ソニーのVAIO type U VGN-UX50は泣けるか!?プロフェッサーJOEの「Gadget・ガジェット・がじぇっと」!(2/5 ページ)

» 2006年07月24日 11時36分 公開
[竹村譲,ITmedia]

時代の変化とモバイルPCに求めるモノ

photo 筆者のモバイルPCの原点となったエプソン「ワードバンクノート」

 筆者のモバイルPCのルーツは、今から約20年前の1987年にエプソンから発売された「モバイル通信ワープロ」の「ワードバンクノート」という機種であった。インターネット以前、パソコン通信の創世記に、単三形乾電池で動作する通信ワープロを持って渡米、シアトルのホテルから日本にいる同僚にEメールを送ったのが最初の国際Eメールだった。もちろん、当時から世界中に張り巡らされていた社内専用のEメールシステム以外のパーソナルな世界でのお話だ。

 「ワードバンクノート」のモバイルPCとしての魅力や特長は、その後、筆者が公私ともに多くのモバイルPCやモバイルガジェットと関わることの原点となった。UX50を見て思い浮かぶのは、日本IBMが、今から11年前の1995年9月に発表した総重量630グラムのPalmTop PC110だ。

 ウルトラマンが広告のキャラクターとして採用されていたので、別名「ウルトラマンPC」というペットネームが付けられていた。630グラムは、ほぼ、UX50のHDDモデルが大型バッテリーパックを搭載したときと近い重量だ。大型バッテリーパックを買えなかった筆者のUX50は、HDDモデルで520グラムだ。

photophoto 11年の時間の開きは大きいようで、意外と小さい

 PalmTop PC110は当時、既に普及を始めていたハンディビデオレコーダーの充電池を使い、パソコンの専用電池は進歩しなくても、より加速的に進歩すると予想されたハンディビデオ電池の恩恵をこっそり受けることの出来るというなかなか、計画的で姑息なコンセプトだったと記憶している。PalmTop PC110とUX50、いずれも液晶画面と小さくてもPCと相似形のキーボードを搭載し、PCカードスロットとポインティング・デバイス搭載したIBMPC互換機だ。

photo いずれもキーボード入力、手書き入力、音声電話機能、PCスロットなど予想外に共通項目が多い
photo 当時話題になったWINGJACKはその後何故かIBM以外の多くのモバイルPCや電子手帳などに多く採用された

 ピークを少し越えたケータイ電話と、かなり昔に最盛期を終えたPDAが融合し、ウィルコムのW-ZERO3の様なケータイガジェットが生まれ、ビジネスマンがモバイル環境で必要とするかなりの日常業務がその上で実現出来るようになった。

 しかし、筆者を含め、世の中に溢れるパソコンと全く同じ動作をする小さなパソコンを、多少の使い勝手の悪さは棚に上げて、何故か求めて止まない層がいる。これらの心理は、オフィスとモバイル環境による業務の分担や、連携の仕組み、そしてその完成度が完璧であっても殆ど影響は受けない。それは個々の人間が持つ過去の実体験に基づいた要求によるモノだからだ。

 筆者を含め、パソコンが仕事を進める上で、コア的道具であった時代に業務を行ってきた人達は、パソコンさえあれば何処でも仕事が出来ると考え、十分にその自信もあると想像できる。逆にその後、登場したPDAや多機能ケータイ電話にも、無理だと知りつつも、同様の事がどの程度まで出来るかをつい考えてしまうのだ。

 売ることと市場占有率の獲得が目的のメーカーは、当然、それらの購買者の意見も無視できず、本来の目的や機能以上の要求であるのは分かっていても、何とかそれらを機器本体や、機能以外のインフラ整備やオプションで実現しようと努力し、元々似たDNAを持つIT機器同士であるが故に、曲がりなりにもそこそこ出来てしまうことが多い。筆者が常々思っている「技術的に出来る」と「使い勝手が良くて便利」とは実は全く違うことであるが、「出来る」ということは意外と評価を受けてしまうことが多いのだ。

 また、その曲がりなりの実現が、その時点以降、競合機器のスペック競争のお題目となり、多くの後続メーカーが標準仕様として採用。よ〜く考えると「本来の姿と違うじゃん!」とか言いながらも市場規模が拡大したりするから質が悪いのだ。断言は出来ないが、生まれた時、パソコンはもちろん、既にPDAやケータイ電話が存在した世代の「IT新人類」のみが本来のPDAらしい、ケータイ電話らしい使い方を実現出来る初の人類かも知れない。

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