Core i7 Extreme EditionとCore i7では、すでに述べたようにシステムバスがFSBからQPIへ変更されている。このため、CPUソケットもLGA1366という、LGA775からピン数を増やした新しいものが採用されている。Core 2シリーズとは物理的にも電気的にも互換性がない。そのため、従来のLGA775マザーボードは、Core i7では利用できない。
Core i7シリーズを利用するには新しいLGA1366ソケットを持つマザーボードが必要になる。このLGA1366プラットフォームのチップセットとして用意されているのが、Intel X58 Express(以下X58)だ。
X58はIOH(I/O Hub)とICH10の2チップで構成されているが、Core i7シリーズではメモリコントローラがCPUに内蔵されているため、IOHはPCI ExpressへのブリッジとICHを接続する役目のみとなっている。IOHのPCI Expressは、Gen.2の32レーンとなっており、2x16、ないしは4x8の構成が可能になっている。対応する複数GPUの技術はAMDのCorssFireのみだが、マザーボードメーカーがNVIDIAにライセンス料を支払い、認証を通過させ、BIOSに対応の機能を組み込んだ場合のみNVIDIA SLIも利用できる。このように、同じIntel X58 Expressマザーボードであっても、NVIDIA SLIが利用できるかは、その製品の仕様に依存することになる。NVIDIA SLIを利用したいユーザーは、購入しようとしている製品がNVIDIA SLIに対応しているか確認することが必要だ。
今回、Core i7の評価テストに利用したのは、インテル純正の「DX58SO」だ。開発コード名“SmackOver”で知られるDX58SOは、LGA1366ソケットを1つ載せ、PCI Express x16スロットを2本備えるなど、X58搭載マザーボードとしては一般的なスペックを有する。
ユニークなのはメモリスロットの構成で、一般的なX58マザーボードが6スロット構成になっているのに対して、DX58SOでは4スロットになっている。すでに説明したように、Core i7のメモリコントローラはトリプルチャネルになっており、各チャネルで2枚のメモリモジュールを利用する場合には3×2=6スロットとなるのだが、DX58SOでは4スロットになっている。これは、4つあるスロットのうち1つだけが、将来の拡張用として考えられており、これだけ色が異なっているのだ。ただし、ここにメモリを差した場合には、チャネル構成は変則的になり性能的にはあまり好ましくない構成となるため、将来性能よりも容量優先でと考えた場合に利用するスロットだと考えると分かりやすいだろう。
今回、新しいアーキテクチャとなるCore i7を評価するにあたり、本連載において筆者がCPUの評価で利用しているベンチマークテストをいくつか入れ替えることにした。筆者のCPUレビュー記事では、同じベンチマークテストを利用するようにしている。これは、製品ごとに利用するベンチマークテストが異なると、測定結果に有利不利がでてしまって評価がぶれてしまう可能性があるからだ。
しかし、1年に1度の頻度でベンチマークテストを見直し、新しい世代のものに入れ替えることにしている。今回の見直しで、「SYSmark2007 Preview」、「CineBench R10」、「TMPGenc 4 Xpress」、「3DMark06」などに関しては変更はないが(ただし、TMPGenc 4 Xpressは最新版の4.6.2.266へバージョンを上げている)、新たに「3DMark Vantage」と「PCMark Vantage」を追加することにした。
なお、CPUに依存するコンポーネント(マザーボード、メモリ)以外の評価システム構成は、HDD、グラフィックスカードなどまったく同じものを利用しており、環境によって有利、不利などがでないように配慮している。ただし、GPUのドライバでは最新版を適用し、OSをWindows Vista Ultimate Service Pack1(32ビット版)にバージョンアップした。また、従来は1280×1024ドットだった標準解像度を、今回から1920×1200ドットへと変更している。
以上のように、ベンチマークテスト、システム構成、ドライババージョン、OS、そして設定条件などを一新したため、ベンチマークテストの測定結果は従来との互換性はない。過去ログを参照する場合には注意していただきたい。
ベンチマークテスト | 分類 | 概要 |
---|---|---|
SYSmark2007 Preview | 総合アプリケーションベンチマーク | OfficeやPhotoshopなど実在のアプリケーションを利用して性能を計測する |
CineBench10 | 3Dレンダリング | CPUの性能が最も出やすいレンダリングソフトウェア。CPU利用率が100%になる |
PCMark Vantage | コンポーネントベンチマーク | メモリやHDD、CPUなどコンポーネント単位で処理能力を計測できる |
TMPGenc 4 Xpress | 動画エンコード | パッチエンコードを利用して2つの動画を同時に処理する |
3DMark06 | 3Dベンチマーク | |
3DMark Vantage(Performance) | 3Dベンチマーク | |
今回評価するのは、Core i7 965 Extreme Edition(動作クロック3.2GHz)と、Core i7 920(動作クロック2.66GHz)の2製品だが、Core i7 965 Extreme Editionはクロック倍率ロックが解除されており、DX58SOのBIOSセットアップを利用してCore i7 940(動作クロック2.93GHz)相当にすることが可能だったため、ここでは、Core i7 940とみなした設定でも性能を計測している。ただし、Core i7 965 Extremeのクロックダウンであるため、消費電力のデータに関しては正確ではない可能性がある。
比較対象として用意したのは、Core 2 Extreme QX9650とPhenom 9950 Black Editionの2つだ。Core 2 Extreme QX9770という特殊例はあるものの、いずれもインテル、AMDのクアッドコアCPUのハイエンドといってよい2つの製品が比較対象としてはふさわしいと判断したからだ。テスト環境は以下の通りだ。
CPU | Phenom 9950 Black Edition | Core i7 | Core2 Extreme |
---|---|---|---|
チップセット | AMD790FX | Intel X58 | Intel X38 |
マザーボード | ASUS M3A32-MVP | Intel DX58SO | ASUS P5E3 |
BIOS | 1203 | SO2624 | 1201 |
メモリ | DDR2-1066 | DDR3-1066 | DDR3-1333 |
メモリモジュール | PC2-8400(5-5-5) | PC3-8400(5-5-5) | PC3-10666(7-7-7) |
容量 | 4GB(2GBx2) | 3GB(1GBx3) | 4GB(2GBx2) |
GPU | GeForce 8800 GTX | GeForce 8800 GTX | GeForce 8800 GTX |
グラフィックスメモリ | 768Mバイト | 768Mバイト | 768Mバイト |
グラフィックスドライバ | ForceWare v178.24 | ForceWare v178.24 | ForceWare v178.24 |
標準解像度 | 1920×1200ドット/32ビットカラー | 1920×1200ドット/32ビットカラー | 1920×1200ドット/32ビットカラー |
HDD | HGST HDT725050VLA | HGST HDT725050VLA | HGST HDT725050VLA |
フォーマット | NTFS | NTFS | NTFS |
OS | Windows Vista ServicePack1(32ビット) | Windows Vista ServicePack1(32ビット) | Windows Vista ServicePack1(32ビット) |
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.