第4回 複合機6モデルの画質を解明する複合機07年モデル徹底攻略(2/4 ページ)

» 2007年12月28日 16時30分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]

写真自動補正機能の精度

 それでは、PM-T960、MP970、C8180の印刷サンプルを4人の審査員が見比べた結果について、写真の系統ごとに見ていこう。前述の通り、今回のテストでは48枚ずつの写真を印刷したが、誌面の関係で印刷サンプルは一部を抜粋して掲載する。

スナップ/一般画像系の写真

スナップ/一般画像系写真の自動補正結果
製品名 PM-T960 MP970 C8180
メーカー名 エプソン キヤノン 日本HP
審査員 1番 2番 3番 4番 1番 2番 3番 4番 1番 2番 3番 4番
写真1(草原に大木)
写真2(ハッピを着た子供たち)
写真3(猫と植え込み)
写真4(着物を着た女性、アンダー)
写真5(おせち料理、黄色かぶり)
写真6(ステンドグラスのある宴会場)
写真7(ガレージ内の自動車)
写真8(カラフルな毛糸)
写真9(集合写真、アンダー気味)
写真10(木と民族楽器を弾く2人)
結果 ◎=11、○=24、△=5 ◎=14、○=17、△=9 ◎=5、○=23、△=12

 まずはスナップ系の写真10枚を印刷したところ、最も良好な補正結果(◎の評価)が多かったと判断されたのはキヤノンのMP970だった。これにエプソンのPM-T960が続く形だ。ただし、PM-T960は補正結果がいまひとつと判断されること(△の評価)が少なく、合格点(○の評価)を付けた数でMP970を大きく上回る。MP970は補正結果に少しバラツキがある印象だ。

 PM-T960の自動補正は、どんな写真でもホワイトバランスが適正に近く調整されており、光源の雰囲気を少し損ねてしまう場合はあるが、明らかに的外れな補正をするようなことは少ない。派手に色を乗せるケースも少なく、これが合格点が多かった理由だ。

 一方、MP970の自動補正は全体的に色乗りがよく、色温度が下がる傾向にあり、人や物が温かみのある雰囲気になる。ただし、全体に黄色かぶりした写真などでは、色かぶりがより強調されてしまう場合があり、これが賛否両論を生む結果となった。

 PM-T960とMP970は、露出アンダーで人物が写ったケースでも人物の顔が明るくなるように自動補正できていた点は高く評価したい。ちなみに、人物が写っていない写真では、それほど際立った補正はしない方向性のようだ。

 日本HPのC8180は、エプソンやキヤノンと比較すると抑えめの補正で、半数以上が合格点と判断されたが、補正結果に満足できない場合もある、といった具合だ。

写真6の印刷例。左から元画像、PM-T960、MP970、C8180による印刷サンプルだ。3台とも失敗が少ない補正例だが、PM-T960はホワイトバランスを修正したことで、少々あっさりした雰囲気になっている

写真10の印刷例。左から元画像、PM-T960、MP970、C8180による印刷だ。MP970は明るく補正しつつ、色温度が少し下がり、南国らしい雰囲気が出ている

ポートレート系の写真

ポートレート系写真の自動補正結果
製品名 PM-T960 MP970 C8180
メーカー名 エプソン キヤノン 日本HP
審査員 1番 2番 3番 4番 1番 2番 3番 4番 1番 2番 3番 4番
写真1(女性の顔アップ、若干オーバー)
写真2(女性の顔アップ)
写真3(子供の顔アップ、アンダー気味)
写真4(女性の顔アップ、彩度が低め)
写真5(女性の上半身、シアンのニット)
写真6(女性の上半身、彩度が低め)
写真7(女性の全身、彩度が低め)
写真8(子供の上半身、逆光)
写真9(女性の全身、森林の中)
結果 ◎=5、○=26、△=5 ◎=10、○=11、△=15 ◎=3、○=23、△=10

 ポートレート系の写真を9枚印刷した。MP970は当り外れのバラツキが多少あり、PM-T960は◎の数では負けているものの失敗例が少ない、C8180は中庸といった傾向だ。この結果は、スナップ系の写真とほとんど変わらない。

