PCで動画を見る機会が、仕事でもプライベートでも非常に多い筆者にとって「再生ソフトに何を使うか」は以前から悩みの種だった。この手のソフトウェアは、数こそ非常に多いのだが、いずれも一長一短で、決定打というほどの存在はないから、結果的に数本を使い分けている。
ただ、そうなるとソフトウェアごとに最適な設定をいちいち施さなければならず、実に面倒くさい。筆者は少なくともプライベートな場面では、ただコンテンツを楽しみたいだけで、再生ソフトの知識やストレスなく楽しむための小技を身に着けたいわけではないのである。
仕事上で必要な知識と経験を蓄積できるというメリットがなければ、これはがまんできないストレスだっただろうな……と思っていたところへ、今回サイバーリンクから登場した「PowerDVD 13」を試用する機会を得た。筆者なりのポイントに絞って特徴を見ていこう。
市販のDVD/BD再生ソフトについて「もともとPCや光学ドライブに付属していたものからバージョンアップの必要を感じない」あるいは最近なら「そもそも自分のPCには光学ドライブがないから、DVD/BD再生ソフトには興味がない」という人は少なくないだろう。そこで最初に申し上げておきたいのが、今回のPowerDVD 13は「PCで動画を見る機会のある人」なら誰でも一見の価値あり、ということだ。
今回試用したのは“全部入り”というべき「PowerDVD 13 Ultra」で、ダウンロード版には1万1800円という値段がついている。スマートフォンやタブレットデバイスで、せいぜい数百円のソフトやコンテンツを買うのが日常的になっている感覚では、娯楽用のユーティリティソフト1本に1万円を超える金額を出すというのは、心理的ハードルが高いのではないかと思う。しかし、絶対的な金額よりも、自分にとって魅力的な価値を見いだせるかという点で判断したほうが結果として幸せになれるハズだ。
もしもUltra版にしかない機能には魅力を感じないということであれば、基本的な部分が共通のベーシック版たる「PowerDVD 13 Deluxe」(6980円)や中位の「PowerDVD 13 Pro」(9500円)を検討するのもいい。製品ごとの機能差については、サイバーリンクのページで詳細を確認できる。なお、価格は現在GWセール中ということでそれぞれ10%オフになっている。
今回のバージョンアップでは60以上の新機能が搭載されているが、筆者としては特に2つに注目した。まず驚いたのが、起動およびメディア読み出しの速さだ。Nehalem世代のCore i7を搭載した17型フルHDノートPCで試用したところ、アプリケーション本体の起動は一瞬といっていいほど速く、筆者にとっては、この点だけで市販DVD/BD再生ソフトに対する印象を覆されるほどのインパクトがあった。
Blu-ray Discメディアの読み出しも、前バージョンとの比較で58%短縮されたというが、実際、機械的な一連の動作が完了すれば、一瞬で再生を開始できたという印象だ。また、ただ速いだけでなく、安定して動作するのもポイントが高い。
他社の一世代前の再生ソフトでDVDやBly-ray Discの映画を見てきた筆者は、2時間なり3時間なりの映画を楽しむ前の“儀式”のようなものとして、長い読み出し時間や、まれに起動に失敗する動作っぷりも大目にみてきたつもりだったが、この速度と安定性を体感してしまうと、実際には鑑賞開始前に相当なストレスを感じていたのだということがよく分かる。
ディスクメディアだけでなく、PCのローカルストレージ内に保存されたファイルメディアの再生時もキビキビと動作し、これならファイル再生・ディスク再生の違いでソフトを使い分ける必要はないと感じる。ファイル再生時に利用する内蔵のメディアエクスプローラーは独自のユーザーインタフェースを持ち、Windowsのエクスプローラーとは異なるものの、市販ソフトにありがちな押し付けがましさがなく、直観的で使いやすい。
なお、Ultra版はDLNAクライアント・サーバーの両機能も実装しており、DTCP-IPにも対応しているので、例えば、リビングのnasne内に貯めたテレビ番組も再生できる。ご存じのように、PCの汎用ソフトウェアとして販売されているDTCP-IP対応のDLNAクライアントはもともと選択肢が少ないのだが、本製品のDLNAクライアント機能は、筆者が試した限りでは特に何も設定せずとも安定して動作し、速度もまずまず軽快だった。
これまで何本か買って使ってきた筆者の経験に照らすとこれはきわめて優秀で、この1点だけでも強い“引き”を感じる。もちろん、ローカルメディア再生ソフトと一本化できるのも非常にありがたい。
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