ぼくらは「USB-RGB」を誤解していたかもしれない(3/4 ページ)

» 2007年07月17日 19時20分 公開
[瓜生聖,ITmedia]

実は究極のシンクライアント!?

 先行製品である海連の「サインはVGA」の構成は、Netchip TechnologyのPCIバスインタフェース内蔵USB 2.0コントローラ「NET2280」を用いてUSBをPCIに変換し、その先に台湾Silicon Integrated Systemsのグラフィックスコントローラ「SiS315E」を接続している。つまり1番のキモは「USB-PCI変換」だ。ある意味、非常にストレートな(想像しやすい)アプローチといえる。そしてこの構成では、ボトルネックになるのは本来の帯域から大幅に狭くなってしまったUSB 2.0部分だろう。

 一方、USB-RGBのメインチップは英DisplayLinkのHRE(ハードウェアレンダリングエンジン)「DL-120」である。DL-120はUSB 2.0とRGB出力を持つチップだが、その主要な機能は「ロスレス伸張エンジン」、つまり、ロスレスで圧縮されたデータをハードウェアで伸張するというものだ。

 これならUSB-RGBの描画の流れは次のようになる。Windows上で動作するバーチャルグラフィックスカードソフトウェアドライバ「DisplayLinkManager.exe」がOSからの描画命令を受け取り、それをロスレス圧縮してUSB 2.0経由でUSB-RGBに転送、USB-RGBはこのデータをDL-120で復元してRGB出力する。つまり、USB-RGBはグラフィックスアダプタということになってはいるが、中身はリモートデスクトップのハードウェアアクセラレータに近い。そのため、ボトルネックとなりうる可能性があるのはDisplayLinkManager.exeによるデータ圧縮、USB 2.0の帯域、DL-120のデータ伸張の3カ所ということになる。

USB-RGBの心臓部はDL-120。実はロスレス伸張チップだ(写真=左)。USB-RGB側にWindows Media Playerを表示。wmplayer.exeとDisplayLinkManager.exe、合わせて100%近いCPU占有率(画面=中央)。PC本体出力側にWindows Media Playerを表示。DisplayLinkManager.exeの負荷がぐっと下がっている(画面=右)

 ここでベンチマークテストの結果に戻ろう。PCスペックによってパフォーマンスに大きな違いが出るところを見ると、その差はデータ圧縮部分によるところが大きいのではないだろうか。つまり、リモートデスクトップサーバに相当するドライバのパフォーマンスが低ければデータ送信が間に合わず、コマ落ちなどが発生するというわけだ。しかし逆に考えると、リモートデスクトップで利用されている100BASE-TXなどのLAN環境に比べ、その4倍以上の帯域を持つUSB 2.0という環境は決して悪くない。

 なお、USB-RGB使用時のプロセスの状況をタスクマネージャで調べてみたところ、Windows Media PlayerをUSB-RGB側に表示しているときにはDisplayLinkManager.exeというプロセスがWindows Media Playerと同等あるいはそれ以上のCPU占有率を示していた。そのため、USB-RGBのパフォーマンスは、PC自体の性能によって大きく変わることになるだろう。シングルコアのシステムでは、USB-RGB側のディスプレイに動画を再生させた「ながら見」状態で作業をするのはつらい場合もあるが、デュアルコアなら現実的な運用方法だ。

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