UX50は11年前にPalmTop PC110が目指した現代の「まんまPC」だ。「どこでもモバイル」を大前提に、持ち運びに重点を置いた設計であるが故に、どちらも、小さく、見かけの割に意外とズッシリと重く感じる。ワイヤレス通信インフラの進んだ現代では、寝ころんで仰向けになってネットサーフィンも出来るが、時間経過とともに、600グラムのダンベルを持ってカウチ体操をしているようなモノだ。実際にやってみるとそれほど快適ではない。
最新のテクノロジーを活用すれば、今は、そこそこITクライアント機器を小さく作ることは可能だ。しかし、常に問題になるのは、キーボードで入力することと、ディスプレイでその結果を確かめることが、四半世紀経っても常識であるパソコンの世界では、この2つを使い勝手を犠牲にすることなく小さくするマジックが育っていないことだ。
もちろん、人類が生まれてから、今まで、手でモノを書き、眼でモノを見る、というスペックが変わっていないのだから、根本的なテクノロジーを進歩させる要因が見あたらない。そして、太古の時代、火のついたたいまつを握った頃と指のスペックはほとんど変わらず、愛する家族や彼女をある程度の距離から確実に判別できる視力も大きく変化していない。
21世紀になってからも、ヘッドマウントディスプレイや特殊なキーボード、ペン入力、音声入力、等々多くのソリューションと称するハードウェアが登場したが、残念ながらいずれも定着せず消え去っているのが現実だ。ことITの世界で「ソリューション」という言葉が唐突に登場したら、少しは疑ってみるべきだ。かなりの確率で一発解決出来ない言い訳ベースの「寄せ集め対応策団体御一行さま」であることが多いはずだ。
デザインから入った思われるソニーのアプローチは、決して嫌いでは無いが、こと、UX50のキーボードは正直、「堪忍して欲しい」というのが初日の印象だった。販売店の店員さんの慰めは、「これも慣れですから」とやはり説得力が無い。その昔、HP200LXの質実剛健で工業製品その物のキーボードに触れた瞬間も、ウィルコムのW-ZERO3のスライドキーボードに出会った時も、自分自身で近未来の自信が見えた。
気を取り直して、UX50のキーボードをしばらく使った不器用な筆者の結論は、とにかく早く「外付けのUSBキーボードを探そう!」だった。もちろん用意周到なUX50は、ペン入力も可能だし、手書き入力も可能だ。しかし、それらは「IT新人類」に任そうと思う。既に筆者は、ペン入力を可能にするセンシティブな液晶スクリーンは邪魔なので機能をクリップしてしまった。
筆者が選んだ外付けキーボードは、IBMがThinkPadのキーボードだけを取り外して、小さなサブノートPCの非モバイル環境での快適な入力用として開発された正式名称「ThinkPlus USBトラベルキーボード ウルトラナビ付」(以降:トラベルキーボードと記す)という長ったらしい名前の商品だ。UX50に接続するにはUSBポート経由となる。残念ながらUX50は、スタンドを兼ねたポートリプリケーター(標準装備)が無いと独り立ちは出来なくて、机の上に仰向けに置くしか手段が無い。(ソニー直販では簡易スタンドがサービスされる)
しかし、出張先にまで280グラムのポートリプリケーターは持って行きたくはない、と考えるのが、鉄人では無い普通のモバイラーだろう。ポートリプリケーターの形状は、そういう目で見た場合、「鞄・アンフレンドリー」なデザインだとも言える。いずれ自分専用のスペシャルスタンドを作ろうと思っているが、それまで、高速LAN設備のある出先のホテルでは、バスタオルを机上にぐるぐる置いて、その上に足下から通称「豚のしっぽケーブル」(ディスプレイ/LANアダプター)の生えたUX50を正面に向けて仮固定するのが唯一の安上がりソリューションだ。
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