性能を追求したデルのPCブランドとして、日本でも定着した「XPS」に、新しいデスクトップPCラインアップとなる「XPS 420」が登場した。XPS 700シリーズで印象的だった漆黒の“前のめり”スタイルと、オーバークロックを辞さないパフォーマンスに魅了されたXPSユーザーとしては、ちょっと小さくなって、価格も手ごろになったXPS 420にも、大いに期待したくなる。
フルタワー然としていたXPS 720ファミリーとは異なり、XPS 420は、5インチ用オープンベイが2基と、ミニタワーサイズにまとまっている。フロントパネルの基調色はXPS 700シリーズと同じ「黒」だが、XPS 420では、ピアノフィニッシュにしたつやのあるブラックで統一され、ボタンに設置されたイルミネーションも青色LEDにそろえるなど、XPS 700シリーズ以上に高級感を演出している。
そのXPS 420のデザインで目を引くのが、筐体上面に設けられた「ミニ・ビュー」と呼ばれるサブディスプレイだ。320×240ドットの解像度を表示するミニ・ビューは、Windows Vistaで導入されたSide Showに対応したもので、OSが起動していなくても(正確には“スリープ状態”にあるとき)、ガジェットを利用してメールのチェックやXPS 420に保存されているコンテンツの再生ができることになっている。
ミニ・ビューで使えるガジェットは、マイクロソフトが配布する公式なものと、デルが独自に開発する「Dell Media Manager ガジェット」とされているが、今回試用した評価機材にはゲームの“ソリティア”しか導入されておらず、Dell Media Managerガジェットで提供されているはずのコンテンツプレーヤーも試すことができなかった。
Side Show対応ガジェットについては、公式なものも含めてほとんど存在しない状況なので、現時点では「見かけ」ほどの使い勝手をユーザーにもたらしてくれるものではない。しかし、ガジェットが整備されれば、デスクトップPCでもSide Showが有効に活用できるはずなので、マイクロソフトとデルには、利用環境の整備をぜひ進めていただきたい。
PC筐体の天面は中央部がお盆のように一段低くなっており、そこにはラバーシートが敷かれている。デルが、「チャージ・ステーション」と呼ぶこの場所は、携帯電話やPDAといった「小物デバイス」を置いて、“充電”できるようにするのを目的としている。ただ、(これは筆者だけなのかもしれないが)ミニタワーPCの天面部分は、机に設置するにしろ床に設置するにしろ、書籍や資料といった「ちょっとした物」の置き場所にちょうどよかったりするものだから、デルが想定している使い方が果たしてどれだけできるのだろうかと、余計なことながらちょっと心配になる。
また、これは、改善を願いたいところだが、チャージ・ステーションという名称にも関わらず、この周囲に電源の取り出しが用意されていない。USBパワーを利用した充電ケーブルか近くにあるACコンセントから取ってくればいいじゃないのということで、確かにそれで事は足りるのだが、せっかくそれらしい名前のついた場所を、わざわざラバーシートまで敷いて用意したのだから、せめて、USBの差し込みをステーションの周囲に用意してくれてもよかったのではないだろうか。
XPS 420を横から見ると、その姿は2006年にリリースされたDimension 9200によく似ている。XPS 420はフォームファクタとしてBTXを採用しているので、冷却用の大口径ファンがフロントに設置されているが、ファンの取り付け位置をフロントパネルから1段奥に下げることで、静音性能の向上を図っている。同じ方式をとったDimension 9200では、以前掲載したレビューで「爆音とまではいかないもののなんらかの作業をしているときは騒音が大きい状態であることが多かった」と評価されていたが、XPS 420では、アイドル時はもちろん、ベンチマークテストを動かしているときでも、ファンの音はそれほど気にならなかった。回転数の制御がかなり改善したおかげだろうか。
天面奥にあるレバーを引くと、サイドパネルが外れる仕組みもDimension 9200と同じだ。電源ユニットの場所、底面に並んだ2つの3.5インチシャドウベイの配置から、ドライブベイに設けられた「工具要らず」の脱着レバーまで、筐体内部のレイアウトもDimension 9200と共通となっている。しかし、見た目は同じでも、さすがXPSということで、「720」ほどではないにしても、その中に組み込まれるパーツは、格段に強化されている。
XPS 420もBTOで構成をユーザーが選択できるようになっているが、CPUでは、FSB1333MHzに対応したデュアルコア「Core 2 Duo E6850」「Core 2 Duo E6750」に加えて、エントリークラスのクアッドコアCPU「Core 2 Quad Q6600」を用意、グラフィクスカードでも、GeForce 8600 GTSにRadeon HD 2600 XT、Radeon HD 2400 Pro(ともにHyperMemoryに対応)といったバリュー、ミドルレンジのほかに、ハイエンドのGeForce 8800 GTXを選択できるなど、コストパフォーマンスに優れた構成が用意されている。光学ドライブではBlu-ray Discドライブ(試用機材にはPLUDのDH-4B1Sが搭載されていた)が、拡張カードでは物理演算専用エンジンの「AGEIA PhysX」といった最先端のパーツも選べる。
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