いまや我々は日常的にPCを使っている。まるで写真のように高精細な動画を瞬時に表示するハイスペックなPC、そしてそれを映し出すディスプレイは一昔前では考えられないものだ。しかし、映画やアニメに出てくる“コンピュータ”とはどうも違うような気がしないだろうか。
古くは“コンピュータ”といえば研究所に備えられた巨大な筐体の中で磁気ディスクが回り、紙テープで打ち出された計算結果を見て博士が「ヤツの弱点はしっぽだ! しっぽへの攻撃が成功する確率は94%!」とか口走るのが定番だったが、PCが普及し始めるとこの描写も変わってくる。
もちろんその描写は、“コンピュータ”が重要な局面であればあるほど分かりやすい脚色が加えられ、現実離れしていく傾向がある。とはいえ、テクノロジーの進化とともに「将来的にはありえなくもない」ものも決して少なくない。そしてそれらに共通しているのは、もし自分がそのインタフェースを使うことがあったとしたら、きっとわくわくするだろう、ということだ。
例えば「マイノリティリポート」のマルチタッチインタフェースは、すでにマイクロソフトのSurfaceでほぼ実現できているし、「電脳コイル」の電脳メガネは、透過型のジャイロ付きヘッドマウントディスプレイがあれば、「meet-me」の3次元空間をPTAMによる拡張現実として合成することで同等のものを作り上げることができるかもしれない。
また、既存のハードウェア上であってもソフトウェアによるインタフェースの進化は止まらない。Google Earthの膨大な情報とそれをクローリングするインタフェースの融合が大きな衝撃をもたらしたことは記憶に新しいし、Google StreatViewに至ってはフィクションを超えているといってもいいくらいだ。さらに、最近のコンピュータサイエンス、テクノロジーは膨大な計算量を前提とした研究が進められており、既存の情報から「本来存在しない」情報を取り出すことも可能になってきている。
近未来を描いたサイバーパンクアニメにコンピュータによる写真解析が重要な役割を果たす場面が出てくるものがある。公安警察に所属する男が知人から預かった写真を分析するのだが、拡大に拡大を重ねていくと本来写っているべきものが写っていないことに気がつく、というものだ。この解析インタフェースではズームするとドットの荒い、低解像度の画像が表示され、しばらくするとワイプで高精細なものに更新される。
このアニメの場合はもともとの解像度を超える超解像技術を描いているものと思われるが、操作性に関していえばすでにこれ以上のものが実現されている。それがマイクロソフトの「Deep Zoom」だ。まずはこれ(Jaw-dropping Photosynth demo)を見ていただこう。
当時“SeaDragon”と呼ばれていたDeep Zoomを使ったデモンストレーションだ。1分19秒あたりの映像からを注目してもらいたい。
このようなマルチスケールの画像をつなぐ技術は、Google EarthやFlashムービーなどでもよく利用されており、いわば「流行の技術」とも言える。しかし、この高速性となめらかさは圧倒的だ。
さらにSeaDragonは先日正式版が公開された「Silverlight 2.0」の標準機能、Deep Zoomとして統合されており、Silverlightを使えば誰でも実装することができるようになっている。Deep Zoomの超拡大可能な画像データは、無料で配布されている「Deep Zoom Composer」で作成することが可能だが、1枚絵の場合はPhotoZoomのサイトにアップロードするだけで体験することができる。
実際にPC USERでもDeep Zoom Composerを使って作成してみた。URLはこちら(→http://photozoom.mslivelabs.com/album.aspx?alias=TogusaS9&album=1)。ちなみに、瞳のモデルはTargetTVリポーターでおなじみの上田仁美さんだ。
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