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» 2006年11月27日 15時10分 公開

複合機06年モデル徹底攻略ガイド:第1回 複合機の強化ポイントと最新ラインアップをチェックする (1/2)

今回から5回に分けて、エプソン、キヤノン、日本HPの複合機最新モデルを検証し、その実力を明らかにしていく。まずは、今年の強化ポイントと製品ラインアップを見ていこう。

[林利明(リアクション),ITmedia]

家庭用プリンタの主役となった「複合機」、今年はどれが買い?

 国内の家庭向けインクジェットプリンタは、毎年秋から冬にかけてラインアップが更新される。3年前までは単機能プリンタが各社の主力製品だったが、2年前にセイコーエプソンがラインアップの中心を単機能プリンタから複合機へシフトして成功したことを受け、昨年はキヤノンも複合機のラインアップを大幅に拡充した。市場では、複合機がすっかり主役となった形だ。

 単機能プリンタに比べて割高感もある複合機だが、スキャナやコピーの機能が使えるほか、デジタルカメラで撮影した写真をPCいらずでダイレクトプリントできるなど、利便性は非常に高い。今年の冬は、単機能プリンタから複合機への買い替えや、初めて選ぶプリンタとして複合機の購入を検討している人も多いだろう。しかし、市場には多種多様な製品があり、搭載される機能や画質、印刷速度などが製品によって異なるため、どれを買えばよいのか迷ってしまうかもしれない。

 そこで本特集では、人気の高いエプソン、キヤノン、日本ヒューレット・パッカードの3社にフォーカスし、複合機の最新モデルを5回に渡って解説する。新機能や製品ラインアップの説明に加えて、注目製品については機能、画質、速度などを横並びで比較するので、ぜひ購入の一助としていただきたい。第1回は、メーカー別に最新モデルの強化ポイントとラインアップ構成を整理する。

 なお、今回の複合機特集に続いて、単機能/ダイレクトプリンタとコンパクトフォトプリンタについても同様の特集を予定している。これらの製品を購入予定の人は、後日掲載予定の記事をお待ちいただきたい。

複合機2006年モデルの強化ポイントと注目機能

さらに磨きをかけたEpson Colorで勝負するエプソン

オートフォトファイン!EX、つよインク、純正写真用紙で構成されるEpson Color

 今年のエプソンは、昨年より打ち出したキーワード「Epson Color」をさらに推し進めている。Epson Colorとは、自動画質補正機能「オートフォトファイン!EX」、耐候性を高めたインク「つよインク」、プリントメディアの「純正写真用紙」の3つの組み合わせにより、誰でも簡単に美しく色あせない写真を印刷可能にするというエプソンのブランド戦略だ。

 自動画質補正機能のオートフォトファイン!EXには改良が加えられ、人肌重視の補正を従来より積極的に行うようになった。写真に占める人物の「顔」の面積を自動認識し、補正の強度を調整する。補正によって背景の色バランスなど写真全体の雰囲気が大きく変わらないように、顔の面積が大きければ強い補正、小さければ弱い補正を行う。また、一般家庭で撮影される写真には人物が写っていることが多いとの理由で、顔を自動認識できなかった写真に対しても、人肌寄りの補正をかける。このような改善点により、逆光で人物が暗くなった写真や、色被りの写真を印刷すると、ほとんどの場合でとても良好な補正結果が得られる。従来は「写真の雰囲気を残す」という理由から、オレンジに色かぶりした写真は補正されなかったが、2006年版ではオレンジ被りも補正するようになった。

 染料系のPM-Gインクは、つよインクから「つよインク200」に進化した。黒インクの濃度アップと一層の無彩色化(従来の黒インクはわずかに緑寄りだった)、黄色インクの高彩度化が図られている。画質アップとともに耐候性に関しても、蛍光灯下の耐光性が50年、耐オゾン性が25年と、従来のつよインクから大幅に強化された(従来の染料6色つよインクは耐光性が20年、耐オゾン性が10年)。アルバム保存性寿命は、従来と同じ200年だ。

 プリントメディアは、低価格帯の写真用紙として「写真用紙エントリー」が追加されている。高光沢の最高品質メディアである「クリスピア」と標準の「写真用紙」は続投だ。

新モデルのオートフォトファイン!EXは、より理想的な肌色に近づけつつ、オレンジに色かぶりした写真も補正するようになった(写真=左)。蛍光灯に照らして色のあせていく様子を見る「退色挙動」の試験データ(写真=中央)。従来は25年程度で70%退色していたが、つよインク200では50年経っても70%を上回る

