「Dixel」と「セキュアLSI」でコンテンツ保護のデファクトスタンダードを狙う富士通

» 2005年04月19日 18時05分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 海外のPCメーカーがコストパフォーマンスで攻勢をかけてくるなか、テレビの録画をはじめとしたAV関連機能で生き残りを図っているイマドキの国内メーカー製PC。AV関連の機能とその品質こそが、日本のメーカーが優位になれるところ、と国内のPCメーカーは口をそろえてアピールしている。

 今や、PCでテレビが見れて録画できるのは当たり前で、家電テレビで培ったノウハウを取り入れた「美しい画面作り」で差別化を図っているのが2004年から2005年にかけての傾向となっている。

 その典型的な例が、ソニーの「Motion Reality」、東芝の「Qosmioエンジン」、NECの「VISITAL」といった独自の高画質機能の実装や、日立製作所の「Wooo」、シャープの「AQUOS」といったすでに知名度のあるブランドとのコラボレーションだろう。

 そのような競合他社の動きと比べて、静かだったのが富士通。ただ、それは他社のように「高画質をアピールするためのブランド」をわざわざ立ち上げなかっただけの話で、PCでテレビ関連機能を利用することについては早い段階から取り組んでおり、テレビ映像の高画質化機能もすでに既存のPCに持たせている。

 その富士通が、夏モデルのメインテーマとして掲げたのが「Dixel」という高画質化技術。PC関連の製品発表会を富士通が行うのが非常に稀なことなのだが、その稀な説明会でDixelの説明に多くの時間を割いているあたりからも、富士通がかける期待の大きさをうかがい知ることができる。

 そのDixelであるが、競合他社のような、ただ「画面をきれいに表示できます」にとどまる技術ではない。もちろん、高画質化という点においても、Dixelはチューナーユニットに実装された高画質化回路とDixelフィルターと呼ばれるソフトウェア、そして液晶ディスプレイに組み込まれた制御エンジン、と放送を受信してその映像を表示する流れの全体が含まれる、大掛かりな高画質化技術全体を指す名称でもある。

高画質化技術「Dixel」は、3次元ノイズリダクション、10ビットADコンバータ、フルデジタル信号処理をサポートした高画質化回路に、画質補正ソフトウェア「Dixelフィルター」、シャープネスや各種エンハンサを行うLCD回路、高輝度高速応答の液晶ディスプレイなど、放送受信から映像表示までのすべての過程における実に広範囲なハードウェアとソフトウェアで構成される

 キャプチャーカードなどで、3次元Y/C分離やノイズリダクションなどを施す高画質化は、今や当たり前のように行われているが、このように放送の受信から映像の表示まで一貫した流れの全体で高画質化を施せるのは、家電も開発している富士通のような限られたメーカーになるだろう。

 そういう意味では、日本のPCだから実現できた高画質化技術としても注目したいDixelだか、しかし、富士通が本当にアピールしたいのは、デジタル放送をHD画質のまま保存し、かつHD画質のままPCでの再生を可能にしたセキュアLSIの存在だ。

 供給されるコンテンツの扱いが簡単にできるPCは、その簡便さゆえに、著作権などの権利保護が難しいといった一面を持っているのは周知のとおり。そのため、コンテンツ所有者がその供給に慎重であったり、地上デジタル放送への切り替えにあたって、PCにおけるAV関連機能がどうなるのか、といったことが問題になっている。

 この解決のために、現在、主に権利保護の面からさまざまな方法が検討されている段階であるが、富士通の開発したセキュアLSIはPCでHD画質の録画と再生に対応した初めての市販品というだけでなく、コンテンツの権利をPCでも保護できる有力な解決方法のひとつとして提示された技術、ということにもなる。

セキュアLSI内部の処理は主に4ステップに分けられる。B-CASカードを差したPCで受信したデジタル放送の保護されたコンテンツを録画する場合、受信後復号されたデータに対して、録画のために暗号化され、その状態でHDDに保存される。保存されたデータを再生するときは、いったんHDDから読み込んだデータを復号化したのちに、再生のために再度暗号処理が施されてからメモリに読み込まれ、そこで復号されながらデコード処理が行われる。富士通は「メモリを常時監視して、展開したデータを外部から不正にアクセスされないようにしたのがもっとも重要な部分」(山本正巳氏 パーソナルビジネス本部副本部長)と説明する

 富士通はセキュアLSIで実現されるデジタルコンテンツの保護技術を含めたDixelを彼らだけで使うのではなく、競合他社やサードパーティにも提供していく意思があることを明らかにしている。もともと、セキュアLSIで使っている権利保護技術はARIBに準拠しているなど、広く利用してもらうことを考慮して開発されている。

 すでに説明したように、高画質化のための技術全体を示すDixelはチューナーユニットやLCD制御回路、液晶ディスプレイまでのハードウェアとソフトウェアを含めた多岐にわたるもの。「セキュアLSIもデジタルコンテンツの高画質化を実現するものなので、Dixelを構成するひとつの部分」と富士通の斎藤邦彰氏(パーソナルビジネス本部パーソナルシステム事業部長)は説明する。

 その斎藤氏はサードパーティに対するDixelの供給形態について「ハードウェアとソフトウェア含めた形になる」と述べている。また、セキュアLSIについても完全なブラックボックスということではなく、多くのサードパーティに利用してもらえるように、その仕様をオープンにする考えもあるそうだ。

 さらに斎藤氏は、PCで最初にHD画質の録画と再生を可能にしたDixelとセキュアLSIの組み合わせを広く普及させることによって、現在いろいろな方法が検討されているPCにおけるデジタルコンテンツ利用技術の「デファクトスタンダード」となることも視野に入れていることも示唆している。

 「Dixelは決して家電に対する挑戦状ではない」とは発表会で富士通のPCビジネスへの取り組みを紹介した伊藤公久氏(経営執行役 パーソナルビジネス本部長)だが、実は、PCでHDコンテンツを利用するためのデファクトスタンダード規格を狙う、という壮大な夢をDixelとセキュアLSIで実現しようとしているようだ。

デジタル放送に対応したチューナーカードに実装されたセキュアLSI。斎藤氏によると、このデジタルチューナーとセキュアLSIを組み合わせたカードをパーツベンダーなどに提供する可能性もあるという

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