BCNは7月10日、PC、タブレット端末、薄型テレビ、デジタルカメラといったデジタル機器の販売動向に関する記者会見を開いた。テーマは「デフレ脱却したデジタル家電、その裏側とは?」。日本の経済情勢が好転しつつあり、PCをはじめとするデジタル機器の価格下落は止まった(または上昇傾向に反転した)が、売り上げ額は伸びていないという。
PCの製品単価は、コモディティ(日用品)化や経済情勢の悪化とともに下がり続けてきたが、Windows 8発売以降、価格は上昇傾向にあるという。BCNの調査によると、ノートPCとデスクトップPC全体の平均単価は、2012年10月に約6万7800円と底値になったあと、2013年6月には約8万3400円と約23%上昇した。BCNアナリストの道越一郎氏および森英二氏は、価格上昇の要因として以下の3つを挙げた。
「タッチパネル搭載モデルの増加」は、タッチパネルを搭載したことでPC製造のコストが上がり、価格が上昇したというものだ。Windows 8登場時はタッチパネルの供給が不足したため、タッチを1つのウリにするOSが登場したにも関わらず、タッチ対応PCのラインアップが想定より少なかった経緯があったが、供給不足が解消されるとともにタッチ対応PCのラインアップが増え、2013年6月にはノートPCの23.7%がタッチ対応モデルとなった。
森氏は「Windows 8発売当初、メーカー各社はハイエンドモデルのみタッチパネルを採用していたが、夏モデルではスタンダードモデルに採用する事例も増えてきており、徐々にタッチ操作が普及してきている」と述べた。タッチ対応モデルと非対応モデルの価格差が縮まっていることも、タッチ対応モデルが普及しつつある一因という。
一方で、デスクトップPCのタッチ対応モデルは、販売台数ベースで全体の約10%とノートPCよりも少ない。デスクトップPCにおけるタッチ操作が思うように浸透していないことに加え、ノートPCと違い、メーカー各社がハイエンドモデルしか採用されていないことが原因だという。「デスクトップPCにおいては、VAIO Tap 20のように、タッチ操作の利用用途までメーカーが提案することが求められる」(森氏)
長期にわたって続いた円高傾向に変化が出たことも、PCの単価に大きな影響を与えた。HDDをはじめとする部品調達にかかるコストが増えたことで、夏モデルでは従来機種から1万円程度価格を上げた製品が数多く登場している。単価は上昇したものの、これらは需要増加による値上げではない。依然として市場の力は弱く「不況下の物価上昇、いわゆるスタグフレーションの恐れもある」という(道越氏)。
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