MacBook Airから見える新しい風景MacBook Airレビュー前編(1/4 ページ)

» 2008年02月13日 11時00分 公開
[林信行,ITmedia]

 MacBook Airは、ただの薄型ノート、ただの軽量ノートではなく、モバイルコンピューティングの新しいスタイルを提案するPCだ。この製品にとってCPU性能やHDD容量といったスペックはもはや取るに足りないことで、それよりもむしろ、人々のPCを使う風景がMacBook Airによってどのように変わるのか、MacBook Airがどのように変えていくのかこそが重要だ。この1枚の美しいPCをしばらく使えば、いままさにモバイルコンピューティングをとりまく環境が大きく変化しつつあり、これまでの古い発想ではノートPCの十分な評価ができないことを思い知らされる。

 そこで今回、MacBook Airのレビューを前後編に分けた。前編ではこの製品から伝わってくる新しい時代のコンピューティング像を描き出す。そして後編ではもう少し踏み込んで、MacBook Airでそうしたスタイルがどの程度の実用レベルで実装されているのかを検討していきたい。

 前編はやや長い前置きのようで心苦しいが、アップルの製品が、ただ仕様だけで評価できるものではなく、その背後にある思想を通して初めて評価できるものであることは、iPodを使う多くのユーザーならきっと理解してくれることだろう。

人を選ぶパソコン

 MacBook Airは使い手を試す。もし(MacBook Airに)選ばれた人々は、マシンをひと目見ただけで「他人が言う評価はどうでもいい、自分はこれを買わなければ」と強く感じるはずだ。この究極にエレガントなマシンを持ち歩き、世の中に新しいライフスタイルを広めていく一員となることに強い意義を感じる――そういう人々は、自分の直感に従っていい。おそらくMacBook Airのパッケージを見た瞬間、ふたを開けた瞬間、その冷たいボディに手を触れた瞬間から感動が止まらないはずだ。

 CPUの動作クロックやストレージ容量がどのくらいかなどという細かいことはすべて忘れて、やがて自分のすべてを詰めて持ち歩くことになる、この1枚の美しいPCとの邂逅(かいこう)を楽しんでほしい。

 一方、このマシンを見て、HDD容量や光学式ドライブの有無が気になった人は、0.9キロの増量に妥協して弟分のMacBookを買ったほうが賢明だ。MacBook Airは、新時代の「粋(いき)な」コンピューティングを楽しむためのものだ。圧倒的な処理能力でソフトウェアを駆使し蓄積したさまざまな情報を活用する、コンピューティングの「粋(すい)」を楽しむためのものではない。

 しかし、中にはこのMacBook Airに魅了されつつも、はたして光学ドライブなしで、あるいはこのストレージ容量でやっていけるのか、と思い悩んでいる人もいるだろう。このレビューはそうした人々にこそ届けたい。

 なお、MacBook Airを見て直感的に購入を決めた人とって、最大の問題はHDDモデルを選ぶか、SSDモデルを選ぶかだろう。筆者がHDDモデルを購入したからではないが、少し立ち止まって考えれば、HDDモデルを選んだほうが正解だろう。わずかとはいえ、こちらのほうが容量も大きい。

 SSDはデータ転送速度でHDDよりも有利かと思ったが、MacBook Airの内蔵ドライブインタフェースは低速なパラレルATAを採用しているため、スピード面での優位性はないという。また、バッテリー駆動時間が長いのではないかとも思ったが、そういうこともないようだ。となれば、SSDモデルを選ぶ実用上のメリットは、動作音が静かなことと、HDDのような物理的故障の可能性が低いことくらいだ。

 しかし、この「知性のつまった1枚の板」という製品のコンセプトを美しいと感じとれる人なら、その中で円盤がせわしく回転しているHDDモデルよりも、見えない内側にまで「禅的な静」で構成されるSSDモデルを求めることだろう。

 HDD版を購入した筆者だが、確かに手にディスクの回転する振動が伝わってきたときには、ここはもう少し潔くSSD版を買ったほうが「粋(いき)」だったかもしれないと少し後悔した。普通の判断ではSSD版は間違いだが、要するに美学の問題なのだ。あるパーティーで人気ブロガーの小飼弾氏に「あのマシンを買うならSSDモデルを買わなければ意味がない」と言われたのを思い出す。

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