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» 2006年12月15日 09時00分 公開

視覚・触覚・聴覚を刺激するデザイン:部屋に置きたいプリンタを目指して──キヤノンのデザイン戦略 (1/2)

キヤノンがマスコミ向けの技術セミナーを開催し、同社のデザイン戦略を紹介した。

[田中宏昌,ITmedia]

“3感”を刺激するデザインを目指す

キヤノン 総合デザインセンター コンシューマ商品デザイン部 部長 佐野博氏

 セミナーでは、キヤノン 総合デザインセンター コンシューマ商品デザイン部 佐野博氏が壇上に立ち、総合デザインセンターの概要をはじめ、同社のフィルムカメラ/デジタルカメラやインクジェットプリンタの歴史を紹介。続いてセミナーのテーマである「3感を刺激するデザイン」について解説を行った。

 3感とは「視覚」「触覚」「聴覚」であり、視覚のデザインでは「らしさ」を重要視しなければならないと述べた。この「らしさ」とは、カメラらしさであり、プリンタらしさであり、同様に車や自転車などにもあてはまるとした。つまり、ユーザーが本質的に持っているイメージを踏み外さないのが肝要であり、このイメージを外すといっときは話題を集めるものの、決してメインストリームにはならないという。

 スライドでは子供のイラストを引き合いに出して、「子供にカメラを描かせても、誰もがカメラであることが分かる絵ができる。それだけ強い刷り込みがなされているわけであり、デザイナーの自己主張を通すためにそれを外してはいけない」とし、このような記号性を意識しつつも、新しい造形を大事にしていきたいと述べた。

左の写真には、子供に描かせたというカメラと車のイラストを例にとり、それぞれのイメージは強力な刷り込みがなされていると主張。そのイメージを外した製品は決して本流にはならないという(写真=右)

 イメージがはっきりと決まっているカメラに対し、プリンタは基本的な構造体が内部に入っており、ある意味プリンタは“ブラックボックス”であると佐野氏は言う。プリンタはカメラとは異なって制約がないのが足かせになっているとし、カメラが持つ「らしさ」をプリンタにどのように反映するのか、「プリンタらしさ」とは何かを考えたという。

 まず2000年に社内プロジェクトを立ち上げ、「プリンタらしさ」を検討したところ、「プリンタは部屋に置かれるもの」という基本的な考えがまとまった。当時のユーザーアンケートで「今までのプリンタは部屋に置きたくないデザイン」というものがあり、その反省を踏まえてさまざまな試行錯誤を繰り返した結果、1つの形として結実したのが2004年に発売された「SUPER PHOTO BOX」シリーズだ。

 佐野氏は、「我々は生活の道具を作っており、説明の不要なデザインを目指している」とし、「一眼レフカメラらしいカタチ、コンパクトデジカメらしいカタチ、プリンタらしいカタチを直感的に分かってほしい」という願いを込めてデザインをしてるという。

 なお、「視覚」「触覚」に続き、ここ数年は「聴覚」にも力を入れており、現在はノウハウを蓄積している段階と佐野氏は述べた。一例として一眼レフカメラのシャッター音に触れ、聴覚はユーザーインタフェースに大きな影響を与えているとし、一眼レフカメラのさまざまな状態でのシャッター音をサンプリングして検証しているとした。

確固たるイメージがあるカメラに対し、プリンタは記号性が確立されておらず、まずはそのイメージを考えたという(写真=左と中央)。右の写真は2004年に発売されたiP8600。従来のプリンタとは一線を画した「SUPER PHOTO BOX」と呼ばれるデザインが注目を集めた

製品の根底には「ひとに優しい」というテーマが流れている

 続いて「触覚のデザイン」と題し、同社の製品には「ひとに優しい」というテーマが根底に流れているとした。その端的な例は一眼レフカメラのグリップに現れているという。これは手になじみ使いやすいという、カメラには生命線と言える機能であり、プリンタの操作部(2006年モデルではEasy-Scroll Wheelがそれに当たる)にも同じことが言えると述べた。また、使いやすくて美しいデザインでなければならず、そのために触れることで得られる心地よさ、目で見て誘発される触覚にも注意を払っているとした。

キヤノンデザインの根底に流れているのが「ひとに優しい」というフレーズだ(写真=左と中央)。手になじむ、使いやすさだけでなく、美しさについてもこだわっているという(写真=右)

「ひとに優しい」というテーマが最も息づいているのが一眼レフカメラのグリップ部分だという(写真=左と中央)。

 触覚のデザインとして具体例に挙げられたのが、IXY DIGITAL Lシリーズだ。もともと、IXY DIGITAL Lシリーズは女性に持ってもらえるカメラを作りたい、というところからスタートし、色や質感からアプローチを図ったという。手になじむ、手に取ったさいの質感は大事であり、今後も追及していきたいとした。

4色のカラーバリエーションをそろえたIXY DIGITAL L2では、表現工程だけで5〜8工程も経ている(写真=左)。中でもスターガーネットは、最大の8工程を経て赤ワインの証とされる 「深み」 をボディ色で表現した(写真=中央)。右の写真はIXY DIGITAL L2のモックアップで、微妙に色合いが異なるのが分かる

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