「VAIO Duo 13」の“最先端スライドボディ”を丸裸にするVAIO完全分解&開発秘話(前編)(5/6 ページ)

» 2013年09月19日 11時30分 公開

省電力と高画質を両立した特注の液晶ディスプレイ

スケルトンモデルで見るVAIO Duo 13の液晶ディスプレイ部。パンチング加工されたプレートの下にサブ基板がある

 続いて、スライド機構を搭載した液晶ディスプレイ部裏面のカバーもネジを外して分離する。

 カバー内には、インカメラ("Exmor R for PC" CMOSセンサー搭載で約207万画素)のほか、ワイヤレス通信のアンテナ、そしてVAIO Duo 13で追加したワイヤレスWANのモジュールとMicro SIMスロット(au 4G LTE対応/ソニーストア直販のVAIOオーナーメードモデルで選択可能)を搭載しているのが目新しい。メイン基板からセンターヒンジ内にケーブルを通し、M.2ソケット仕様のワイヤレスWANモジュールとMicro SIMスロットを実装したサブ基板と接続する仕組みだ。

 笠井氏は「VAIO Duo 13では“Always On, Always Connected”(スマートフォンのように電源を切らず、スリープと復帰を利用し、スリープ時でもメールやSNSなどの通信が可能なこと)のサポートも大きな開発テーマだったので、その最たる技術であるワイヤレスWANの追加は欠かせない要素だった。しかし、ワイヤレスWAN機能を追加する場合、液晶ディスプレイ左右のスペースにアンテナを入れる必要があるため、そういった意味でもVAIO Duo 11の画面左右にスライド機構を埋め込む構造は見直す必要があった」と、ワイヤレスWANの採用について説明する。

液晶ディスプレイ部から取り外した背面カバー(写真=左)。M.2ソケット仕様のワイヤレスWANモジュールとMicro SIMスロットを実装したサブ基板、ワイヤレス通信のケーブル、インカメラ、ディスプレイケーブルなどが狭いスペースに詰め込まれている。背面カバーからスライド機構のヒンジを取り外した状態(写真=右)

IPS方式の液晶パネルを採用。集光バックライトの強度がVAIO Proより弱めなので、斜めからの視認性も良好だ

 液晶ディスプレイの解像度はフルHD(1920×1080ドット)だ。画素密度は約166ppi(pixel per inch:1インチあたりのピクセル数)となる。ノートPCの13.3型ワイド画面ではかなり精細な表示であり、Retinaディスプレイほどの高画素密度ではないが、通常の視聴距離でドットの粗が気になることはないだろう(Windows 8上のdpiスケーリング設定は125%に設定されている)。液晶パネルは広視野角のIPSパネルだ。

 液晶ディスプレイにもVAIO Duo 13ならではの工夫が詰まっている。VAIO Duo 11/13と同じように、液晶パネルの裏に敷く反射板やプリズム形状の変更により、LEDバックライトの光の向きを正面寄りに制御する「集光バックライト」を採用したため、低消費電力の低輝度動作でも正面から画面が明るく見えるのはありがたい。

 ただし、VAIO Duo 13はタブレットモードを用意していることに加えて、キーボードモードでは画面の角度が固定されるため、VAIO Pro 11/13より視野角が広くなるよう集光の度合いを抑えている。したがって、VAIO Pro 11/13より省電力効果は少々下がるが、斜めから画面を見ても少し暗いだけで、視認性はきちんと保たれる。

 省電力に関しては、液晶ディスプレイの接続インタフェースにeDP 1.3を採用し、液晶パネルのセルフリフレッシュ機能に対応したのも隠れたポイントだ。画面表示の内容に変化がない場合、液晶パネルだけで画面のリフレッシュを行い、CPU内蔵グラフィックスからのデータ転送を中断することにより、システム全体の消費電力を抑えられる。

電気設計を担当した土田氏

 電気設計を行った土田氏は、「液晶ディスプレイが集光バックライトとセルフリフレッシュの両方に対応することで、実使用で通常より省電力動作が可能になり、バッテリー駆動時間の延長に貢献している」と、その省電力効果をアピールする。

 なお、昨今はより画素密度が高く、省電力もうたうIGZO液晶パネルを採用したノートPCも存在するが、笠井氏は「13型クラスのIGZO液晶パネルより、VAIO Duo 13用に開発したa-Si液晶パネルのほうが消費電力が低い。通常、液晶パネルはベンダーが用意するラインアップから選定するか、仕様を少し変える程度だが、VAIO Duo 13では液晶パネルのカラーフィルターをカスタムし、LEDバックライトの集光技術を盛り込むなど、パーツベンダーと密接にやり取りして特注品を採用している。バッテリー駆動時間への影響を考えると、フルHD超の高解像度は不利なので、現状ではこの液晶パネルが最適」と、これ以上の高画素密度化は時期尚早との見方だ。

 とはいえ、VAIO Duo 13は画質面にもこだわっている。VAIO Duo 11/13と同様、ソニーの液晶テレビ「BRAVIA」で使われている技術をモバイル向けに応用した「トリルミナスディスプレイ for mobile」を採用。専用のカラーフィルターにより色域を通常より広げているため、豊かな発色が味わえる(BRAVIAのトリルミナスのようにRGB 3色LEDバックライトを使っているわけではない)。超解像技術を含む映像高画質エンジン「X-Reality for mobile」も備えている。

 VAIO Duo 11が採用した「オプティコントラストパネル」も健在だ。通常は空気層となっている液晶パネルとガラスの間にクリアな樹脂を挟んで空気をなくす技術で、光の反射と拡散を抑えながら、コントラストを高める効果を持つ。

13.3型フルHD液晶ディスプレイは「トリルミナスディスプレイ for Mobile」の採用により、sRGBをほぼカバーする(編集部調査)色域がある(写真=左)。背面カバーを取り外した液晶ディスプレイ部(写真=左)。薄型の液晶パネルモジュールの下に、タッチパネルの基板が配置されている(写真=右)

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