第5回 窓の外を眺めて幸せになる――「Google Earth 4」“タダ”で幸せになるソフトウェアパラサイト

» 2006年09月15日 16時53分 公開
[爪生聖,ITmedia]

 昨夜、IT関連のメディアに携わる某編集者と、インスタントメッセンジャーで以下のような会話をした。

編集G いそがしいですか?

爪生 うん

編集G http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0609/14/news070.html

爪生 ……いつまで?

編集G 朝まで。

爪生 ……。


 本連載の第2回で「Google Earth 4」β版を紹介した。そのときは次のような言葉で締めくくっている。

「Google Earth 4」β版を使っていて感じるのは、インタフェースが英語であるとかそういった不便さよりも、日本では実現できていないことがUSでは実現できていて、しかもそれを(指をくわえながら)見ることができるというある種の“くやしさ”だ(そういえばApple Computerが提供する「iTunes Music Store」が国内サービスを開始するまで同じ思いをした)。日本でも早く同様のサービスが開始されることを期待してやまない。

 あれから3カ月。予想以上にはやくその日はやってきた。9月12日に公開された「Google Earth 4」はついに日本に対応した。単なる日本語対応ではなく、日本の地理情報に対応しており、USで実現されていた機能が一部、日本でも使えるようになっている。

インタフェースも日本語化された(画面=左)。海外の都市の中にも日本語で表示されるところは多い(画面=右)

建造物の3D情報も国内対応、空のお散歩へ

 今回のバージョンで最も特徴的なのは建物の3D情報だろう。建物の3D表示をオンにして平面から俯瞰へと切り替え、低空に移動していくとまるで空を飛んでいるかのような独特の浮遊感が楽しめる。しかも、これは単に「楽しい」だけではない。新しい地図のあり方を予感させる便利な使い方もある。

 いままさに泣きながら原稿を書いているマンションの屋上で南方面を撮った写真を見ていただこう。夜の風景だ。遠方に赤い光で彩られたビル群が見えるものの、果たしてこれがどのあたりなのか、そしてそのビルが何であるかなどはこれだけ距離があると知りようがない。そこでGoogle Earth 4で同じ位置を基点にして南方向を眺めてみる――建物の3D表示をオフにしたままの画面を見ても、ほとんど手がかりはない。

 これは重要なポイントだ。現実世界において地理上の目印となるものは目立つがゆえに目印になるのだ。巨大であったり、高かったりするからこそ、それが手がかりになるのに、高さ、すなわち3Dの情報を持たない地図では平屋と高層ビルが同じように見えてしまう。そこで「建物の3D表示」をオンにしてみよう。写真で撮影したものらしき3つのビルが分かるだろうか。

都内某所にある屋上からの夜景。画面中央やや右よりに3つほどビルが見える。真夜中に泣きながらこんなところにいると、いまにも飛び降りてしまう人のように見えるかも(写真=左)。現実に筆者がいる地点からGoogle Earthで同じ方向を見たところ。平面地図を眺めているだけではなんだかよく分からない(画面=中央)。「建物の3D表示」をオンにすると画面の中央奥に3つのビルが見える。位置関係から考えてもどうやらこのビル群らしい。はたして何のビルなのだろうか(画面=右)。関係ないがこの場所はちょっと寒い

 さて、目的のビルへ進んで行くことにしよう。いまリアルに存在するこの場所から足を踏み出すと別の目的地についてしまうが、Google Earthの中ではそれができる。移動の操作は簡単でマウスのドラッグでも可能。ただし、俯瞰している場合は思いのほか大きく移動しすぎてしまうことが多いので、目標を見失わないようにときどき真上から見下ろしたり、カーソルキーで移動したりと細かく調整したほうがいい。

 そしてたどり着いたところは、南千住にある地上32階のタワーマンションだった。ちなみに、これら建造物の3D情報は地域によって密度に差があるものの、日本全国を広く網羅しており、利用できる地域は広範囲にわたっている。

たどり着いたところをGoogle Mapの衛星地図で確認。同じ写真を使用しているようだ(画面=左)。地図に切り替えてみたところ。涙でゆがむ3つの赤い灯の正体は高層マンション群だった(画面=右)
地域の3D情報を確認するため宮崎の日向灘からシーガイヤを眺めた。ぽつんと建っているのは地上154メートルの超高層ホテル、シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート。その前方の奇妙な模様はゴルフ場だ。もちろん現実の宮崎にはこれ以外にもちゃんと建築物は存在している(画面=左)。海外に目を向けると3D情報のない国が大多数。……ちょっぴり残念だ(画面=右)

 さらに国内の地域情報も追加され、付近の飲食店や宿泊施設、レンタルCD/DVDショップまで表示されるようになった。Googleマップとの機能の差が次第になくなってきた感がある。

表示される情報は公共施設からサービス、飲食店、コンビニ、宿泊施設など多岐にわたる(画面=左)。なお、ふき出しをクリックするとGoogleマップと連動した情報も表示される(画面=右)

あれ……過去にタイムスリップ?

 今回のGoogle Earth 4を一通り試してみたところ、機能強化よりも提供データの充実による利便性の向上が一番の特徴と言える。ただ、やや気になったのは写真が以前よりも古くなっているのではないかと思われる部分が散見されたことだ。実際、昨年10月に竣工した筆者の自宅が空き地に戻ってしまっている。これは推測だが、建物の3D情報の時期が古い場合には写真の撮影時期もそれに合わせて修正されたのかもしれない。

毎度おなじみ東京拘置所の写真。左から2005年7月、2006年6月(4 beta)、2006年9月(今回)の俯瞰データとその3D情報だ。解像度は非常にアップしているが、6月のデータと比較するとアスタリスク型の棟の画面上側が基礎工事に戻ってしまっているのが分かる。また基礎工事中の棟には3D情報もない。ちなみに拘置所の周りの塀にも3D情報がないため、非常に開放的に見える

 なお、一番目立つところにあるインタフェース「検索」のうち、「ビジネスを検索」と「ルート」の2つは「日本未対応」としっかりと明記されている。またおあずけを食った格好だ。しかし、「ビジネスで検索」に関してはすでにGoogleマップでは実現している機能なので、それほど遠くない将来に実装されることを期待したい。

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