ちっちゃなボディに大きな期待――「wizpy」は本当に“すごい”のか:「ユビキタスの鍵」「PC2.0」……(3/3 ページ)

» 2007年02月09日 20時01分 公開
[瓜生聖,ITmedia]
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携帯できる「自分専用のOS」としてのwizpy

 次に、wizpyのもう1つの顔である「自分専用のOS」の部分を見ていこう。ちなみにwizpyからPCを起動するには、始めにBIOS画面でブートシーケンスを変更し、USB CD-ROMから起動するように設定しておく必要がある(これは当たり前といえば当たり前だが、外出先などで他人のPCを借りる場合は、BIOS設定をいじることに多少抵抗を感じるかもしれない)。

 さて、OSの起動が完了するとログイン画面が表示される。USBからの起動といっても見た目には通常のKDEデスクトップとなんら変わりはない。OS自体のインストールを必要とせず、wizpyを買ってくればすぐにLinuxを利用できるので、とりあえずLinuxに触れてみたいという初心者にとっては最適だろう。なお、ディストリビューションはDesktop11と表示されているが、これは同社のTurbolinux FUJIと同じバージョン番号だ。カーネルは2.6.19-2と、少し新しくなった(Turbolinux FUJIは2.6.13)。

wizpyからOSを起動するとディスプレイにUSB接続状態を示す表示が出る。この時点で操作はできなくなる(写真=左)。ディストリビューションはDesktop11(246)。ちなみに246はwizpyのコードネームだ(画面=中央)。wizpy自身がサウンドデバイスとしても認識される(画面=右)

 メニューから実行できるプログラムは少ないものの、かなり厳選されている。Webブラウザ「Firefox 1.5.0.9(Deer Park)」、メールソフト「Thunderbird 1.5.0.9」、メッセンジャー「Kopete 0.10.3」「Skype 1.3.0.53」といったインターネットアプリケーションに加えて、オフィス互換の「OpenOffice.org」や「Turboメディアプレーヤー」「RealPlayer 10」などの再生ソフト、DVD/CDのリッピングを行う「ターボリップ」「TurboAudioRipper」といった具合に、利用頻度の高そうなソフトが並ぶ。

 このうち、ちょっと異色な存在がターボリップだ。非常にシンプルなリッパー&エンコーダで、DVDを挿入し、タイトル、あるいはチャプタを選んで「Start Rip」をクリックするだけ。変更可能な項目は出力ファイル名のほかはクリッピング範囲、出力サイズ(解像度)のみという、ずいぶんと割り切った仕様になっている。おそらくwizpy単体で視聴するための動画変換ツールという位置付けなのだろう。

OpenOffice.org 2.0はMicrosoft Office互換。ビジネス用途に利用できる(画面=左)。Turbo Media PlayerはAVIも再生可能。もちろん、wizpy単体で再生できるファイルは再生可能だ(画面=中央)。ターボリップの設定は非常にシンプル。なお試作機ではβ版だった(画面=右)

データの連携は?

 wizpyのメモリ領域は4つのパートに分かれている。マルチメディアプレーヤーのコンテンツと追加アプリケーションを保存する「プレーヤー領域」(2Gバイトモデルは840Mバイト/4Gバイトモデルは2.6Gバイト)、Turbolinuxとして利用する際のホームディレクトリとなる「ユーザー領域」(2Gバイトモデルは350Mバイト/4Gバイトモデルは500Mバイト)、Turbolinuxのブートイメージが格納されている「ブート領域」(両モデルとも16Mバイト)、そしてwizpy自身のOSが収められている「システム領域」(両モデルとも700Mバイト)だ。

 このうちプレーヤー領域は、Windowsが動作しているPCに接続した際、リムーバブルドライブとして認識される領域であり、Turbolinux上では“/mnt/player”にマウントされる。つまり、wizpyの3つのモード(単体でのメディアプレーヤー/Windows接続時のリムーバブルドライブ/Turbolinux動作時のファイルシステム)のすべてにおいてアクセス可能な領域はプレーヤー領域のみということになる。

 このため、Turbolinuxで作成したオフィス文書をWindowsユーザーに手渡すときなどは、ファイルをホームディレクトリに作成してしまうと、取り出すのが面倒になるので注意が必要だ(逆に強固なセキュリティと考えることもできるわけだが)。

試作機では、ユーザー領域が“/home”に、プレーヤー領域は“/mnt/player”にマウントされていた。“/media”は“/mnt”へのシンボリックリンク(画面=左)。マウントの状況を見ると、ユーザー領域のファイルシステムはext3、プレーヤー領域はvfatであることが分かる。なお“/dev/sr0”はほかのUSB DVDドライブ(画面=中央)。ローカルコンピュータのHDD上にデータを保存することもできるが、これはイメージファイルを使用した仮想HDDのようなもので、Windows上からは読めない(画面=右)

 製品の性格上、基本的にシングルユーザーでの利用を前提としているようで、プレーヤー領域のディレクトリのオーナーは、初回起動時に作成したユーザーになる。これらのディレクトリのパーミッションは755であり、最初のユーザー以外は書き込めない。2人目以降のユーザーを作成しても使いにくくなりそうなので、素直にシングルユーザ用と割り切ろう。

 ちなみに、独自のオンラインサービス「wizpy Club」(2年目以降400円/月)では、アプリケーションのアップデートやプラグインの導入、500Mバイトのネットワークストレージ(オプションで追加可)などが提供される予定だが、今回はサービス開設前で利用することはできなかった。

これからのブラッシュアップに期待

 総じて、wizpyは非常に面白いガジェットだと思う。思うのだが、どうも詰め込みすぎて中途半端になっているような印象が否めない。50グラム程度のコンパクトな筺体に有機ELパネルという構成は、非常にそそられるものがある。しかし、システム以外のユーザーが利用できるデータ領域はかなり小さく、プレーヤー領域とユーザー領域は、決められたサイズでメモリ領域を分け合っているため、たとえユーザー領域をほとんど使わない場合でも、その分をプレーヤー領域に回すことはできない。

付属ストラップを使えばアクセサリとして身につけることもできるが、結局USBケーブルを持ち歩く必要がある。ちょっと残念

 メディアプレーヤーとして使う場合の、野暮ったいUIも気になるところだ。欲を言えばもう少し日本語の美しいフォントを採用してもらえれば、と感じる。おそらくUnicode対応フォントという時点で選択肢がかなり狭くなっているのだとは思うが、妙な明朝風フォントを見ていると、怪しげな日本語の海外製品を想起してしまう。ガジェットは「持っていることが楽しい、うれしい」と思わせることも重要なポイントなので、もう少し気をつかってほしかった。

 また、コンパクト化を最優先にした結果か、利便性の面でやや惜しいと思わせる点もある。データ領域を拡張できるようにSDカードスロットを搭載したり、USBケーブルを持ち歩かなくてすむようにUSBコネクタを内蔵する、あるいはネックストラップにUSBケーブルを内蔵するといったような工夫があるとよかったかもしれない。


 USBメモリに収まるLinuxはフリーで存在している。それに対して明確な差別化を図るのであれば、マルチメディアプレーヤーとLinuxが共存することによって得られる恩恵を強くアピールできなければ、製品としてのインパクトは弱い。こりん星の価値基準は知るすべもないが、少なくとも地球に生息するいちライターにとっては、まだまだ改善を多く必要とする製品だと感じた。

 苦言を多く呈する記事になってしまったが、なまじ期待が大きいだけに「惜しい」点が目につくということでもある。ファームウェアやソフトウェアのアップデートで改良できそうな部分も多いので、今後のブラッシュアップに期待したい。

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