帰ってきた「悪用厳禁」――「ネトラン」復活

» 2007年10月19日 13時52分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「Web2.0時代の使命が終わった」として11月号を最後にWeb情報誌「ネットランナー」が休刊した。ところが「株式会社にゅーあきば」なる出版社が11月8日、「ネトラン」という新雑誌を創刊することが判明。第1号には「帰ってきた悪用『厳禁』」の文字。そう、いろいろあっておとなしくなっていたネトランが、「自主規制なし」の悪ノリ全開で帰ってきた。

画像 11月号を最後に休刊した「ネットランナー」

 ネットランナーは、1999年9月にソフトバンクパブリッシング(現ソフトバンククリエイティブ)から創刊。「WinMX」「Winny」といったP2Pソフトの活用法を「悪用厳禁」と紹介したり、「中華キャノン」のプラモデルなど無駄に豪華な付録をつけたりして話題になり、2002年のピーク時には20万部を発行。直近でも8万部を発行していた。

 だがここ数年は、「諸般の事情」で紙面から「悪用厳禁」や「ぶっこ抜き」といった文字が消え、以前よりもおとなしい内容になっていた。「会社が目指す出版の方向性と、ネトランとしてやりたいこととのギャップが大きくなった」と武本佳久編集長は打ち明ける。

 「メディアとしてやりたいことをやれないのは不幸」――武本編集長は、ソフトバンククリエイティブを離れ、独自でネトランを発行することを決意。4月に新設したにゅーあきばに代表取締役として就任し、ネットランナーの編集部員も大半が移籍。「ネトラン」という誌名の月刊誌を新創刊する。

 ネトランは「ソフトバンククリエイティブで発行されていた『ネットランナー』とは一切関係ないことになっているので注意!」だそう。ところで「ネトラン」って名前、使っても大丈夫なんですかねぇ?――「多分大丈夫。ダメなら『ネットラナー』という第2候補もあるし」

「マッシュアップ、楽しいよね」って伝えたい

 ネットランナーもネトランも「インターネットは面白いと胸を張って言える雑誌」という基本ラインは同じ。880円という価格も同じだが、ネトランは自主規制フリー。ネットランナーで「諸般の事情」が発生する前・2003年ごろまでのノリを復活させた。創刊号では早速「ベスト・オブ・悪用厳禁ツール」を特集し、優秀作に総額300万円の開発支援金をばらまいてしまうほか、最新「ぶっこ抜き」を紹介する。

 ネトランが次に“来る”と見ているブームは、さまざまなAPIを組み合わせて新サービスを作る「マッシュアップ」だ。「昨年ごろからマッシュアップを熱く語る人もいたけれど、あの時点で騒いでもまだ人は付いてこない。今ならみんな騒いでくれる」

画像 ダラぴく探

 武本編集長自身「マッシュアップが楽しくて仕方ない」というが、PC入力が苦手だから、サービスを発想しては「マッシュアッパー」さんに作ってもらっている。その1つが「ダラぴく探」。指定したキーワードに関連する画像を「2ちゃんねる」や画像検索サイトで次々に検索して表示。画像が増えてくると、どんどん重なって表示される。

 「さっき見た画像どこに埋まっちゃったっけ?」と掘り起こすという時間の無駄宝探し的楽しみ方もできるほか、気になった画像はドラッグ&ドロップでピックアップし、まとめてダウンロード(=ぶっこ抜き)できる。また、YouTube動画を高速検索し、ひたすら流し続けたり、ダウンロードできる「ダラ見探」も公開した。

 「マッシュアップをちょっとやってみようかな、と思う人が増えるといい」。紙面では今後、PHP入門などマッシュアップの基礎知識を特集していくほか、優れたマッシュアップ作品に開発支援金をばらまくアワードも行い、マッシュアップ文化を盛り上げていきたいという。

「ヲタ芸ダイエット」DVDも

 Webサイト「にゅーあきばどっとこむ」と本格的に連動できるようになったのも、ネトランの特徴だ。紙面で紹介したサービスをサイトで実際に触ってもらうなどして連携していくほか、Webの新サービスとして、ネット関連の基本的質問に答えるQ&Aサイト「脱教えて君.net」や、「非オタの人には全く役に立たない」オタク向けスケジュールサービス「おた☆スケ」を展開する。

 「バカバカしいものも作りたい」――紙面やサイトだけでなく、グッズも作る。現在「ヲタ芸」でダイエットするビリーズブートキャンプ風DVD「ヲタ芸ダイエット」を企画中。経営に余裕が出てくれば、「中華キャノン」のようなバカバカしい付録も雑誌に付けてみたいという。

「収益から発想するものは面白くない」

 紙の雑誌は出すだけで大きなコストがかかるし、情報発信だけならWebでもできる。だが「情報に価値があると思ってお金を払ってくれる人がいる」ことに喜びを感じるという武本編集長。紙の雑誌なら、Web検索が苦手な人向けにも、面白いものを見やすい形で届けられると話す。

 「収益から発想するものは面白くない」――まずは面白い雑誌を多くの人のに買ってもらい、雑誌の販売収益で経営を成り立たせたい考え。その上でWebに投資し、ビジネスモデルを形作っていく。

 電子書籍も発行する。12月まで開催している「ネトラン文芸賞」では電子書籍ツール「FlipViewer」を活用。ネトラン本誌の電子書籍版もfujisan.co.jpで発売する。「紙もWebも、その間にある電子書籍も、やらないのにダメと言っていても仕方ない」

 武本編集長にも実は、苦い経験がある。「ブログが面白くないと言っていたら、ブログブームに乗り遅れた」。自戒を込めて言う。「面白そうなことは、何でもやってみないと。『ネットがつまらなくなった』と言う人もいるけれど、そういう人は面白いものを探していないだけだと思う」

「電波ビル」から発信します

画像 「ネトラン者」のすくつ? 秋葉原の第2電波ビル

 ソフトバンククリエイティブという安定した出版社を飛び出し、自らが代表を務めるベンチャーで1からの出直し。家庭を持つ2児の父として生活を賭けた大勝負だが、「自分が面白いと思うものをたくさんの人に届けたい」からチャレンジを決めた。

 オフィスは秋葉原の「第2電波ビル」。「電波という名前だけで決めた」という。「街を歩くだけで毎日10人ぐらいメイドさんが見られる場所は、日本でもアキバぐらい。アキバにオフィスがあると、休日出勤も楽しくていいですよ」

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