第6回 AMDのATI買収劇が意味するもの:元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2006年07月25日 06時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

20年を超える歴史を持つATIブランドが消える日

設立20周年を祝うATIのホームページ

 7月24日、AMDはかねてからうわさになっていたATI Technologiesの買収を正式に発表した。現金とAMD株との交換を併用する買収の総額は54億ドル。手持ち資金に加え、銀行からの借り入れも行うという。現在同社は、ドレスデンの2カ所に続く工場(前工程)建設地を選定中とも言われており、何かと物入りだが、先に発表された四半期決算が好調だったこともあり、今のうちに将来に向けて必要な投資を行っておこう、ということなのかもしれない。いずれにしても、これで1985年から続いてきたATIのブランドが消えるわけで、一抹の寂しさを感じてしまう。

短期的な影響はマザーボードラインアップのみ

 さて今回の買収だが、その影響は短期的にも現れるだろうが、狙いは中期的、長期的なところにあるのではないかと思われる。

 まず短期的な影響だが、現在Intelのマザーボードラインアップにある、ATI製チップセット(RADEON XPRESS 200)を用いた製品(Intel D101GGCおよびD102GGC2)の後継は登場しないだろう。これらの製品は、Intelのチップセット不足を補う「つなぎ」的色彩の強いイレギュラーな製品だっただけに、それほど驚くことではない。すでに、ATIに与えられていたIntelのバスライセンス(Intel製CPUに対応したチップセットを製造するのに必要)も更新されない、という報道もなされている。今後ATI/AMDからIntel製CPUに対応したチップセットは登場しない可能性が高い。

 「プラットフォーム戦略」でも明らかなように、元々Intelはチップセットを自社で提供したいという意向を持っている。IntelのCPUに対応した市場で、サードパーティー製チップセットが占めるのは実質的にローエンドに限られており、ATI製といえどもその例外ではない。Intelはチップセットの量産を300ミリウェハ工場で行い、万全の供給体制を築きたいとしているが、それでももし不足した場合、今度はSiSがそのスペースを埋めることになるだろう。

ノートPC市場でのAMDの逆襲は?

AMDのジャパン・エンジニアリング・ラボと日本アイ・ビー・エムのエンジニアリング&テクノロジー・サービス部門が共同開発したノートPC向けリファレンスプラットフォーム「Yamato」

 一方、現在AMD製CPUに対応したチップセットは、AMD純正が広く使われているサーバーを除き、ほぼサードパーティー製で占められている。特にハイエンドの分野で強いのがNVIDIAだが、この構図が短期で劇的に変わることはないだろう。AMDも、それを望んではいないはずだ。

 AMDが中期的に期待していることは、モバイル向けチップセットと、チップセット内蔵グラフィックスだと思われる。Athlon(K7)でデスクトップにくさびを打ち込み、Opteronでサーバー分野に地歩を築いたAMDが、最も苦戦しているのがノートPCの分野だ。確かに大型のノートPC、デスクトップPC置き換え型の分野では一定の成果を出しつつあるが、ノートPC全体を見るとIntelの牙城といっても過言ではない。同クラスのノートPCで比べて、性能で差がなくても、バッテリー駆動時間という点では大きな差がつく。

 このような部分を補うべく2004年にはモバイルテクノロジーにフォーカスしたJEL(ジャパン・エンジニアリング・ラボ)を開設したが、製品という目に見える形で大きな成果は現れていない。すでにAMDのノートPC向けCPU(Turion 64)には、Intelの通常電圧版モバイルCPUと同等の消費電力のものがあるにもかかわらず、大きさやバッテリー駆動時間で遅れをとっている。それは、ノートPCという製品が、チップセット、バッテリー技術、冷却など、プラットフォーム全体のエンジニアリングが大きなウエイトを占める製品であり、CPUの低消費電力化を図るだけでは十分ではないからだ。

AMDとATIが配布した「Strategic Vision」からの抜粋
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