開発現場が教えてくれる「ワコムの技術」 (1/3 ページ)

» 2008年06月24日 20時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

電源を持たないEMR方式電子ペンの仕組みとは

ワコム コンポーネント統括エンジニアリング部エンジニアリング2グループの小尾克人氏。タブレットPCなどに使われる組み込みテバイスの開発を担当している

 ワコムの説明会では、同社のコンポーネント統括エンジニアリング部エンジニアリング2グループの小尾克人氏によって同社が開発したEMR方式の電子ペンやタッチパネルなどに導入されている技術が紹介された。

 小尾氏は、まず始めにEMR方式の電磁ペンと従来からあるEM方式の違いについて説明した。EM方式の電子ペンではペン内部に電源を持つ、もしくは、ケーブルで接続したPCから電力を供給してもらうのに対して、EMR方式ではペン内部に電力供給系を持たなくてよいため、重量バランスがとれた持ちやすいペンが設計できる。小尾氏は、それぞれの方式で電子ペンの位置やボタンの状態、筆圧などの情報をセンサパネル側で取得する仕組みを紹介し、EMR方式で電子ペンに電源を持たなくてよい理由を説明した。

 ペン内部に電源を持つEM方式では、電子ペンから発信した電磁波をセンサパネル側のアンテナが検知して座標を求める。それに対して、ペン内部に電源を持たないEMR方式では、センサパネルのアンテナを送信と受信を切り替えるのが特徴だ。送信時には、センサパネルのアンテナから発信された電磁波をペン側のコイルとコンデンサで構成される共振回路にエネルギーが蓄えられて(コイルで生成された電気がコンデンサに蓄えられる)、このエネルギーを使って電子ペンから電磁波が発信される。次のステップでセンサパネル側のアンテナを受信に切り替えると、電子ペンから発信されている電磁波をセンサパネルのアンテナが検知してそこから座標を求めるようになる。

 また、電子ペンのステータス(電子ペンに搭載されたボタンのオンオフや筆圧など)の取得についても、EM方式では、ペンに内蔵されたA/Dコンバータで変換したデータを送信しているが、EMR方式では、筆圧に対応して電気容量が変化するバリアブルコンデンサを利用し、電子ペンから送信される電磁波の周波数の変化をセンサパネル側で検知している。

EM方式におけるセンサパネルと電子ペンの構成。電源を持つ電子ペンから送信された電磁波をセンサパネル側のアンテナで受信して電子ペンの位置を求める
こちらはEMR方式の構成。センサパネル側のアンテナを送信と受信とに切り替えられるのと、電子ペン側に共振回路を組み込んだのが特徴だ
EMR方式で使われる電子ペンの構成。筆圧、ボタンのオンオフといった電子ペンの情報は、バリアブルコンデンサに蓄えられた電気量の違いによって変化する周波数という形で検出される

ワコムが示した、コントローラのブロック図とその内部で行われている信号処理のフロー
実際に製品で使われているセンサパネルのコントローラチップとMCUを実装したシステム基板

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