ARMからAtomへ――組み込み市場に賭けるIntelIntel Developer Forum 2008(2/3 ページ)

» 2008年08月27日 14時00分 公開
[鈴木淳也,ITmedia]

(狙いはちょっと違ったけれど)順調なAtomの立ち上がり

 これまでのところ、Atomのビジネスは比較的順調に進んでいると考えられる。Intelが考えるターゲットへ確実にリーチできているかは別として、NetbookなりMIDなりの製品で採用が進み、Atomを搭載した製品は確実に増えているからだ。現在、Atom搭載製品の市場を牽引しているNetbookは、PCほど強力なパフォーマンスや表現力は求められないものの、セカンドマシンとしてモバイル利用を強く意識したカテゴリーと考えられている。従来のPC向けソフトウェアやデジタルコンテンツがそのまま利用できることもメリットとして評価されている。

 Intelは2008年に登場した(“DiamondVille”や“Silverthorne”を搭載する)NetbookやMIDを「第1世代」と呼んで、生産性を上げるツールとしての役割を果たせる製品と考えている。キーノートスピーチではパナソニックのTOUGHBOOK U1が紹介されたが、これも、医療や流通業など特定ユーザー向けにハードやソフトをカスタマイズすることで、PCほどの性能は必要ないものの、既存のソフトウェアやシステムを利用できる専用端末という形で設計されたものだ。

Intelが第1世代と呼ぶMIDやNetbookの製品群。IDF 2008ではパナソニックのTOUGHBOOKシリーズ2機種が活用例を交えて紹介されたほか、富士通のLifebook Uシリーズの新機種が発表された

 このような特定業界向けの端末や家電市場こそ、IntelがAtomに任せたい市場ではないだろうか。同社が第2世代と呼ぶMIDは「Consumer MID」と呼ばれ、より家電市場を意識したものとなる。例えば、IDF 2008でも紹介されたクラリオンのカーナビデバイスでは、PCで使われているような多機能のUIを搭載しつつ、インターネットからの情報取得や各種メディアファイルの再生、そして本来の用途であるカーナビまで、さまざまな機能が実現されている。

 このように、従来機種より高性能な民生機器を購入しやすい低価格で幅広い市場に供給する、というのがAtomを搭載した機器が目指す「次のステップ」となる。2009年に登場する予定で、従来比10分の1というアイドル時消費電力を実現する小型端末向けプラットフォーム「Moorestown」が、Intelにとって大きな転機になるかもしれない。

Atom搭載製品の第2世代では、組み込み市場向けの色合いが強くなり、特定用途向けの端末が増えるとみられている。IDF 2008で紹介されたのはクラリオンのMIDで、高機能UIを利用したカーナビ機能やインターネットアクセス機能やメディア再生機能が実装されている

Moorestownプラットフォーム世代初のSoCプロセッサとなる「Lincroft」とチップセットの「Langwell」。どちらもサイズは米国硬貨の1セントコイン程度となる。IDF 2008では、LincroftのウエハとLangwellのチップが初めて公開された

Intelは組み込み市場で「PC+TV」を活性させるか?

Intelデジタルホーム部門ジェネラルマネージャで上級副社長のエリック・キム氏

 Intelは以前にも“Viiv”というリビングPCを意識したプラットフォームブランドを発表している。この市場はマイクロソフトを含めた多くのメーカーが参入を狙っているが、いまだ市場として成立していないのが現状だ(先日もAMDが関係事業の売却を発表したばかりだ)。動画コンテンツやリビングルームの大画面テレビがキラーコンテンツであり、家電市場を狙ううえでのキーファクターである点に疑いの余地はないだろう。だが、PCのような高性能機器でこれらの機器を入れ替えようとするのは難しいように思える。

 こうした状況を見て(かつ、自ら痛い思いをしている)Intelが、次のターゲットとして考えているのがセットトップボックス(STB)市場だ。STBは、ケーブルテレビやブロードバンド放送の視聴には必須の機器で、やり方次第では多くの市場シェアを狙える。IDF 2008で講演したIntelデジタルホーム部門ジェネラルマネージャ 兼 SVPのエリック・キム氏は、SoCの「Media Processor CE 3100」(以下 CE 3100。なお、開発コード名はCanmore)を発表するとともに、STBなどの家電市場に対するIntelの取り組みを説明した。CE 3100はPentium MをベースにしたIA系のコアを搭載しており、従来のx86ソフトウェア資産がそのまま活用できる。また、CE 3100にはディスプレイ出力用I/Oのほか、動画や音声の再生支援のためのエンジンが組み込まれているなど、AV家電向けに特化した構成となっている。

 この動きに関連して興味深いのは、端末向けサービスの開発でYahoo!との提携を発表したことだ。IntelとYahoo!は8月20日付けで、CE 3100を搭載したSTBとテレビを利用して、インターネットの各種Yahoo!サービスを利用できる「Widget Channnel」を発表している。通常のテレビ画面からWidget Channelを呼び出すと、画面の横、または上下に専用バーが出現し、各種最新情報を閲覧したり機能を呼び出したりできる。Flickerを呼び出した場合はフォトギャラリーを一覧表示できるほか、スライドショーも実行できる。Yahoo!以外にもBlockbusterといった米国のレンタルビデオ事業者と連携しており、Widget Channelを通して動画コンテンツの再生を行える。このように、Intelがすべてを供給したり、逆に、チップの供給だけにとどまるのではなく、デバイスやサービスを含めたソリューションとして事業者との提携を含めたことで、「家電」としてのプラットフォームの機能や使い勝手を高めていくのが狙いだ。

IntelはYahoo!との提携で開発した「Widget Channel」を披露した。テレビからYahoo! Widgetを呼び出して情報バーとして表示させたり、必要に応じて拡大や全画面表示をさせてインターネットのコンテンツを楽しむことができる

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