 染料インクの複合機において、プリントエンジンが進化した点も大きなトピックだ。従来は3サイズ(2ピコリットル/6ピコリットル/20ピコリットル)のインク滴を使い分けていた「MSDT」(Multi Sized Dot Technology)が、5サイズ(1.5ピコリットル/13ピコリットル追加)を併用する「Advanced-MSDT」になった。これにより、通常濃度のCMYBkインクと低濃度のCMインクが重なり合う部分で階調性が高まり、粒状性も減少している。また、印刷ヘッドの応答周波数も向上し、印刷時間を短縮した。

 ダイレクト印刷関連では、専用処理チップの「REALOID」(リアロイド)を内蔵したことが非常に大きい。メモリカードからのデータ読み込みや印刷画像のレンダリングなどを並列処理するため、印刷実行から印刷開始の待ち時間が大幅に短縮される。

 上位モデルが搭載する4.0インチの大型液晶モニタ「Photo Fine Ultra」にも注目したい。通常のRGBにエメラルドグリーンを加えた4色フィルターによって、色再現域を拡大している。精細さ、視野角、発色など、ほかの複合機の液晶モニタとは一線を画す表示品質だ。

 ユニークなところでは、最上位モデルのPM-T990に、家電のデジタル放送対応テレビで受信したデジタル放送を、ネットワーク経由で印刷する「テレプリパ」機能が採り入れられた。現状で対応するテレビはパナソニックのVIERAシリーズのみだが、今後登場する「ネットテレビ」規格のテレビもサポートされる予定だ。そのタイミングで、テレビからのダイレクト印刷が一気に普及する可能性がある。

 そのほか、上位モデルにはスロットイン式のCD-RW/DVD-ROMコンボドライブが内蔵されている。メモリカードの画像を複合機だけでCD-R/RWメディアにコピーしたり、CD-ROM/DVD-ROMからのダイレクトフォト印刷が可能だ。

インク滴のサイズを5段階調整するAdvanced-MSDTにより、階調性の向上と粒状感の低減を果たした(写真=左)。上位モデルが搭載する4.0インチの大型液晶モニタPhoto Fine Ultraは色再現範囲が広く、視認性が非常に高い(写真=中央)。スロットイン式のCD-RW/DVD-ROMコンボドライブを搭載する機種もある(写真=右)

ホイールインタフェースのEasy-Scroll Wheelで簡便さをアピールするキヤノン

iPodを思わせるホイール型インタフェースEasy-Scroll Wheelが印象的なキヤノンの複合機。ホイールはセンサー式ではなく、ホイール自体が回転する

 キヤノンの見どころは、ミドルレンジ以上のモデルに導入された新しいユーザーインタフェースの「Easy-Scroll Wheel」だ。これは、本体の操作パネルに設けられたホイールを回すことで、液晶モニタのメニューを操作するというもの。メニューの構成もホイールに最適化され、選択項目を円状や円弧状に配置しているため、従来以上に直感的な操作が可能だ。メニューにアニメーションや使用目的からの操作案内などがふんだんに盛り込まれたことに伴い、液晶モニタの品質も大きく向上している。視野角、コントラスト比、発色性能、応答速度が向上し、昨年モデルよりはるかに美しくなった。

 ハードウェア的にはMP960、MP810、MP600の3モデルにおいて、紙送り機構の精度を上げて排紙時にもモーターを使った「ダブルエンコーダシステム」でフチなし印刷の高速化を図りつつ、カラーノズルの長さを2倍(0.43インチ)にして従来より2倍広い面積を一気に印刷可能とした。またMP810は、従来1ピコリットルと5ピコリットルのインクドロップを併用していたが、シアンとマゼンタは2ピコリットルを加えた3サイズで印刷するようになった。この「3サイズドロップレットテクノロジー」よって印刷パス数が約25%ほど減り、印刷速度も最大で約1.7倍に高速化されている。

カラーノズルの長さを従来の2倍となる0.43インチにして一度に多くの面積を印刷可能にした(写真=左)。MP810は、従来1ピコリットルと5ピコリットルのインクドロップを併用していたが、シアンとマゼンタを2ピコリットルを加えた3サイズで印刷するようになった(写真=右)

 コピー画質にも注目したい。キヤノンは昨年モデルからコピー画質に力を入れているが、最新モデルでは一層成熟した印象を受ける。まず普通紙コピーの場合、スキャンした原稿を分析して、「黒い文字」と「黒い線」、および「それ以外の写真やグラフィック」に分離する(像域分離技術)。そのうえで、黒い文字/線は顔料Bkインク、写真/グラフィックは染料インクで印刷することで、高いコントラストで読みやすいコピーに仕上げるわけだ。色再現に関しては、原稿の色域と複合機で出せる色域を考慮し、色座標の変換を行う。写真のコピーや孫コピーでも、原稿にかなり忠実でシャープなコピーが得られる。

