802.11nドラフト2.0無線LANルータの本命か!?――「AtermWR8500N」実力診断(後編)ライバル機種と徹底比較(2/3 ページ)

» 2008年01月30日 16時00分 公開
[織田薫,ITmedia]

AtermWR8500Nの通信速度を検証する

 ここからはAtermWR8500Nの通信速度を検証していく。テストに用いたノートPCのスペックと家屋環境は図の通りだ。ノートPCはアンチウイルスソフトを適用していない。また、無線LANは基本的にデフォルトの設定としている。テストはFTPで行い、クライアント側はOS標準のFTPコマンド、サーバ側はProFTPDを使って、100MバイトのファイルをGET(ダウンロード)/PUT(アップロード)したときの値を計測した。

テストを実施したのは鉄筋コンクリート製マンションの8階。無線LANルータ本体から3メートル程度離れた位置(同部屋)と、別の部屋の両方でスループットを計測した。電波干渉をできるだけ抑えるため、ほかの無線LANルータが発見できないか、非常に微弱な電波しか届かない状態でテストしている。また、2.4GHz帯の通信に影響を及ぼす電子レンジなどの機器は使用を控えた

 テストは、AtermWR8500Nのセットモデルに同梱された無線LANカード「AtermWL300NC」をノートPC(ThinkPad T61)にセットして使用した場合と、ノートPCの内蔵無線LANモジュール「Intel Wireless WiFi Link 4965AGN」を使用した場合の両方で行った。AtermWL300NCではデュアルチャネル(40MHz幅)とシングルチャネル(20MHz幅)の通信速度、4965AGNではシングルチャネル(20Hz幅)の通信速度を計測している。

 ちなみに、ノートPCに内蔵された無線LANモジュールの4965AGNを使う場合は、液晶ディスプレイ部に内蔵された高い位置の無線LANアンテナで通信するため、PCカードの先端にアンテナがあるAtermWL300NCより感度は有利になる。

無線LANルータど同じ部屋(3メートルの位置)でのテスト結果

 3メートルの位置でのテスト結果は、デュアルチャネル通信で100Mbpsに近い値が出ており、IEEE802.11nの通信速度として十分満足できる結果が出た。一方、シングルチャネル通信では、AtermWL300NCも4965AGNもデュアルチャネルの6〜7割程度の速度が出ている。シングルチャネルでもIEEE802.11nならではの高速な通信が可能だった。

別の部屋でのテスト結果

 別の部屋で計測したテストでは、デュアルチャネルとシングルチャネルで大きな差が出ない結果となった。アクセスポイントとなる無線LANルータから離れた場所では、帯域幅が大きいデュアルチャネル通信は不利になる。距離が遠かったり、障害物が多かったりする場合は、デュアルチャネルに設定してもシングルチャネルと同程度のパフォーマンスになる点は覚えておきたい。

 とはいえ、AtermWL300NC使用時のテスト結果はFTP GETの値が最大70MHzを超えており、通信速度に不満はない。今回のテスト環境が電波を遮断しやすい鉄筋コンクリートのマンションであることを考慮すると、なかなかの健闘ぶりだ。

 一方、全体的にAtermWL300NC使用時にFTP PUTの値が振るわない点は気になった。4965AGN使用時は別の部屋でのテストでGET/PUTともにあまり差が出なかったため、これは親機であるAtermWR8500Nの問題ではなく、AtermWL300NCもしくはノートPCのテスト環境に何らかの問題があったようだ。後日、編集部で別のクライアントPCにAtermWL300NCをセットして通信したところ、FTP GETの値が80Mbps以上出たケースもあったので、FTP PUTの傾向は筆者のテスト環境での特殊な例かもしれない。

無線LANアンテナの内蔵は通信速度に影響するか?

 次に、AtermWR8500Nの通信速度をAtermWR8400N、WZR-AMPG300NHと比較してみた。テスト環境は前述の通りだ。クライアント用の無線LAN機能は、それぞれの無線LANルータのセットモデルに付属する無線LANカード(AtermWR8500NとAtermWR8400NがAtermWL300NC、WZR-AMPG300NHが「WLI-CB-AMG300N」)とノートPC内蔵モジュールのIntel Wireless WiFi Link 4965AGNを使用している。

有線LANのテスト結果

 まずは有線LANの比較だが、ギガビットイーサネットを搭載したAtermWR8500NとWZR-AMPG300NHがほぼ同等、AtermWR8400Nが1/8程度の速度になっている。これは、1000BASE-Tと100BASE-TXの差として妥当なものだ。家庭内にPCやNASなど、ギガビットイーサネットで接続可能な機器が2台以上ある場合は、ギガビットイーサネットを導入することでLAN全体を高速化できるはずだ。

無線LANのテスト結果(それぞれ付属の無線LANカードを使用、同じ部屋/距離3メートル)

無線LANのテスト結果(それぞれ付属の無線LANカードを使用、別の部屋)

無線LANのテスト結果(4965AGNを使用、同じ部屋/距離3メートル)

無線LANのテスト結果(4965AGNを使用、別の部屋)

 無線LANのテストでは、AtermWR8500NとAtermWL300NCを組み合わせた場合のFTP GETが最高速という結果になった。無線LANのスループットは家屋の種類や障害物の配置状況などにより変わるので、テスト環境によっては同じ傾向にならない可能性もあるが、今回試した限りでは大型の無線LANアンテナを備えたWZR-AMPG300NHやAtermWR8400Nを上回っている点は評価できる。

 ただし、ここでも無線LANカードにAtermWL300NCを用いたテスト結果は予想より低速になってしまった。詳しい原因は不明だが、別の環境ではFTP PUTの値がGETの値に迫るという結果も得られている。ここでは単純にAtermWR8500NとAtermWR8400Nの同一環境における通信速度の比較として見てほしい。また、今回はWZR-AMPG300NHを別の部屋で通信したときのFTP GETの速度も振るわなかったが、外付けアンテナの向きをクライアントの位置に応じて微調整するなどの工夫により、改善されることもあるだろう。

 テスト結果を総合すると、AtermWR8500Nは無線LANのアンテナを内蔵してコンパクトなボディに仕上げているが、パフォーマンスの面で不利になることはなく、デュアルチャンネル802.11nドラフトの無線LANとギガビットイーサネットの有線LANを生かした高速な通信が行えることが分かった。

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