 PM-T960は肌色を適正に補正できているケースが最も多く、肌色を積極的に好ましく補正するコンセプトがよく分かる。MP970の自動補正はやはり色温度が低めになり、肌色や植物の緑色が黄色っぽくなる傾向にあった。これが写真にいい影響を与えることもあれば、そうでない場合もある。結果を細かく見てみると、写真の素材性を重視するプロカメラマン(審査員3)にはMP970が不評だったが、色鮮やかな写真を好む一般の参加者(審査員4)には好評とおもしろい結果が出た。

写真3の印刷例。左から元画像、PM-T960、MP970、C8180による印刷だ。このようにアンダー気味の写真をPM-T960とMP970は明るく補正できており、レベル補正によるノイズも目立たない。ただし、PM-T960は背景までかなり明るく変更され、MP970は顔が少し黄色っぽくなった。C8180の補正は控えめだ

風景系の写真

風景系写真の自動補正結果
製品名 PM-T960 MP970 C8180
メーカー名 エプソン キヤノン 日本HP
審査員 1番 2番 3番 4番 1番 2番 3番 4番 1番 2番 3番 4番
写真1(紅葉と湖)
写真2(海に浮かぶ島)
写真3(樹海)
写真4(紅葉と金色のみこし)
写真5(紅葉と川、彩度が低め)
写真6(森林と寺、彩度が低め)
写真7(夕暮れの街)
写真8(海と岸壁、遠方に山)
写真9(鉄橋の奥に滝)
写真10(湖と森林)
写真11(室内から庭を望む)
結果 ◎=8、○=28、△=8 ◎=7、○=23、△=14 ◎=5、○=26、△=13

 風景写真を11枚印刷してみた。やはり傾向はスナップやポートレートと同様だ。MP970の補正はコントラストと彩度を積極的に強調するが、森林の緑色や青空の薄い水色が黄色に寄る場合があり、好みの違いで印象が分かれている。

 ここでもPM-T960は平均して適正な補正ができていると判断されているが、シャドウの階調を締めすぎて、黒が若干つぶれる場面も散見された。

 C8180は全体的にコントラストが低めで、黒の締まりも弱く、これが見た目の印象に影響を与えることが多かった。こうした発色は自動補正のアルゴリズムというより、インクと用紙の傾向によるところが大きい。

写真5の印刷例。左から元画像、PM-T960、MP970、C8180による印刷だ。PM-T960は暗部の階調が締まり、全体にメリハリが生まれた。MP970は豊かな発色だが、元画像より紅葉が強調されすぎている感もある。C8180の自動補正は控えめで、元写真の雰囲気を残した

写真8の印刷例。左から元画像、PM-T960、MP970、C8180による印刷だ。PM-T960は深みのある青を表現しているが、若干マゼンタが混じっている。岩肌の色も強めに出た。MP970は一見適正でバランスがいいが、山頂部分が少し白飛びしているのが惜しい。C8180は元画像に近い補正のため、インパクトには欠けるが、自然な仕上がりとなった

夜景系の写真

夜景系写真の自動補正結果
製品名 PM-T960 MP970 C8180
メーカー名 エプソン キヤノン 日本HP
審査員 1番 2番 3番 4番 1番 2番 3番 4番 1番 2番 3番 4番
写真1(黄色に光る建築物)
写真2(海辺の街と観覧車)
写真3(高速道路、スローシャッター)
写真4(繁華街)
写真5(電飾された風車)
写真6(祭りのちょうちん)
写真7(海辺の街と人物)
写真8(緑に光る電光掲示板)
結果 ◎=6、○=21、△=5 ◎=6、○=22、△=4 ◎=2、○=15、△=15

 夜景の写真8枚を印刷したケースでは、MP970の補正が最も適切で失敗が少ないという結果になった。夜景の暗い部分を損なわず、うまく露出を補正して、彩度も高めている印象だ。夜景のシーン自動認識が有効に働いているのが実感できる。

 PM-T960もMP970とほぼ同じ成績で、エプソンが最新複合機で「オートフォトファイン!EX」のシーン判別機能に「夜景」を加えたことが十分に生かされている。人物と夜景を同時に撮影したカットでも双方のバランスがよい(MP970は夜景の中で人物を明るく鮮やかに補正する半面、少し不自然になる場合があった)。

