Pumaのごとくスタートダッシュを狙うAMD――「Turion X2 Ultra」発表COMPUTEX TAIPEI 2008(1/2 ページ)

» 2008年06月06日 04時45分 公開
[前橋豪,ITmedia]

Griffinの製品名はTurion X2 Ultraに

Turion X2 Ultra

 AMDは6月4日、COMPUTEX TAIPEI 2008の開催中にノートPC向けの新型CPU「Turion X2 Ultra Dual Core Mobile Processor」と、同CPUを含む新しいプラットフォームを発表。OEMメーカーに向けて出荷を開始した。インテルがCentrino 2の発表予定を6月末から7月半ばに突然延期したこともあり、ライバルより一足先にノートPC向けのプラットフォームを刷新したことになる。

 Turion X2 Ultraは“Griffin”の開発コード名で呼ばれていた65ナノメートルプロセスルールのデュアルコアCPUだ。ノートブックPC向けに設計を見直しており、2つのコアとノースブリッジユニットで独立した電力制御が行える。

 また、要求される負荷に応じて、内蔵されている各コアごとに独立して動作クロックを設定するIndependent Dynamic Core Technology機能や、省電力に最適化したDDR2対応のメモリコントローラを持つ。外部接続にはHyperTransport 3.0を使うが、データ転送量によって帯域幅が可変する仕組みを採り入れ、消費電力を抑えている。

 ラインアップは現状で3モデルあり、上から2.4GHz動作の「ZM-86」、2.2GHz動作の「ZM-82」、2.1GHz動作の「ZM-80」といった構成だ。上位2モデルとZM-80では熱設計消費電力(TDP)が異なっている。

Turion X2 Ultraのダイ(写真=左)。Turion X2 UltraはノートPC向けに省電力設計になっている(写真=右)

Turion X2 Ultraのラインアップ
モデルナンバー ZM-86 ZM-82 ZM-80
動作周波数 2.4GHz 2.2GHz 2.1GHz
1次キャッシュ 128Kバイト(命令64Kバイト+データ64Kバイト)
2次キャッシュ 2Mバイト
HyperTransport 14.4Gバイト/秒
DDR2メモリコントローラ 内蔵
メモリサポート DDR2-400/533/667/800
TDP 35W 32W
製造プロセス 65ナノSOI

チップセット内蔵GPUと外付けGPUを柔軟に利用可能

Pumaプラットフォームの構成

 Turion X2 Ultraを含む新しいプラットフォームは、“Puma”の開発コード名で呼ばれていたものだ。Centrinoのような正式なブランド名はなく、AMDはTurion X2 Ultraをメインに、新発表のチップセット「AMD M780G」と「AMD SB700」、ATI Mobility Radeon HD 3000シリーズのGPU、IEEE802.11nドラフト準拠の無線LANを組み合わせた構成を「次世代AMDノートPCプラットフォーム」と発表している(実際は開発コード名のまま、Pumaと呼ばれることがほとんどだ)。

 新しく発表されたチップセットのAMD M780Gは“RS780M”の開発コード名で呼ばれてきたもので、AMDが2008年3月4日に発表したデスクトップPC向けのグラフィックス内蔵チップセット「AMD 780G」のノートPC版だ。基本的なスペックをAMD 780Gから引き継ぎつつ、ノートPC向けの機能を追加しており、サウスブリッジのAMD SB700とはHyperTransport 3.0で接続される。

 AMD M780GはDirect3D 10対応のGPU「ATI Radeon HD 3200」を内蔵したことで、ノートPC向けのグラフィックス統合型チップセットとしては高いパフォーマンスを獲得。また、ATI Avivo HDテクノロジーに対応することから、CPUの負荷を抑えて1080pのHD動画を再生することが可能だ。

Turion X2 Ultra ZM-80+Radeon HD 3200搭載PCとCore 2 Duo T8100+GMA X3100搭載PCで3DMark06を実行したところ、前者が3倍のスコアを出したという(写真=左)。Turion X2 Ultra ZM-86+Radeon HD 3200搭載PCとCore 2 Duo T8300+GMA X3100搭載PCで1080pのBlu-ray Disc映像を再生したところ、前者が5倍スムーズに再生できたとしている(写真=右)

 AMD 780Gと同様、内蔵GPUと外付けGPUを連携させてマルチGPU構成で利用できる機能も持つ。この機能は「Hybird CrossFireX」と名付けられ、内蔵のATI Radeon HD 3200コアと近い性能の外付けGPUを組み合わせることで利用できる。

 また、マルチGPU構成で性能向上を図るだけでなく、ACアダプタ接続時には高性能な外付けGPUを利用し、バッテリー駆動時には外付けGPUをオフにして内蔵GPUによる動作で消費電力を低減できるGPU切り替え機能の「PowerXpress」も備えている。これにより、最大で90分程度バッテリー駆動時間を延長できるという。

Hybrid CorssFire X機能を使って、Mobility Radeon HD 3450とAMD M780G内蔵のRadeon HD 3200を同時利用すると、Radeon HD 3200だけの場合より約1.7倍パフォーマンスが向上(写真=左)。PowerXpress機能で外付けGPUだけを有効にした場合、3DMark06のスコアとバッテリー駆動時間の関係はこのようになる(写真=中央)。反対に内蔵GPUだけを有効にすると、3DMark06のスコアは落ち込むものの、バッテリー駆動時間は大幅に延びる(写真=右)。

 Turion X2 Ultraの新プラットフォームを構成する外付けGPUには、「Mobility Radeon HD 3400/3600/3800」シリーズが用意されている。Mobility Radeon HD 3800シリーズは今回の発表に合わせて追加された最上位モデルで、PCI Express 2.0とDirectX 10.1に対応するほか、HDMI、DVI、Display Portへの出力が可能な統合デジタル映像出力を備えている。パフォーマンスはMobility Radeon 3600シリーズと比較して、2倍に向上するという。

Mobility Radeon 3870は同3670と比較して、3DMark06のスコアが2倍になる(写真=左)。Turion X2 Ultra ZM-80+Radeon HD 3200搭載PCとCore 2 Duo T8100+GMA X3100搭載PCで同じゲームをプレイし、描画の滑らかさやエフェクトの品質を見比べるムービー(写真=中央)。PC内部に外付けのGPUを搭載するのではなく、PCの外部機器としてGPUユニットを追加する技術「ATI XGP」(eXternal Graphics Platform)もサポートしている(写真=右)

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