カスペルスキーは4月14日、Android端末向けセキュリティ製品「カスペルスキーモバイルセキュリティ9 for Android」の無償配布を開始した。マルウェアの検知・駆除機能をはじめ、プライバシー保護や端末の紛失・盗難対策機能を備える。対応OSはAndroid 1.6〜2.2で、2.3や3.0などについては今後のアップデートで対応する予定だ。発表会にはKaspersky最高責任者のユージン・カスペルスキー氏や、1月に代表取締役会長に就任した加賀山進氏が登壇し、日本市場におけるビジネスの展開について説明した。
冒頭でユージン・カスペルスキー氏が「日本市場に対して真剣に取り組んでいく」と語り、日本市場への投資拡大に意欲的な姿勢をみせるように、カスペルスキー日本法人は2011年3月にロシア本社の100%子会社となっている。加賀山氏は、カスペルスキーがグローバルで急成長する一方で、日本はその流れに取り残されているとし、「その大きな原因は今まで資本構成がフランチャイズベースになっており、グローバルなオペレーションができなかったことに尽きる」と理由を説明。今回の100%子会社化による資本増強によって、「長期的には2016年までに国内アンチマルウェア市場でリーダーになる」と目標を掲げる。シマンテックやトレンドマイクロなどのセキュリティベンダーが大きなシェアを占める成熟した日本市場において、6年でシェアトップという目標はかなり野心的に聞こえるが、同社のグローバルにおける成長を見ると“勝算”はあるという。
加賀山氏は「ロシアや東欧でシェアトップなのはもちろん、ドイツやスペインなどのヨーロッパでも1位を占め、次に米国と、時計回りに100%子会社をすすめており、そうした市場では急激に成長するパターンがある。そして日本に次の順番が来ている。直前の米国の成功を見れば達成できない目標ではないと確信している(ちなみに米国は過去6年で75倍の規模に成長した)」と述べ、「2段目のロケットに火をつけるときだ」と力強く語った。
ただし、「日本市場は全体として成長の見込めないゼロサムゲームのマーケット」とも述べ、その成熟しきった市場でカスペルスキーの存在感を増すためには、コンシューマービジネスを強化するとともに、パートナーネットワークの拡充や、これまでロシアにまかせていたR&D(Research&Development)部門の設置などが課題になるとし、新オフィスへの移転や人員の増強、販売パートナーを今年度中に110社から250社へ増やすことなどを改めて語った。今回のカスペルスキーモバイルセキュリティ9 for Androidが「当面の間はパッケージ販売をせずオンラインで無償提供する」(加賀山氏)のも、“Androidセキュリティ=カスペルスキー”を広く認知させることで、ほかの製品への波及効果を狙ったものだ。


これまでのフランチャイズ制から100%子会社に移行することで資本を集中的に投下し、地域ごとに成長を促してきた。次は日本の番になるという(写真=左)。2016年までにコンシューマー、法人、OEMで業界トップのポジションをめざす(写真=中央)。主力のコンシューマービジネスを強化するためにサポート体制を整え、パートナーの要件にサポートを含めないプランも用意する。また、ソースコードにタッチできる開発部門も設置し、パッチの配信などで迅速な対応を可能にしていく(写真=右)一方、カスペルスキーモバイルセキュリティ9 for Androidの概要については、代表取締役社長の川合林太郎氏が説明した。同氏は、Androidの出荷台数がPCを抜いたというデータを引き合いに出して、「PCとの違いは電話ができることだけ。Androidは非常に便利で使い勝手がよく、持ち歩きにも困らない。今後どんどん伸びていくと思う。ただし、PCと同じように使えるということはPC上の脅威もあてはまるという側面がある。これまでPCのセキュリティリスクは自己顕示欲を満たすためのものや愉快犯から、金銭目的のネット犯罪へと段階的に変遷してきた歴史があるが、モバイル端末は一足飛びにネット犯罪の脅威にさらされる」と指摘し、「セキュリティベンダーとしてこれを見過ごすことはできない」と述べ、カスペルスキーモバイルセキュリティ9を国内リリースした理由を説明した。
カスペルスキーモバイルセキュリティ9には、大きく分けて「アンチウイルス」「プライバシー保護」「盗難対策」「着信拒否」という4つの機能がある。アンチウイルスではAndroid向けのマルウェアの検知や駆除、プライバシー保護ではSMSや通話履歴などの保護、盗難対策ではリモートでの端末ロック/データ消去やGPS追跡、そして着信拒否ではホワイトリスト/ブラックリスト/ハイブリッド(混在)方式による着信とSMSのフィルタが行える。


Android端末はPCでたどってきたセキュリティの変遷を飛び越えて最新のサイバー犯罪にさらされる(写真=左)。2004年にフィンランドでSymbian向けのトロイの木馬が発見されて以降、モバイル端末を標的にしたマルウェアは増加してきた(写真=中央)。メディアプレーヤーや動画に仕込まれたトロイの木馬、フィッシングサイトなど、PCと同じようにセキュリティリスクが存在する。Android Marketに並ぶアプリも、安心とはいえない状況だ(写真=右)同氏は「今後の商品化よりもまずは無償で提供したい」と述べ、「アンドロイドセキュリティ=カスペルスキー」を確立し、年内100万ユーザーをめざすとした。なお、すでにAndroid Marketには英語版が有料で公開されているため、日本語版は当面、特設サイト経由のみでダウンロード提供が行われる。
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