「プリアンプ」「パワーアンプ」に思わず見える斬新な筐体──ソニー「VAIO type R master VGC-RM70DPL4」(2/3 ページ)

» 2006年10月03日 12時00分 公開
[坪山博貴,ITmedia]

見た目だけじゃない「ツインユニット・コンセプト」

 VAIO type R masterでまず注目されるのが2つの筐体で構成される「ツインユニット・コンセプト」だ。ユーザーが触れることの多い「アクセスユニット」は横置きで高さが64ミリに抑えられたスリムなスタイルで、奥行きも290.5ミリに抑えられている。横置きではディスプレイの重ね置きも可能など、設置の自由度は高い。前面は2ピースのカバーで覆われ、表面に見えるのはインジケータも兼ねる電源ボタンとHDDアクセスランプ、Bluetoothインジケータのみといたってシンプルだ。

 左側のカバーを開けると2つのUSB 2.0、IEEE 1394(4ピン)、オーディオ入出力、メモリカードスロットにアクセスできる。頻繁に抜き差しするデバイスの接続はこちらで十分ということになる。背面にも2つのUSB 2.0が用意されており、常時接続するキーボードやマウスはこちらに接続できる。また、無線LANカード用として背面にPCカードスロットも備えている。

 右側のカバーを開けると5インチベイが2つ登場する。VGC-RM70DPL4は右側のベイにBDドライブが搭載されており、左側のベイは空いている。従来の「R」シリーズでは光学ドライブにトレイ部分にスリットを開けたカバーが使われていたので光学ドライブ以外のデバイスを搭載できなかった。本製品では完全に前面が開口した5インチベイとなっており、接続インタフェースもIDEとSerial ATAの両方が準備されている。ユーザーが5インチベイに追加したデバイスは動作保証されないが、拡張の可能性を提供してくれている点は評価すべきだろう。

 アクセスユニットとメインユニットは1.8メートルの専用ケーブルで接続される。電源からなにからこのケーブルでまかなっている。太いけれどフレキシブルなケーブル1本の接続で済んでいるのは、アクセスユニットとメインユニット間はPCI Expressで接続し、アクセスユニット側にPCI Express to PCIブリッジを配置してSiliconImage製のSerial ATAコントローラ、VIA製のUSB 2.0ホストコントローラを実装しているからだ。

 アクセスユニットとメインユニットを接続しているレーン数などは不明だが、仮に1レーンとしても片方向で2.5Gbpsの帯域が確保されているので、5インチベイにHDDを搭載したとしても速度面でのデメリットもほとんどない。パケット化されたシリアル転送ゆえに配線長の確保が容易な(それにしても1.8メートルのケーブル長はコンシューマー向けPCでは前例がないと思う)PCI Expressプラットホームのメリットを最大限に活用した設計と言え、PCIプラットホーム時代には不可能、もしくはUSB 2.0接続しか採用できず、パフォーマンス面でなんらかの犠牲が必要であったはずだ。

アクセスユニットの正面を覆っているカバーを開くとドライブベイとカードスロット、USB、i.LINKが姿を見せる。5インチベイはデザイン重視の光学ドライブ専用ではなく、広く口をあけた汎用形状なので、HDDを換装する5インチデバイスも搭載できる
アクセスユニットの背面にはUSB 2.0が2つあるほか、メインユニット接続ケーブルのコネクタ、PCカードスロット(Type2×2)が設けられている。PCカードスロットは無線LANモジュールの搭載を想定している
アクセスユニットとメインユニットは長さ1.8メートルの専用ケーブルで接続される。アクセスユニットはメインユニットのサウスブリッジから伸びているバスの部分としてシステムからは認識される

 メインユニットの前面インタフェースは電源スイッチ、USB 2.0、IEEE 1394、ビデオ入力端子を備えるだけとシンプルな構成。高さ(縦置きの場合は幅)は140ミリと一般的なタワータイプのケースよりもスリムだ。黒一色のカラーリングなど、デザイン的にはグラフィックスワークステーションを強く意識した感じだ。

 メインユニットはフロントに4台のHDDを搭載しているが、そのHDD専用ベイは前面から容易にアクセスが可能なだけでなく、前面からブラケットごと着脱できる構造にあっている。そのため、リムーバブルHDD的な運用も簡単にできる。この機能は従来モデルから継承されていて、コントローラであるICH8Rの制限でホットスワップこそできないが、例えば映像編集に利用する場合、膨大になる動画データをHDDにライブラリ化して保存し、必要に応じてHDDを入れ替えるといった使い方も可能だ。

メインユニットの正面は、ファンの風切音やHDDのシーク音を遮音する「ノイズ減衰パネル」が取り付けられている。パネルをつけた状態で使えるのは電源ボタンと左下にあるi.LINK、USB 2.0、ビデオ入力になる
メインユニットの背面は通常のPCとそれほど変わらない。左上にあるスリットはb−CAS用。マザーボード実装のインタフェースの上にあるのはアクセスユニットと接続するケーブルの専用コネクタだ
ノイズ減衰パネルを取り外して右寄りの筐体パネルを外すと4つのHDDベイにアクセスできる。レバー1つで取り外せるベイユニットは手前にHDDのコネクタがくるように取り付けられているため、HDDの換装が容易にできる

 CPUにCore2 Duoを搭載しているので、Pentium DのようなCPU冷却の深刻な問題には悩まされない。しかし、ケース内にはMPEG-2エンコーダを搭載したアナログチューナーユニット、デジタルチューナー、さらに4台のHDDとGeForce 7600GT採用のグラフィックスカードと発熱の大きなデバイスが多く、ケース全体の冷却はおろそかにできない。VAIO type R masterではCPU冷却用に12センチファン、拡張カードスロットに直接吸気が当たる位置に8センチファンと2つの吸気ファンを装備して筐体内部を冷却する。またHDDベイは背後にある電源ユニットの排気ファンで積極的に冷却を行なう仕組みだ。

 比較的大径な前面2つのファンは必要に応じて回転数を変化させ、アイドル状態では動作音を抑える。しかしファンを背面に配置する場合と比較するとどうしても動作音が耳に付きやすくなる。本機では吸気スリット前に1枚のパネルを設け、ファンの動作音を漏れにくくし、吸気を正面ではなくサイドから行うことで吸気音も目立たないように工夫されている。試しにこのパネルを取り外して音を比較してみたが、吸気音の低減にとくに効果が大きいと思われた。

 筐体から発生する動作音全般に関しても、起動時こそファンがフル回転するため動作音は大きいが、稼動状態の動作音は十分低いレベルに抑えられている。各種ベンチマークソフトを動作している状態でも大きな変化はなかった。発熱に関しては電源ユニット部の側面がそれなりに熱を持つがそれでも「暖かい」というレベル。構造的にここに排気が集中することを考慮するととくに不安になる必要なない。

メインユニットはmicro BTXプラットフォームを採用している。フロントパネルのファンからCPUのヒートシンク、HDDドライブベイから電源ユニットに至るそれぞれの部分にフードを被せて風速を確保している。左下に見えるのは3.5インチのシャドウベイでHDDを2台搭載できる
フードと支持ステーを取り外した状態。マザーボードのメモリスロットは4基で評価機構成では2基にモジュールが差してある。拡張スロットは下からPCI Express X16、PCI、PCI Express X4、PCIで配置され、すでにグラフィックスカードとアナログチューナー、デジタルチューナーで3つのスロットが埋まっている
アクセスユニットの内部は汎用の5ンチドライブベイとオンボードのコントローラが載った基板の構成。電源ユニットは搭載せずパワーは専用ケーブルによってメインユニットから供給される

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