うるさいヤツにはフタをしろ!──ソルダム「ALCADIA X-1」PCケース(2/2 ページ)

» 2005年07月28日 15時38分 公開
[河野寿,ITmedia]
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騒音をまき散らすパーツを詰め込む

 眺めて感心ばかりいても仕方がないので、実際にこのケースがどのように効果があるのか試してみよう。

 比較のために持ち出したのは某通販メーカー製のハイエンドマシン。Pentium ExtremeEdition 840にグラフィックスカードがRADEON X850XTという、なかなか豪勢な構成である。

 さすがに冷却を重視したPCケースに収められているので、熱でどうにかなることはないが、かなりの騒音を発する。騒音レベルを調査するにはなかなか適したマシンといえるだろう。なお、このほかに熱や騒音を発しそうなパーツとして7200rpmのHDDが2台と記録型DVDドライブがつていた。

 最初に、通販メーカーのPCケースに入れた状態で、温度と騒音の大きさを測定してみた。温度は内部と本体背面にある電源ファンと冷却ファンの出口の3カ所で、音に関しては、本体側面から30センチと前面から30センチ離れた場所で、3DMark05を動作させているときの騒音と温度を測定した。このときの室温は摂氏27.7度とやや高く、バックグラウンドの騒音レベルは32.9dBAだった。

 結果は以下の通りである。

温度

内部 33.3℃
電源ユニット背面 40.5℃
冷却ファン排出部 33.8℃

騒音レベル

側面 63.4dBA
正面 51.1dBA
 某通販メーカー純正PCケースでの測定結果

 さすがに冷却性能に関しては文句のつけようがなく、しっかり冷却されている。一方で、騒音は、CPUクーラーファンとRADEON X850XTのクーラーファンとが競うように音を奏でていて、まるで飛行中の機内のように「ぶーん」という音が鳴り響く。側面で64.3dBAという値は「ややうるさいオフィス」に相当するレベルだ。

 では、これをALCADIA X-1に載せ替えたら静かになるのだろうか? さっそくパーツを入れ替えてみよう。

 基本的には、HDDやマザーボードをそのまま載せ替えたので、条件はほぼ一緒だが、試用したALCADIA X-は、電源ユニットが搭載されていないモデルだったので、EnermaxのEG485Pを取り付けてテストした。

 本来は電源ユニット付きのALCADIAにするか、あるいは元の電源ユニットを載せ替えてテストすべきだろうが、機材の手配あるいは時間的な制約でできなかった。この点だけはご承知願いたい。

 二重構造になってると言っても、内側のフタを外してしまえば基本的には普通のATXケースと同じなので、取り付けは非常に簡単である。ただ、背面のいわゆるI/Oパネルがマザ−ボードのコネクタ類と合致しないのでオープンのまま使うしかなかった。せっかくいろいろな部分を二重化したり、覆ったりしてあるのに、ここだけ隙間ができてしまうのは忸怩たるものがあるが、まさかパテを詰めるわけにもいかないので、そのままにしておいた。

 二重構造になっているだけにケースの開閉にはやや手間がかかったが、筐体内部の空間には余裕があるので、比較的すんなりと載せ替えが進んだ。組み立てが終了したところで、さっそく電源を入れてみる。

配線が雑で申し訳ないが空間の余裕はかなりあるので組み立ては簡単

確かに騒音は減少したが……

 電源スイッチを押した段階では静かに思えたので期待したが、CPUやグラフィックスカードのクーラーファンが動き出すとやはり大きな音がする。測定結果は以下の通りだ。

温度

内部 34.0℃
電源ユニット背面 33.1℃
冷却ファン排出部 30.1℃

騒音レベル

側面 60.4dBA
正面 51.2dBA
 ALCADIA X-1での測定結果

 たしかに側面での測定値は減少しているのだが、“劇的に静かになった”わけでもない。ほんのわずかであるが、正面での測定結果は純正PCケースが勝ってさえいる。

 「こ、こんなハズでは…」と崩れおつそうになったが、騒音計をもちつついろいろ探ってみると、どうやら背面のI/Oパネルあたりから音が漏れている。先にも述べたように、「ALCADIA X-1」ではぴったりするI/Oパネルがなかったために、隙間があいたままになっている。この隙間が原因のひとつのようである。

 もうひとつはRADEON X850XTの排気口だ。最近のグラフィックスカードは分厚いクーラーユニットを実装しており、排気のための専用スリットを背面に取り付けている場合がある。今回テストで使ったRADEON X850XT搭載カードもこのケースで、内部の騒音をそのまま外に伝えることになるはずだ。

このサイズにあうI/Oパネルがないので隙間があいている

 せっかくいろいろな部分に工夫を凝らしたPCケースではあるが、背面にこれだけ音が漏れる要因があっては効果が限定されてしまうのも仕方ないのかもしれない。

 最後に、念のため二重構造が本当に意味があるのか、ケースを開けた状態と内側のパネルを閉めた状態、外側のパネルを閉めた状態の3通りで測定してみた。

側面 前面
オープン 67.3dBA 53.9dBA
内側クローズ 63.9dBA 57.0dBA
外側クローズ 60.6dBA 51.8dBA
 二重構造の効果を調べる

 これを見る限り、確かに二重構造の効果はあるようだ。内側のパネルを閉めた状態で前面の騒音が妙に大きくなっているのが不思議だが、何度測定してもこの傾向に違いはなかった。フタを開け閉めしながら確かめてみると、蓋を閉めることで内部に音が反射して音の周波数が変わっているようである。このあたりが騒音レベルに微妙に影響しているのかもしれない。

 「ALCADIA X-1」は電源ユニットレスで約4万円と決して安くはないが、静音性能をある程度実現しつつ確実に冷却してくれるATXケースとしては悪くない。ただ、本文中でも述べたように、あまりに度はずれた遮音性能は期待すべきではない。

 このPCケースを恒久的に使うのであれば、きちんと隙間なくはまるようなI/Oパネルを利用し、グラフィックスカードも冷却ファンの排気を外部に出さないタイプのものを採用するなどの工夫が必要だろう。内部の冷却に関してはデータから見ても十分に余裕があるので、グラフィックスカードの熱が悪影響を及ぼすことはないはずだ。

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