海外NASキットの雄、Thecusの「N4100PRO」を試す性能は従来の2倍?(1/2 ページ)

» 2008年10月30日 12時00分 公開
[瓜生聖,ITmedia]
N4100PRO

 ユーエーシーが販売するThecusのNASキット「N4100PRO」は、「N4100」シリーズの3代目にあたる製品だ。Intel XScale 600MHzを搭載した初代のN4100、これにUSBポートを2つ追加したN4100+に続き、N4100PROではCPUをAMD Geode LX800に変更し、性能を約2倍(同社調べ)に引き上げている。

 プラットフォームの刷新だけでなく、外観にも変化が見られる。N4100+のフロントマスクがアクリル板を張り付けたものであったのに対して、N4100PROはメッシュ加工されたドアになった。また、N4100+は背面から基板を引き出す構造になっていたが、N4100PROではコの字型の側版と天板を外すタイプに変わっている。本体前面の下部にブルーに発光するLCDをあしらい、IPアドレスや現在のシステムステータスを表示できるようになったのもポイントだ。

本体前面にはメッシュ加工されたドアが取り付けられている。HDDの換装は前面から行う(写真=左/中央)。本体背面にはUSBと有線LANコネクタが2基ずつ搭載されている(写真=右)

 N4100PROの背面に目を移すとファンが2つ搭載されているのに気付く。背面の中央に位置するのがHDDなどを冷却するもの、下部がATX電源に内蔵されているものだ。有線LANのコネクタは2つあり、上段がWAN、下段がLANという扱いになっている。メーカーのWebサイトでは2つのネットワークを利用して負荷を分散するロードバランシング、一方の障害時に自動的に他方に切り替えるフェイルオーバー、802.3adに対応しているとあるが、実際はこの2つの口はセグメントの異なるネットワークに接続する必要があり(リンクアグリゲーションの機能を有効にすると自動で同じネットワークアドレスになる)、家庭内で利用するシーンはあまりないかもしれない。そのほか、背面にはUSBポートも2つ搭載されている。マスストレージやプリンタのほか、ワイヤレスLANアダプタを接続可能だ。

省電力機能の1つであるスケジュールパワーオン/オフ。曜日ごとにパワーオン/オフを設定できる(画面=左)。WOL機能も搭載する。LAN経由で電源を入れることができる(画面=中央)。WOLに対応したソフトウェアの1つ「Remote Power」は、Software Factory GroupのWebサイトからダウンロードできる(画面=右)

豊富なRAID構成を選択できるN4100PRO

RAID構成画面。RAIDの新規作成のほか、拡張、削除、移行が可能

 N4100PROがサポートするRAID形式は、JBODを含めて6種類(JBOD、RAID 0/1/5/6/10)だ。これらを最大4台のHDDで構成するわけだが、構築できるRAIDボリュームは1つのみ。つまり、4台のHDDを2台構成のRAID 1で2ボリューム、というような使い方はできない。これはN4100PROでのRAID 1の利用価値を制限してしまっている。

 RAID 1の最小構成は2台だが、これを3台、4台と増やした場合は同時に書き込むドライブが増加するだけで容量は変わらない。つまり、構成台数を増やすことで利用効率が向上するRAID 5やRAID 6などと異なり、耐障害性は上がるものの(4台構成では同時3台クラッシュに耐えられる)費用対効果は低いと言わざるをえない。むしろ、RAID 1で運用するのであれば2台でRAIDを構成し、1台をホットスペアとして用意しておくほうが同時障害対策には有効だろう。

 N4100PROでは冗長性のあるRAIDでデータを保持したまま大容量ドライブへの換装が行える。移行できる組み合わせには制限があるものの、運用しながら容量を増やしていく柔軟性は「長く使える」NASには必須であるだけにうれしいところだ。

RAIDレベルの移行画面(画面=左)。マイグレーション可能なRAIDの組み合わせ。RAID 0/1/5のあいだでの移行となる。RAID 1から冗長性のないRAID 0に移行できるのはめずしいかも。HDD×5の記述があるが、N4100PROには4基までしか搭載できないのでこれは誤りだ(出典は「N4100PRO User's Manual/PDFファイル」(画面=中央)。User's Manualには上位機種のN5200PROの記述と思われるものが散見される。Disk Usageは5基のHDDを使用した際の記述となっており、正しくはRAID 1が25%、RAID 5が66.7%、RAID 6が50%だ(画面=右)

