IDF 2008の2日目に行われたキーノートスピーチで、Intelウルトラモビリティ部門ジェネラルマネージャー兼SVPのアナンド・チャンドラシーカ(Anand Chandrasekher)氏は、ユーザーのインターネット利用動向について言及している。彼は、指数関数的に伸び続けているインターネットユーザーに動向において、利用スタイルが変わることによってアクセス傾向も変化しつつあることに着目すべきだと説明している。従来は検索ポータル中心だったランキングの顔ぶれが、現在ではSNSなどのコミュニティサイトに上位を占領されつつあることを、チャンドラシーカ氏は、過去10年でアクセス率がトップ10にランキングしたWebサイトのリストを提示しながら説明した。
彼が、その典型的な例として紹介したWebサービスが、位置情報とSNSを組み合わせた「GyPSii」だ。GyPSiiはGPSの位置情報システムを利用した店舗情報検索やナビゲーションのほかに、各種SNSとリアルタイムで連携して、それらのSNSを利用した近隣にいるユーザーを探したり、位置情報タグ(=Geo-Tag)を埋め込んだコンテンツの生成や各種サービスへ反映したりなどの、SNSとGPSの特性を生かした複合サービスを複数展開しているのが特徴だ。こうした仕組みが広がることで、モバイル端末からのインターネットアクセスが、結果としてさらにインターネットの利用を押し上げるという循環を作り出すことになると、チャンドラシーカ氏は述べている。

GyPSiiサービスではGPSを内蔵したモバイル端末を活用することで、位置情報を利用したローカル広告サービスや地域情報検索サービスなどが有効になる。また、それにリンクしたコミュニティ機能もサポートされるこうした傾向を後押しするのがデバイスの役割だ。従来まで、こうしたデバイスには「ARM」や「SH-X」などの組み込み向けCPUが広く利用されていたが、最近ではではデバイスの高機能化も進み、PCとの違いがなくなりつつある。こうしたなか、Intelは過去にDECから取得したXScale(StrongARM)の資産をMarvellに売却し、ARMベースではなくあえてIAベースでモバイル端末市場へ参入しようとしている。こうした市場をターゲットにしたのがAtomだ。
チャンドラシーカ氏は、今後のモバイル端末に求められる要素として通信機能以外に「パフォーマンスとソフトウェア」の重要性を挙げている。パフォーマンスはHD動画や3Dゲームなどをモバイル端末で動かすことのできるレベルが求められ、ソフトウェアはPCとの高い互換性が求められる。PC向けのソフトウェアとハードウェアの開発者は非常に多く、開発ツールや蓄積された知識、これまでのソフトウェア資産などが、そのまま流用できるのは、モバイル端末にとって大きなメリットになる。ここで挙げた“パフォーマンス”と“ソフトウェア”に対する要求において、Atomは優れているいうのがチャンドラシーカ氏のキーノートスピーチで示された主張だ。

2008年の春にリリースされたばかりのAtomとそのプラットフォームは、1080pのHD動作再生支援対応に加え、x86互換やSSE3サポートなどを実現しており、ここが重要な差別化ポイントだと、Atomベースのモバイル端末とARM11ベースのモバイル端末でパフォーマンスを比較した結果とともにIntelは説明する
快適に動作する3Dゲームのプレイデモ。液晶ディスプレイの画面とコントローラを使った操作だったため、デスクトップPCで動作しているのかと思いきや、Atomを搭載したMIDで動いていた画像を外部ディスプレイで表示していた
Intelでは、市場に登場しているMIDやインターネット対応端末を集めてインターネットアクセスにおける動作を検証している。ARMベースのシステムほどエラー率が上昇し、ソフトウェアが洗練されていないとIntelは主張する
WindowsベースであろうとLinuxベースであろうと、Flash 10が発表されたその日のうちにそれらのプラットフォームでサポートが約束される。これがIAベースの強みを示す1つの例だとIntelは説明しているCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.