 MP960とMP810では、メモリカード内の画像に手書きの文字やイラストを合成して印刷する「手書きナビシート」が、CD/DVDレーベル印刷にも対応した。オリジナルの写真に手書き文字やイラストを加えて、複合機だけでレーベル印刷ができるのだ。また、デジカメ写真のExif情報を付加したインデックス印刷など、従来は上位モデルだけだった機能がミドルレンジにも下りてきたほか、PictBridgeによるデジタルカメラからのダイレクト印刷でも「赤目補正」機能が利用できるようになっている。

 ボディの小型化にも熱心だ。MP810では従来機のMP800と比べて奥行きを74ミリ短く、高さを14ミリ低くするなどの省スペース化を実現している。また、MP510は2004年に登場した単機能プリンタのサイズとほぼ同等になっている。

 便利なマルチペーパーハンドリングも継承されている。前面カセット/背面フィーダの2Way給紙(2系統給紙)、自動両面印刷、CD/DVDレーベル印刷で構成されるが、下位モデルでは搭載されない機能もある。

ボディサイズが大きくなりがちな複合機だが、MP810では従来機のMP800と比べて小型化した(写真=左)。フラットなボディなので設置しやすい。最上位のMP960をはじめ、多くのモデルが前面カセット/背面フィーダの2Way給紙に対応する(写真=右)

SPT搭載モデルを増強し、液晶モニタのメニュー構成を刷新した日本HP

昨年より導入した新プリントシステムのSPTは、開発に1500億円の費用と5年の歳月をかけたという

 日本HPは、インクヘッド、インク供給路、インクタンクを独立させ、高速印刷や無駄のないインクシステムを実現する独自のプリントシステムSPT(スケーラブル・プリンティング・テクノロジー)に注力している。SPTは昨年導入された機構だが、今年は写真印刷の画質と速度がさらに向上した。画質アップは、印刷ヘッドの内部構造と紙送り制御を見直すことで実現している。印刷速度は、純正写真用紙の「アドバンストフォト用紙」に最速モードで印刷した場合、L判フチなし印刷が従来モデルの約12秒から約11秒に高速化された。ちなみに、画質と速度の評価については第4回でお届けする予定だ。

 液晶モニタのインタフェースが一新され、コンビニなどに設置されているキオスク端末と同じような画面構成の「HP Photosmart Express」になったのも大きな変更点だ。大きめの機能アイコンから操作をスタートし、ウィザード形式のようなステップ式で設定と操作を行っていく。多少の慣れは必要だが、各機能における設定もれが発生しにくい点がメリットだ。

 ダイレクトフォト印刷では、写真の補正機能が簡略化された。従来は明るさなどの調整項目を個別に設定していたが、新モデルでは「HPフォトフィックス」機能のボタン1つで有効と無効を切り替えられる。Epson Colorと異なり、基本的に色調を大きく変えることはせず、アンダーやオーバー、色被りなど、いわゆる撮影に失敗したと思われる写真を自動補正する。

 ラインアップの上位2モデルが持つ、携帯音楽プレイヤー「iPod」を直結したダイレクト印刷にも注目だ。画像の保存に対応したiPodを接続し、iPod内の画像を手軽に印刷できる。ただし、2006年9月発表の第5世代のiPod(2006年版)、第2世代iPod nanoでは写真の保存形式が変更されたため、この機能が動作しない(iPodの対応状況はこちら)。

大きめのアイコンとステップ式のメニューを採用したHP Photosmart Express(写真=左)。操作パネルには、HP Photosmart Express用のボタンと画像の補正用ボタンが設けられている(写真=中央)。iPodの画像ファイルを印刷する機能は他社には見られない特徴だ(写真=右)

 相変わらずペーパーハンドリング関連の機能は強力だ。用紙の種類とサイズを自動判別し、推奨の設定で出力するため、印刷設定の手間がかなり省力化されている。もちろん、PC印刷のドライバは手動での設定も可能だ(ダイレクト印刷は用紙種類など一部のみ手動設定が可能)。給排紙が本体前面から行えるのも使いやすく、一部のエントリーモデルを除いて、給紙場所が上下2段にある。下段は最大用紙サイズが215.9×594ミリのメイン給紙トレイ、上段はL判とはがき用のフォト給紙トレイだ。つまり2種類の異なる用紙をセットしておき、印刷に合わせて使い分けられる。給紙トレイの上部が排紙トレイになっているため、用紙を入れっぱなしにしてもホコリをかぶらない点もよい。また上位モデルを中心に、自動両面印刷にも対応している。

 ネットワークインタフェースを標準装備したモデルが多いのも日本HPの特徴だ。個人向けの複合機は計7モデルあるが、そのうち4モデルが100BASE-TXの有線LANインタフェースを備える。上位の2モデルは、IEEE802.11g/bの無線LANインタフェースも標準装備する。

使いやすさを考慮して昔から前面給排紙にこだわっているだけあって、2段の給紙トレイはどちらも前面に装備している(写真=左)。無線LANやBluetoothを標準搭載したモデルも用意する(写真=右)
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