RAIDの耐障害性について

 ここではN4100PROで構築可能なRAIDについて、それぞれの特徴を簡単にまとめた。

 まず、「JBOD」は複数のドライブをまとめて1つのドライブに見えるようにしたものだ。冗長性、高速化のための対応などはないため、小容量ディスクをまとめて大容量ディスクとして使用する、という以外にメリットはない。逆にJBODによるパフォーマンスの低下もそれほど大きくないが、耐障害性は低い。

 これに対し、複数のドライブへの同時アクセスによって高速化を狙ったものが「RAID 0」だ。RAID 0は容量の異なるディスクを使用するときは構築できないか、あるいは構成ドライブの最小容量のもの×台数分の容量となる。JBOD同様冗長性がないため、HDDが1台でも破損したらすべてのデータは失われる。

 一方、冗長化をもたせて耐障害性を高めたのが「RAID 1」だ。RAID 1は書き込み時に複数のドライブに同時に書き込み、常に複製を作ることでドライブが破損してもデータが失われないようにしている。同時アクセスが可能であるとはいえ、台数分の書き込みが必要になるため、書き込み速度は低下する。一方、読み込みについては複数台から同時に読み込めばパフォーマンスが向上するが、簡略化して単一ドライブからしか読み込まないものもあり、実装は製品によって異なる。利用可能容量は1台分だ。

各RAIDレベルの仕組みと耐障害性を図でまとめた。左がJBOD、中央がRAID 0、右がRAID 1だ。JBODとRAID 0には耐障害性がない

 高速化のRAID 0と耐障害性のRAID 1を組み合わせたのが「RAID 10(RAID 1+0)」だ。RAID 10はRAID 1で組まれたドライブのペア同士をRAID 0にしたもので、最小構成は4台、容量は全ドライブ容量合計の半分ということになる。利用効率は全容量の50%だが、高速化と冗長性を比較的簡単なアルゴリズム(つまり高速ということ)で同時に実現している。

 RAID 10の利用効率の悪さを改善したものが「RAID 5」。RAID 5はパリティと呼ばれるエラー訂正用データを使用することで、全台数から1台分のHDDを引いた容量を利用できる。すべてのデータが細切れになって構成ドライブに分散しているため、読み出しの場合は複数台からの同時読み込みが可能になり、高速化が見込める。一方、書き込みに関しても同様の効果はあるものの、パリティの計算に時間がかかるため、全体の速度はRAIDコントローラやCPUに依存する。最小構成台数は3台だ。

 RAID 5は1台までの故障に対する耐障害性を持つ。一般の感覚であれば「同時に2台が故障することはないだろう」と思いがちだが、実際にはRAID 5で2台同時にHDD障害が起こることはめずらしくない。正確に言えば「1台故障したあとの復旧時にもう1台故障する」というパターンが多い。RAID 5は読み出し、書き込みとも全ドライブに対して均等にアクセスする。もちろん、これは特定のドライブだけに負荷がかかって故障率が上がったり、ボトルネックを回避するためにはよいことだ。しかし、RAIDを構成するドライブは通常、同時に購入した同じ型番(ロットも含めて)の製品である場合が多く、同じ環境で使われていれば同時期に故障してもおかしくない。

 さらにRAID 5では、HDDが1台クラッシュしたときはいったん冗長性のない縮退モードでその場をしのぎ、代替のドライブと交換した後にRAID 5の再構築(つまり全保存データについてパリティの再計算)を行う必要がある。当然ながらこのときのディスクアクセスは非常に激しく、もうすぐ故障してもおかしくないドライブにとっては、とどめの一撃となってしまう。特に近年のディスク容量の増加はめざましく、RAIDの再構築には十数時間を要することもめずらしくない。再構築に時間がかかればかかるほど故障の危険性は増加する。

 そこで2台までの耐障害性を持たせたのが「RAID 6」だ。RAID 6はパリティを二重に作成し、同時に2台がクラッシュしてもデータを復元できる。最小構成ドライブ数は4台で、利用可能容量は全ドライブ数から2台分を引いた容量になる。最大搭載ドライブ数が4台であるN4100PROでは利用可能容量は4-2=2台になり、これはドライブ数の半数しか利用できないRAID 10(4/2=2台)と等しい。パフォーマンスではシンプルなアルゴリズムであるRAID 10のほうが優れているため、N4100PROでは耐障害性に対する明確な意図がなければRAID 6を利用することはあまりないだろう(RAID 10ではRAID 1を構成する2台が両方ともクラッシュした場合には復元できないため、任意の2台のクラッシュに耐えられるRAID 6のほうが耐障害性は高い)。

左がRAID 5、中央がRAID 6、右がRAID 10。近年は2台以上の同時障害に耐えうる仕組みが求められているが、RAID 10の場合は障害ドライブの組み合わせ次第で復元可能かどうかが変わる


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