MSIのオーバークロック世界大会で“水没PC”とスリリングなゲームに酔う(3/3 ページ)

» 2009年08月31日 17時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]
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スリリングなシーソーゲームで白熱した3DMark Vantage

 続いて、始まった3DMark Vantgageバトルは、3時間という、これまた長丁場だが、wPrime 1024Mの“戦訓”を反映して、液体窒素注ぎ口形状を改良したり、円筒型クーラーユニットに巻きつける断熱材を追加したりと、さらなる“工作作業”を各チームで施していた。後半戦は、グラフィックス性能を競う3DMark Vantgageで、総合スコアに対するウェイトも高い。NVIDIAのGPUでグラフィックススコアとなると、SLIを使って戦うのではと思いがちだが、すべてのチームがシングルカードでシステムを構築し、動作クロックの高さを優先させている。

前半戦の不調を解決するべく、工作作業を最初からやり直すチームも少なからずあった(写真=左)。中には、CPUソケットにこびりついた不純物を“ドライバーの先端”で取り除くツワモノも(写真=右)

多くのチームで見られた“改良点”は液体窒素注入口の拡大化で、紙コップやペットボトルを利用したジョウロをアドオンする手法が多かった(写真=左)。会場には、MSIによって液体窒素を詰め込んだ大きなボトルが多数用意されていた。10時間に及ぶ競技期間で液体窒素は常に贅沢に“ドバドバ”と使われていた(写真=右)

 3DMark Vantgageのステージで、最初にトップスコアを出したのは、ギリシャから参加した「Hwbox.gr」だ。システムのフレームに掲げた“十字架”のご加護か、彼らのスコアを上回るものは終盤まで現れなかった……、が、終了直前、タイムアップまで30分を切ったところで、またしても、Sweclockers.comがトップスコアを出してHwbox.grを抜いてしまった。3DMark Vantageは2つのゲームベンチと2つのCPUベンチをこなさなければスコアが出ないので、意外と時間がかかってしまう。この時点では、そう何度もやり直せない。Hwbox.grは再び逆転することはできるのか。Hwbox.grのステリオス・ゲオグリス氏とジョージ・パブリディス氏は、再度測定に挑戦し、見事、トップスコアを奪い返した。

 この時点で残り15分、逆転を目指すSweclokers.comのヨン・サンドストロン氏とヘンリー・クリフ氏は、あきらめずに再チャレンジする。Hwbox.grも自己ベストを超える記録に挑戦していたが、ブルースクリーンが出てしまった。逆にSweclockers.comは、タイムアップ寸前でHwbox.grを抜いて逆転することに成功し、Sweclockers.comの完全優勝が確定した。

偶然だが、後半戦のトップを最後まで競ったHwbox.grとSweclockers.comは、隣り合うブースで作業を進めていた。左側にいるのがHwbox.grで右側がSweclockers.com。トップを奪い返したHwbox.grのメンバーがSweclockers.comの作業を見守っている(写真=左)。終了間際にSweclockers.comがトップスコアをたたき出した。この瞬間、彼らの完全優勝も決まった(写真=右)

総合優勝したSweclockers.comのシステム(写真=左)と、最後まで競り合ったHwbox.grのシステム(写真=右)
なぜか、オーバークロッカーたちには、自分が戦いに使うシステムにマスコットを飾る習慣がある。Hwbox.grには十字架がかけられ(写真=左)、Sweclockes.comには持参したぬいぐるみのほかに、即興で作ったらしいモンスター(?)がディスプレイにかけられていた。画面にはSweclockers.comがMOA 2009でマークした3DMark Vantageの優勝スコア「P18745」が見える(写真=右)


 日本では、遊びの目的としてオーバークロックをゲームのように楽しむユーザーは、まだまだ少数だ。このような大掛かりなイベントもほとんどない。海外で行われるオーバークロックの大会には若い世代のPCユーザーが集まるなど、新しいユーザー層の発掘に少なからず貢献しているという。

 MOA 2009には、日本のチームは参加してなかった。しかし、世界中から集まったすべてのオーバークロッカーが、日本から来た記者に対して、「ミスターDuckはどうしたのだ」と必ず質問した。日本ではあまり知られていないが、COMPUTEX TAIPEI 2008でトップスコアをマークした「Team Japan」とそのリーダー的な存在のDuck氏は、トップクラスのオーバークロッカーチームとして世界中で有名な存在だ。

 世界から集まったすべてのオーバークロッカーがその高い技術を「すばらしい」と敬服するスターが日本にもいる。そういう日本でも、オーバークロックという“遊び”がもっとメジャーになってもいいのではないだろうか。

(記事掲載当初、Duck氏のつづりを間違えていました。おわびして訂正いたします。Twitterで指摘してくれたSさん、ありがとうございました)

順位 参加チーム
総合優勝 Sweclockers.com(スウェーデン)
2位 Ryba/Chaos(ポーランド)
3位 Xfastest(Futuremark)

参加国 チーム名
米国 XtremeSystems
米国 Team OIIE
台湾 Coolaler
フィリピン Tipid PC
シンガポール Team Singapore
インドネシア Team ID
韓国 Project M
オーストラリア Team AU
南アフリカ South Africa
スロバキア PC Tuning.cz
デンマーク Tweak.dk
フィンランド Muropaketti.com
スウェーデン Sweclockers.com
ギリシャ Hwbox.gr
ポーランド Ryba/Chaos
中国 Team China
中国 X-Power
コロンビア Hardcol OC
ブラジル Adrenaline
Futuremark(企業) Xfastest

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