あやしい中華な低価格ノートPCで新春を祝う山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

» 2009年01月19日 17時30分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

2009年の新春購入運試しはこれだっ

 その年の運勢は吉と出るか凶と出るか。例年、新春の季節にはLenovoのPCに、EVD白物家電と、中華な製品を購入してきたが、2009年は、時勢に合わせてNetbookで運試しだ。

 これまで、電脳街のLenovo代理店でLenovoのPCを買い、家電量販店の「国美電器」でEVDプレーヤーを買い、同じく地元の家電量販店「蘇寧電器」で白物家電を買ってきたが、今回は、もっと刺激的なところで購入したい。イマドキの流行りといえば、日本の企業も中国に通販サイト進出させようというほどに、中国はネット通販が盛り上がっている。よしっ、2009年一発目のお買い物は中国最大の個人取引Webサイト「淘宝網」(TAOBAO)や、中国でも(そこそこ)人気の「Amazon中国」をチェックしてみることにした。

 中国における主要なPC購入層である青年ユーザーは、「ノートPCを買うならDVD-Videoも見たい、オンラインゲームもしたい。だからフルスペックの2スピンドルノートPCがいい」と考えている。この傾向は、「安いノートPC」としてNetbookが急成長している現在でも変わらない。国としては大国であっても国民の生活は、まだまだ発展途上といえなくもない中国で、Netbookがブームとなる兆しは電脳街にも、筆者の周囲にいるPCユーザーにも、中国のIT系メディアの報道にもまったく見ることができない。しかし、世界的な人気の影響なのか単に生産コストが安いからなのか、とにかく、中国の国内が「盛り下がり」であるのにもかかわらず、大手PCメーカーから弱小のMP3プレーヤーメーカーまで、実に雑多な企業からNetbookがリリースされている。

 2009年の(新暦)元旦において、淘宝網で扱っているAtom搭載ノートPCの数は約8000点、対してCore 2 Duoノートの数は約8万4000点と、Atom搭載ノートPCの10倍以上に達している。ちなみに、Celeron Dual-Coreを搭載したノートPCも約1万6000点とAtom搭載ノートPCにダブルスコアをつけている。先に書いたとおり、中国の電脳街でNetbookを見ることはほとんどないので、淘宝網に登録されている商品数は実態に即していると考えていいだろう。中国では、PCの買い替えというのはほとんどないか、あってもその期間がかなり長いため、購入するならできるだけいい製品を選ぶ傾向が強い(AtomとCore 2 Duoを比べたら文句なくCore 2 Duoノートを選ぶ)。そういう気質の中国人がNetbookを購入する場合、ブランドの知名度が高い、LenovoのIdeaPadや、ASUSのEee PCを選んでいるようだ。

 ところが、Amazon中国で扱われているラインアップを見ると、IdeaPadとともに、malata(万利達)という謎のメーカーがリリースしている「PC-88002」が1988元で販売されていた。世界的な金融危機の前は1元が16円であったので、1988元は日本円にして約3万2000円だったが、あれよあれよと円高となり、1元=13円の今では約2万6000円と、6000円もの円高差益が還元されることになった。そんな、「金融ブローカー的お得感」も後押ししたのか、謎のメーカーmalataの製品を購入することにした(ちなみに、Amazon中国では「Eee PC 2G Surf」(Celeron M ULV 353/900MHz相当、SSD容量2Gバイトが1599元、日本円にして約2万1000円で販売されていた)。

 Amazon中国では、正規版のWindowsやOfficeが中国人ユーザー向けに激安で売られている。具体的には「Windows XP Home edition 正規版普及計画パッケージ版」が通常版より561元安い399元(約5200円)、同OEM版が328元(約4300円)、Windows Vista Home Basicが488元(約6350円)、「Microsoft Office 2007 家庭と学生向け中文版」が199元(約2600円)という激安っぷりだ。ちなみにAmazon中国から中国の購入者に配送する料金は、普通便で99元(約1300円)、航空便で300元(約3900円)で、広い中国国土でも航空便なら2〜3日で届くとのこと。Amazon中国では「ソフトは国外に発送できる」書いてあるが、PC関連についての説明はない。Amazon中国に聞いてみると、「PC本体も、PC関連製品も海外への発送はできない」のだそうだ。

malataというメーカーが扱っている「PC-88002」は、1988元、日本円にして2万6000円という価格で購入できた。200ドルPCまであとわずか

Amazon中国から届いた箱を開けてみる

 Amazon中国に注文すること1週間。商品が筆者の滞在する中国内陸の奥地に到着した。開けてみると日本のPCメーカー並みにしっかり梱包されている。個人取引の淘宝網ではていねいな梱包は期待できず、箱もぺしゃんこになっていることが多い。

つぶれることなく無事に届いたmalataのPC-88002(写真=左)。標準で同梱されているパッケージの内容(写真=中央)。いやー、Eee PCに似ていますなあ(写真=右)

 ここで、今回購入したmalataと同社の「PC-88002」について改めて紹介しよう。malataはPCメーカーとしては初めて参入した企業で、本来はポータブルDVDプレーヤーや、GPS、車載用液晶テレビなどを開発している。中国の電気店でもあまり見かけることがないので大手メーカーとは言い難い。malataのように、低価格ノートPCをきっかけにPC市場へ参入する企業はほかにもあるが、このような新規参入企業が自分たちの製品を中国全土で販売するのは困難を極める。これは、中国のPCショップにおいて、1つの店舗で複数のメーカーを取り扱うケースが少なく、PCメーカーの販売力は中国全土に展開している代理店の数で決まるという、中国独特の流通事情が影響しているためだ。こういう理由から、マイナーPCメーカーが販売するノートPCを電脳街で見つけることは実質不可能になっている。

 さて、malataの「PC-88002」だが、搭載するCPUはAtom……ではなく、Geode LX 800(動作クロックは500MHz)、搭載する液晶ディスプレイは8型ワイド(最大解像度は800×480ドット)、メモリ容量は512Mバイト、SSDではなく60GバイトのHDDを搭載する。無線LANに対応しており、ボディにはオン/オフの切り替え専用スイッチが用意されているほか、SDHC対応のSD/MMCカードスロットが搭載されている。

 重さは1.05キロ、ボディサイズは227.5(幅)×164(奥行き)×40.5(最厚部。最薄部のデータは不明)ミリで、一見すれば初期のEee PCに果てしなく近いデザインにも見える(ついでに付属のソフトケースやACアダプタまでよく似ている)。USBはEee PCより少ない2つを備える。電源スイッチの場所が本体右側面のヒンジ部があるのもEee PCと異なる。なお、バッテリー駆動時間は明らかにされていない。OSは「Linux/Windows XPをサポート」と書いてあるが、実際に何が導入されているのか、そもそも導入されているのかどうかも不明だったりと、こちらも怪しさを必要以上に訴求している。

PC-88002の左側面に正面、右側面。背面はバッテリーパックで占められている

バッテリーを取り付けて実測した重さは1036グラム(写真=左)。底面からメモリスロットにアクセスできるが、かなりきつく、開けるのを断念するほど(写真=中央)。バッテリーの容量は7.2ボルト4000ミリアンペアアワー(写真=右)

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