アーク情報システムの「BOOT革命/USB Ver.1」(以下、BOOT革命)は、非常にシンプルな仕組みのツールである。BOOT革命をWindows XP(またはWindows 2000 SP4以降)にインストールし、外付けのUSB HDDをUSBポートに接続する。その状態でCドライブの内容の外付けUSB HDDに丸ごとコピーし、PCを再起動すれば、その外付けUSB HDDからWindowsを起動できるようになる。
BOOT革命の機能はこれだけだ。この機能のどこが“世界初”(2005年6月同社調べ)なのか、少し説明が必要だろう。
PC(PC/AT互換機)で起動用HDDとして利用できるのは、IDE、SerialATA、SCSIインタフェースで接続されたものが原則だ。USBインタフェースで起動がサポートされているのはFDDとCD-ROMやDVD-ROMなどの光学ドライブであり、USB接続の外付けHDDは、PCのBIOSがサポートしていない限り起動ドライブとして利用できないのだ(Macintoshの中には、外付けUSB/FireWire HDDからの起動をサポートしているものもある)。
つまり、多くのPC/AT互換機では外付けUSB HDDにOSをインストールして利用することはできないことになる。BOOT革命は、BIOSがサポートしていないPCでも外付けUSB HDDからWindowsを起動できるようにするユーティリティであり、その仕組みが“世界初”ということになるわけだ。
PCの電源を投入してからWindowsが起動し始めるまでには、いくつかの起動シーケンスがある。ほとんどのPCでは、おおまかな起動シーケンスは以下のような手順になる。
(1)電源オン
(2)ビデオBIOSの読み込み
(3)BIOSの読み込み
(4)起動可能なドライブを検索
(5)起動HDDのMBR(マスターブートレコード)を読み込み
(6)Boot Loaderを読み込み
(7)OSが起動
上記のうち(1)〜(4)まではBIOSによって制御されており、(5)以降の手順が、サードベンダーが手を加えることができる起動シーケンスとなる。
アーク情報システムは、(6)のBoot Loader(同社では「起動コード」と呼ぶ)を新規に開発し、USB HDDからの起動を可能にした。詳細な仕組みは「企業秘密」とのことで公開されていないが、既存のCドライブのMBRにオリジナルBoot Loaderを組み込み、そのBoot Loaderで外付けUSB HDDをHDDからの起動に必要なINT13HのBIOSコールなどにリダイレクトさせていると想像できる。このオリジナルBoot Loaderによって、USBに接続されたHDDからの起動が可能になっているわけだ。
BOOT革命のインストールCDには、このBoot Loaderの起動FDイメージが入っており、HDDにBoot Loaderが組み込まれていない場合でもインストールCDや起動コードFDを利用して、外付けUSB HDDから起動できるようになっている。
外付けUSB HDDからWindowsが起動できるようになると、PCの使い方のどこが変わるのだろうか。
たとえば筆者のようなPC関連の執筆業に携わる者にとって、BOOT革命は文句なしで有用なツールである。筆者は原稿作成上、OS環境をいくつか用意しており、それを5インチベイ用のリムーバブルHDDケースを使って切り替えて使用している。
しかしBOOT革命を使えば、リムーバブルHDDケースの入れ替えや、個別のリムーバブルHDDケースにWindows XPをそれぞれインストールして環境構築を行う時間の短縮が可能になる。複数台のUSB HDDさえ用意すれば、原稿作成用のさまざまな環境をBOOT革命で構築して切り替えることができるようになるからだ。
ソフトウェアのレビュー記事などでは、β版をインストールして試用することが多いが、β版のためシステムに不具合が出ることもある。しかし、外付けUSB HDDから起動したOSであれば、不具合が出ても別のHDDに切り替えて利用すればよいし、内蔵HDD(Cドライブ)上のOSにも影響はない。
ソフトウェア開発などに携わる人にとっても、同一のPCを使って複数の環境を手軽に切り替えながら検証作業が行えるわけで、非常に有用だろう。個人ユースも、DVDライティングや3Dゲーム、TV録画など用途に合わせて環境を切り替えながら、PCを利用することができる。
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