバランスを取っている。キヤノンがいう「好ましさ」や、第一印象、メリハリといった観点では、文句の付けようがない画質だ。粒状感など皆無に等しい。

 少しネガティブに評価すると、S字カーブの副作用も垣間見える。シャドウとハイライトに力強さがある反面、中間調の印象が弱く、発色に味わい深さがない。このあたりは完全に好みの問題なので、画質の優劣とは違う。自動画像補整処理をオフにすると、コントラストが弱まるため、より自然な雰囲気になる。

■iP8600

(自動画像補整処理オン)
(自動画像補整処理オフ)
Easy-PhotoPrintの自動画像補整処理をオンにした出力は、青や赤の彩度とコントラストが高くなる。ハッとする高画質だが、人物の黒髪などでシャドウがつぶれる場合もある。自動画像補整処理をオフにすると、コントラストと彩度が弱まり、中間調のボリューム感が増す

■iP7100

(自動画像補整処理オン)
(自動画像補整処理オフ)
Easy-PhotoPrintの自動画像補整処理をオン/オフしたときの画質傾向は、iP8600と同じだ。全体的には、iP8600よりわずかながらコントラストが低い

 続いてiP8600とiP7100の色域差だ。一見しただけではまったく違いが分からないのだが、高彩度の緑と赤で確かに差がある。iP7100では色が飽和する彩度でも、iP8600は階調が見える。具体的には、金属や夕日の赤、植物の緑といった要素で、iP8600のほうが発色に深みがあるのだ。これをどの程度の差と感じるかは、ユーザーによってまったく変わってくるだろう。

■iP8600&iP7100その1

iP8600
iP7100
「赤い実」のところで、iP8600とiP7100の色域の差が出ている。iP7100は「赤をより赤らしく」表現しているが、色飽和している部分が散見された。対してiP8600は、iP7100より赤の発色は控えめなものの、高彩度な部分の微妙な階調も表現できている

■iP8600&iP7100その2

iP8600
iP7100
菖蒲の葉のグリーンで、iP8600のほうが色に深みがある。相対的に見れば微妙な差ではあるのだが、色にこだわりを持つ人にとっては、大きな違いに感じられることだろう

フチなし印刷をスピードアップ

 従来のPIXUSシリーズも、上位モデルは圧倒的な印刷速度を誇っていたが、新モデルはフチなし写真印刷がさらに速くなった。その秘密は、用紙の上端と下端で使われるノズル数だ。画質低下(横すじ)を避けるため、従来は用紙の上端と下端では128ノズルしか使われなかった。今年のiP8600/iP8100/iP7100という多色インク機は、従来比2倍の256ノズルで用紙の上端と下端を印刷するため、フチなし印刷の速度が向上したのだ。

 実際の印刷速度はグラフの通りだが、はがきやL判のフチなし印刷は驚くべき速さだ。画質的に見ても、「標準」と「きれい」の差はごくわずかである。「標準」では解像度が落ちるため、出力を凝視すれば、「きれい」よりもドット密度が低いことを判別できなくはない。とはいえ、通常は「標準」で十分な精細さだ。

 なお、iP8600/iP8100/iP7100では、ドライバの印刷品質設定が変更されている。PIXUSシリーズは全部で5段階の印刷品位を持ち、用紙種類によってプリセット設定の「きれい」や「標準」に割り当てる印刷品位が異なっていた。従来は、最高フォト用紙のプロフェッショナルフォトペーパーが「きれい=品位2」、「標準=品位3」だった(最高画質は品位1)。

 iP8600/iP8100/iP7100では、普通紙を除くすべての用紙種類で、「きれい=品位1」、「標準=品位3」に変わっている。従来のようにカスタム設定画面を開かなくても、ドライバの第1画面で最高画質に設定できるようになったわけだ。これもフチなし印刷の速度アップに伴う変更だろう。

iP8600/iP8100/iP7100のドライバでは、印刷品質で「きれい」を選ぶと、最高画質の「品位1」と同じ設定になる(普通紙以外の用紙種類の場合)

グラフ■印刷速度比較

印刷時間は、紙送り開始から排紙(トレイに落ちる)までを計測。さすがに最上位のiP8600が速いとはいえ、iP7100もプリンタ全体の中では間違いなく最速クラスだ

選択のポイントは画質と予算

 しつこいようだが、iP8600とiP7100の違いは、インクの色数と表現可能な色域だけといってよい。選択にあたっては、予算が大きなウェイトを占めるだろう。

 インクの色数はランニングコストにも影響するものの、L判フチなし1枚あたりのカタログ値は、iP8600が15.6円、iP7100が15.4円とわずかだ(用紙コストを除く)。確実に存在する色域の違いをどれくらい重視し、そこにお金をかけられるかどうかで決まる。

 参考までに、ITmedia Shoppingにおける最安値と、大手量販店価格を記しておこう。iP8600の最安値が3万8500円で量販店価格が4万6800円、iP7100の最安値が2万6200円で量販店価格が3万1800円だ(いずれも2004年10月25日現在)。詳しくは各リンクをクリックして調べてほしい。

付属のツール類も自動両面印刷に対応

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