 C8180の自動補正は、夜景のシーン判別をせずに自動補正をすることから、全体的に黒が浮いて、夜景の雰囲気を損ねてしまうことが少なくない。夜景は苦手なシーンといえそうだ。

写真2の印刷例。左から元画像、PM-T960、MP970、C8180による印刷だ。PM-T960は黒が締まり、ビルに立体感がある。MP970は光源の明るさを強調しつつ、夜景らしい雰囲気をうまく残した。C8180は黒を持ち上げすぎて、夜景らしさが失われている

マクロ系の写真

マクロ系写真の自動補正結果
製品名 PM-T960 MP970 C8180
メーカー名 エプソン キヤノン 日本HP
審査員 1番 2番 3番 4番 1番 2番 3番 4番 1番 2番 3番 4番
写真1(硬貨の山)
写真2(青紫の花と茎)
写真3(ナシゴレン、強い黄色かぶり)
写真4(赤紫の花、アンダー気味)
写真5(オレンジの花、オーバー気味)
写真6(刺身)
写真7(白い花、アンダー気味)
写真8(花にとまる黄色のチョウ)
写真9(木材とセミの抜け殻)
写真10(パンと緑の前菜)
結果 ◎=1、○=29、△=10 ◎=4、○=16、△=20 ◎=6、○=27、△=7

 最後にマクロで撮影した写真を10枚印刷してみた。いずれも花や料理など被写体にぐっと接近した写真だ。こうした写真はシーン判別が非常に難しく、PM-T960とMP970の自動補正が外れるケースが多く見られた。特にMP970は、彩度が上がり、発色が黄色に寄る場合があるため、花や料理の微妙な色調が崩れてしまうことが多い。C8180は比較的控えめな補正がよい方向に働き、ここでは最も満足度が高い結果を得ている。

 各社ともアンダー気味の写真は明るく補正された。もう少し強い補正でもよい写真はあったが、見た目の画質としては十分だ。逆にオーバー気味の写真は各社ともあまり変わりばえしない。露出オーバーで白飛びや色飽和が発生していると、色の情報自体が失われているため、補正のしようがないのだろう。

写真4の印刷例。左から元画像、PM-T960、MP970、C8180による印刷だ。いずれもアンダー気味の露出が補正できたが、花の色調には違いが出ている


写真の自動補正結果(合計)
製品名 PM-T960 MP970 C8180
メーカー エプソン キヤノン 日本HP
◎の数 31 41 21
○の数 128 89 114
△の数 33 62 57

 以上の審査結果を集計したのが右の表だ。傾向としては、PM-T960の自動補正機能が比較的優秀だった。今回の検証に限っていえば、自動補正のヒット率が最も高く、色かぶりやホワイトバランスをしっかり整えていたので、誰の目にも補正の仕方がおかしいと思えるケースが少なかった。

 エプソンの最新モデルではオートフォトファイン!EXが強化され、シーン自動判別に「夜景」を追加したことに加えて、従来のトーンカーブ調整を明るさ成分(Y)と色成分(Cb/Cr)に分解するように内部の処理を変更し、肌色の補正精度と色かぶりの補正精度を向上させているのだが、これが威力を発揮している。いうなれば、「優等生」的な自動補正だ。

 対するMP970は、最良の補正結果(◎の評価)がいちばん多かった点を高く評価したい。その一方で、強い補正により元画像の雰囲気とがらりと変わる場合があり、賛否両論となった。今回は元画像をディスプレイで見比べながら評価したため、暖色系の豊かな発色に違和感を覚えることが少なくなかったが、例えば1枚の写真として手渡された場合、好ましく思うケースは多そうだ。「好みにはまれば強い」といったタイプだ。

 C8180は自動補正の効きめがエプソンやキヤノンより弱く、「もっと補正してほしかった」というシーンが多い半面、素材の雰囲気をうまく残す場面も見られた。高度なシーン分析の仕組みは持たないが、「自然派」の自動補正はなかなか侮れない。

 次のページからは、複合機6モデルにおけるプリント/コピー/スキャンの画質について、統一のサンプルで比較してみよう。

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