エプソンの“普通紙くっきり”プリンタを検証する全色顔料インクの効果は?(3/4 ページ)

» 2008年04月10日 18時45分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]

顔料インクによる写真印刷の品質は?

 続いて、専用写真用紙への写真印刷を試してみた。用紙はエプソン純正の「EPSON写真用紙クリスピア」を使用し、付属の写真印刷ソフト「EPSON Easy Photo Print」で出力したものを評価している。色調の自動補正機能は、すべて「オートフォトファイン!EX」(補正種別:標準)だ。

 EPSON Easy Photo Printやプリンタドライバで出力する場合、用紙の種類を「EPSON写真用紙<光沢>」や「EPSON写真用紙クリスピア」にすると、プリセットの印刷品質で「標準」か「きれい」が選べるが、画質差は非常に小さい。「きれい」設定では印刷時間が大幅に長くなるので(詳細は後述)、通常は「標準」設定で十分だろう。

 まずは染料インク機と比較したおおまかな印象から述べると、一見したときの見栄えは染料インク機のほうが上だ。PX-A740とPX-V780の顔料インクは、インクの粒子が用紙の表面で定着するため、光を乱反射して用紙の光沢感を損ねる。

 この点はユーザーの好みもあるのだが、PX-A740とPX-V780ではインクの粒状性も比較的目立ちやすい。青空のグラデーションや人肌などで、割とはっきりインクのドットが見えるので、やはり写真印刷には染料インク機が向いていると思う。ただし、印刷したものをアルバムに入れて、数十センチの距離で眺めるという一般的な利用シーンを考慮すると、インクの粒状性はそれほど気にならない程度ではある。

写真データの印刷サンプル(クリックすると300dpiでスキャンした画像の一部を800×600ドットで表示)。印刷設定は「標準」(STD)で、左からPX-A740、PX-V780の出力結果だ。いずれも一見してキレイだが、よく見ると、果物の部分などでインクの粒状性が確認できる

 EPSON写真用紙クリスピアへの写真印刷においては、PX-A740とPX-V780の画質には意外と差があった。単機能プリンタのPX-V780は、全体的に明るく、印刷する画像によっては、暗部が浮いてコントラストが落ちたり、赤やマゼンタに色かぶりする場合があった。複合機のPX-A740にも同じような傾向はあるが、PX-V780よりも明るさとコントラストのバランスは取れており、階調のダイナミックレンジが広い。

 なお、PX-A740のメモリカードダイレクト印刷で出力した場合(自動補正機能はオートフォトファイン!EX)は、EPSON Easy Photo Printとは微妙に発色が異なるようだ。メモリカードダイレクト印刷では、明るさが控えめで彩度がやや高くなる。どちらがよいとは一概にはいえないが、メモリカードダイレクト印刷のほうが「好ましい」と感じるヒット率が高い印象だ。

印刷速度はPX-V780のモノクロ印刷に注目

PCのテスト環境
CPU Core 2 Duo E6300(1.86GHz)
チップセット Intel P965 Express
メモリ 2Gバイト(PC2-6400)
HDD HDT725025VLA380(7200rpm)
グラフィックス GeForce 6600 GT
OS Windows Vista Ultimate

 PX-A740とPX-V780は、印刷ヘッドのノズル数が少ないので、特にカラーの印刷速度はそれほど速くないと予想される。テスト環境は表の通りで、PCとはUSBで接続した。テスト項目と結果は個別に述べていく。

 最初のテストはA4普通紙印刷だ。前ページの画質チェックと同様に、JEITA標準パターン「JEITA J1」をMicrosoft Office Word 2003から印刷した場合と、Internet Explorer 6からPC USERのトップページを1ページだけ印刷した場合の時間を計測した。計測したのは、PX-A740とPX-V780で紙送りが始まる瞬間から印刷が終了して排紙されるまでの時間なので、PCでの処理時間は含まない。プリンタドライバの設定は、普通紙におけるデフォルト品質の「標準」と、詳細設定の「レベル1」(最速設定)を使った。

A4普通紙印刷(JEITA J1)
印刷品位 PX-A740 PX-V780
レベル1(最速) 4秒11 2秒93
標準(レベル3) 14秒19 4秒29

 まず、データ全体がモノクロフォントのみの「JEITA J1」は、黒ノズルが合計360ノズルと多いPX-V780が速い(PX-A740の黒ノズルは90ノズル)。プリンタドライバが「標準」設定の場合、PX-A740の約14秒に対して、PX-V780は約4秒強と、およそ3倍も高速だ。

 最速設定の「レベル1」では大差ないが、PX-A740がカラーインクを併用して時間短縮を図っている一方で(出力もグレーになる)、PX-V780は黒インクだけで印刷する。いずれも出力自体はさほど薄くならず、プレビュー印刷やちょっとした資料の印刷なら、「レベル1」設定でも実用的だ。

A4普通紙印刷(Webページ)
印刷品位 PX-A740 PX-V780
レベル1(最速) 5秒32 10秒95
標準(レベル3) 21秒51 25秒38

 一方、カラーとモノクロが混在したWebページの印刷は、カラーノズルが多いPX-A740が速くなる。カラー部分の比率によって変動するが、PX-A740もPX-V780も「標準」設定で20秒以上かかっており、最近のプリンタにしては「少し遅いかな」という感覚だ。

 次はL判フォト用紙への写真印刷だ。写真データは約1.8Mバイト/約600万画素のオリジナル画像で、Adobe Photoshop CS2からL判サイズにフチなしで印刷した。フォト用紙は純正のEPSON写真用紙クリスピアを使用、プリンタドライバの設定はプリセットの「標準」(デフォルト)と「きれい」の2パターンだ。

L判フチなし写真印刷(PCから)
印刷品位 PX-A740 PX-V780
標準(レベル3) 1分07秒59 2分46秒78
きれい(レベル5) 5分54秒23 5分22秒31

 テスト結果は右表の通りだが、PX-A740もPX-V780もかなり遅い。染料インク機の最新モデルだと、プリンタドライバの「標準」設定におけるフォト用紙のL判フチなし印刷は、約20秒程度で完了する。画質でも印刷速度でも、PX-A740とPX-V780は写真印刷に不利といわざるを得ない。

 参考までに、PX-A740のA4普通紙カラーコピー、メモリカードダイレクト印刷、スキャンの速度も記しておく。カラーコピーおよびスキャンの原稿は、エプソンの「カラリオ・プリンタ総合カタログ」(最新版)の裏表紙だ。コピーは画質設定として、「エコノミー」「標準」「きれい」の3通りが選べるが、「エコノミー」は印刷が薄すぎ、「きれい」はコピー時間が長すぎるので、「標準」以外はほとんど使う機会がないだろう。画質的にも「標準」設定で十分だ。

 メモリカードダイレクト印刷のL判フチなし印刷は、PX-A740本体のスタートボタンを押してから排紙までのタイムだ。印刷画像はPCからのテストで使用したものと同じだが(約1.8Mバイト/約600万画素)、PX-A740での処理時間を含む。画質設定は「標準」で固定となるが、やはり遅い。染料インク機の最新モデルだと、同じく標準画質の場合、「PM-T960」約22秒弱、「PM-A840」が約31秒だ。

A4普通紙コピー
印刷品位 PX-A740
エコノミー 9秒36
標準 31秒56
きれい 1分55秒21
反射原稿スキャン
設定 PX-A740
A4(150dpi) 20秒48
A4(300dpi) 28秒29
L判(600dpi) 1分53秒09

L判フチなし写真印刷(メモリカードダイレクト)
印刷品位 PX-A740
標準 1分13秒62

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