これは壮大なコンピューティング革命の始まりに過ぎない:NVIDIA GPU Technology Conference(1/3 ページ)

» 2009年10月02日 05時30分 公開
[笠原一輝,ITmedia]

 NVIDIAは、2006年にCUDAの取り組みを発表して以来、積極的にGPUを利用した汎用コンピューティングに取り組んできた。今回米国で行われたGTC(Gpu Technology Conference)では、ソフトウェア技術者に、今後のGPUコンピューティングの方向性や、新しい機能を利用するプログラミングの方法について“集中講義”を行った。

 同社のCEOを務めるジェン・セン・ファン氏の基調講演では、NVIDIAのGPUコンピューティングに対する考えについて紹介された。ファン氏は「我々はゼロから設計した新しいGPUの「Fermi」を近い将来にリリースする。FermiはGPUコンピューティングに最適化した最初のGPUとなるだろう」と、新アーキテクチャを採用する新世代GPUの概要を明らかにした。

1993年のスーパーコンピュータを1つのGPUで実現できる

 ファン氏の基調講演は、最新のビジュアルコンピューティング技術を駆使したNVIDIAらしい演説だった。例えば、プレゼンテーションに利用されたスライドは、「世界で初の3D表示プレゼンテーション」(ファン氏)で、聴衆はNVIDIAの「GeForce 3D Vision」に対応したグラスをかけると、ハン氏のプレゼンテーションスライドが3Dで見ることができるようになっていた。

 ハン氏は「最初の世代のGPUは、単にグラフィックスを表示するために利用されてきた。仕組みは単純で、開発者もフレームレートを上げることに心血を注いできた。第2世代では、プログラマブルシェーダの仕組みを追加して、開発者がGPUを利用するプログラムを作れるようにした。そして、今はCUDAの時代だ。CUDAはフルプログラマブルで、開発者はGPUを利用して自由に演算できるようになった」と、GPUが進化してきた過程を振り返り、ようやく、GPUを利用して多用な演算を行える時代が到来したと述べた。

 ファン氏は、1TFLOPSの演算性能を持つ“1993年当時のスーパーコンピュータ”を引き合いに、その価格が米国の平均的な住宅2軒分に相当することを示し、「この1TFLOPSの演算性能は、今やFry's(米国で大手の量販店)で買えるGeForce GTX 275で得ることができる」と、GPUが十数年前のスーパーコンピュータと同じ性能を備えているとアピールした。「現在、世界最高のスーパーコンピュータはIBMのロードランナーだが、10年すれば、それも1つのGPUだけで実現できるだろう」と、今後もGPUの処理能力が上昇し続けていくというビジョンを示した。

基調講演を行ったNVIDIA CEOのジェン・セン・ファン氏(写真=左)。GeForce 256からGeForce 8800シリーズ、そして、Fermiで可能になる実写並みのレンダリングと、NVIDIAのGPUが着実に性能を向上させてきた軌跡が紹介された(写真=中央)。1993年当時のスーパーコンピュータは1TFlopsの演算能力を誇っていたが、現代のGPUは1つでその能力を発揮する(写真=右)

ビジュアルコンピューティングのカギはフィジックス

 ファン氏は、現在NVIDIAが注力している3つのカテゴリーを挙げている。それが「ビジュアルコンピューティング」、「並列コンピューティング」、「Webコンピューティング」だ。

 NVIDIAが、これまで得意としてきたのがビジュアルコンピューティングだ。ファン氏は「ビジュアルコンピューティングはサイエンスであり、そしてアートでもある」と、ハリウッドのスタジオが作ったコンテンツを例に、よりリアルな3D画面を描画することの重要性をアピールした。

 ファン氏は、「NVIDIAはこれまで、球面環境マッピング、プログラマブルシェーダなど、実に多くの3D描画手法を導入してきた」とこれまでのビジュアルコンピューティングの技術を振り返りつつ、最新の手法によるデモを紹介した。そこでは、レイトレーシングを利用して、車の表面を実写のように表現したり、実際に車のドアを開けると、GeForce 3D Vision対応グラスをかけた来場者には、本当に車のドアが開いているように見える“ビジュアル”が示された。

 さらに、日本ですでに発売されている富士フイルムの「FinePix REAL 3D W1」で来場者を撮影し、GeForce 3D Vision対応グラスで見ると撮影画像で立体視できることが紹介された。

 ファン氏は、よりリアルな3D映像を作るために必要なものは「答えは非常にクリアで、フィジックス=物理シミュレーションだ」と述べ、物理演算を利用した実写のような流体のリアルタイムアニメーションを実施した。

「FinePix REAL 3D W1」を掲げるファン氏(写真=左)。ファン氏は、FinePix REAL 3D W1で撮影した画像をその場で示し、GeForce 3D Vision対応のグラスで立体視できることを紹介した(写真=右)

GPUの技術革新において、次にくるビックウェーブは「物理演算」だ(写真=左)。典型的な物理演算の例として紹介された、流体シミュレーション結果のリアルタイムアニメーション(写真=右)

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