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» 2011年05月12日 11時50分 公開

普通のプリンタに用はありません:“プロ仕様”のA3ノビ顔料フォトプリンタ――「PX-5V」を検証する (3/4)

[榊信康(撮影:矢野渉),ITmedia]

モノクロ/カラーの印刷品質を調べる

 それでは、実際の印刷品質をじっくりチェックしていこう。印刷サンプルは、モノクロ画像1点とカラー画像4点を最高画質の設定で出力してみた。

 モノクロでは、プリンタドライバが標準で使用している「EPSON基準色」、モノクロモードの「純黒調(調子はデフォルトの硬調)」、そして「ICCプロファイル」の3種の色補正方法でプリントを行っている。カラーでは「EPSON基準色」と「ICCプロファイル」の2種類でプリントした。EPSON基準色や純黒調には微調整用のパラメータが用意されているが、これらは一切用いていない。

 使用した用紙は、モノクロ印刷が表面にわずかなテクスチャ加工を施したアート紙の「Velvet Fine Art Paper」、カラー印刷がハイグレードな光沢紙の「写真用紙 クリスピア<高光沢>」だ。

印刷サンプルについて

 以下はPX-5Vで印刷したサンプルをスキャンした画像データの縮小表示。スキャンした時点で、色の表現方法がCMYKからRGBに変わるうえ、ディスプレイやソフトウェアの環境で見え方が大きく変わってしまう。色再現性は正確さを欠くため、画質の特徴の違いを把握するための参考であり、評価は本文を確認してほしい(Adobe RGBの色域を扱えるアプリケーションとディスプレイで表示すると、色再現性が高まる)。

 また、元画像と比較して、発色が悪く、シャープネスが甘く見えるのも印刷した写真をスキャンした影響によるもので、実際の印刷サンプルは鮮やかで細部がよりはっきりしている。実際の画質は店頭で実物を見て判断してほしい。


モノクロ風景

 EPSON基準色は青みが強く、ICCプロファイルはニュートラルながら若干緑がかり、純黒調はICCプロファイルに近いが、少し赤みが差すという結果となった。シャドーが広範に渡るような部分では、つぶれたようにも見える部分もあるが、じっくりと見れば階調は残している。紙のクセでもあるので、シャドーが大半を占めるようなデータでしっかりと階調を生かしたいならば、定評のある「UltraSmooth Fine Art Paper」がおすすめだ。

EPSON基準色(画像=左)、ICCプロファイル(画像=右)

モノクロモードの純黒調(画像=左)、元画像(画像=右)

カラー風景

 EPSON基準色での出力はシャドーを持ち上げているのか、全体に平坦なイメージになった。空の色はオリジナルからかなり変化している。ICCプロフィルでの出力はオリジナルに近いイメージで、陰影がしっかりとして立体感を損ねていない。色についても同様で、斜陽の照り返しと空の色に違和感がない。

EPSON基準色(画像=左)、ICCプロファイル(画像=右)

元画像

カラー建造物

 EPSON基準色とICCプロファイルの設定でカラーバランスに大きな隔たりはない。EPSON基準色はハイライトとシャドーのトーンを大きく調整しているようで、きらびやかで華やかなイメージになった。対してICCプロファイルは比較的リニアなトーンの推移を見せており、荘厳な雰囲気を醸し出している。

EPSON基準色(画像=左)、ICCプロファイル(画像=右)

元画像

カラー人物

 EPSON基準色は背景の白色に少し赤みが出たが、人肌が健康的に表現された。調整によっては白く消し飛びそうな起毛もまずまず描写できている。ICCプロファイルは全体的に緑がかっており、人肌の黄味が少々強くなった。トーンに乱れはなく、スーツの陰影もしっかりと描写できている。また、白飛びや黒つぶれも見られない。

EPSON基準色(画像=左)、ICCプロファイル(画像=右)

元画像

カラー静物

 これまでのサンプルでの傾向が顕著になっている。カラーバランス自体はEPSON基準色とICCプロファイルの設定でさほどズレはない。ただ、トーンカーブが異なるため、色調はかなり差が生じている。EPSON基準色の出力はメリハリを出すためにトーンカーブのS字をきつくしている印象で、金属などの硬質なオブジェクトは見栄えがよいが、ワインラベルや色鉛筆などの文字には違和感が生じ、トランプの絵柄も少し不自然に思える。

EPSON基準色(画像=左)、ICCプロファイル(画像=中央)、元画像(画像=右)


 当然なのだが、総合的な画質についてはPX-5600と似通っている。違いは端々で見られるが、これを画質向上と大きくアピールできるかどうかは少し悩むところだ。印象としてはPX-5600から、さらにクセが抜けたといったところか。PX-5500からPX-5600に変わったときに感じたカラーコントロールのクセがより軽減されたように思える。

 唯一、向上したと明言できるのはボケや雲、人肌などの淡いトーンの描写がPX-5600より、さらに自然になっていることだ。PX-5600も非常に流麗だったといえるが、PX-5Vはそれ以上に好印象を受ける。これはまさに2ピコリットルに微細化したインクドロップとドット配置の最適化、ドロップ精度および送紙精度の向上が生み出したものだろう。

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