前編では新しく造られる秋葉原の街の外観を中心に話を進めた。ただし都市計画は、新しい建物や遊歩道といった「ハード」を造るだけではない。街のカラーを方向付けるための「ソフト」の面も、当然計画に盛り込まれている。その秋葉原のまちづくりの理念を探ってみよう。
東京都と千代田区が掲げる秋葉原地区再開発のコンセプトは「IT産業の世界的な拠点となりえるまちづくり」だ。すでに“AKIBA”は世界最大級の電気街として世界中に知られる。これに加え秋葉原クロスフィールドなどにより「産学連携」の重要拠点として、IT関連を研究したり、その研究の成果を発表する機能なども街に加わった。
千代田区は「これまで商売の街だった秋葉原に企業や大学の研究室が入るスペースを設けることで、インプットとアウトプットが1つの街の中でできるようになる。さらに大規模なイベントホールで発表することにより、アウトプットの能力はかなり高められると考えている」と話す。
この環境を設けたことによる波及効果について、行政と事業者、秋葉原振興会で構成する秋葉原の再開発協議会「Aテーブル」関係者はこのように述べている。
「ITベンダーから見た秋葉原の存在価値がこれまで以上に高くなる。うまくいけば地の利を活かすために、周辺の貸しオフィスに事務所を構えるベンダーが集まり、秋葉原を取り囲むより大きいIT産業街が誕生して欲しいと考えており、我々もそれを望んでいる」
米国のシリコンバレーはスタンフォード大学から技術や人材が供給され、世界的なIT企業の拠点となった。秋葉原ダイビルには、公立はこだて未来大学、筑波大学、デジタルハリウッド大学、東京大学、東京電機大学、徳島大学、人間総合科学大学、明治大学、稚内北星学園大学、産業技術総合研究所などの大学や教育機関、研究所が入っている。秋葉原にも「産」と「学」の要素が強く関わることで、ITベンダーの拠点に成長して欲しいという強い希望が盛り込まれている。
街が活性化すれば、当然利用する人が増える。いままでの秋葉原が抱えていた駐車場が少ないという問題やホテルなどの宿泊施設の少なさ──人がさらに集まるために必要な施設がやや不足していたことは当然認識していたという。全国、さらには世界中の人が集まっても街中で機能するよう駐車スペース含むインフラ、宿泊施設の増強なども重要視し、計画されている。
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