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「Venue 8 Pro」――“3万9980円”の8型Windows 8.1タブレットは買いか?最新タブレット速攻レビュー(3/4 ページ)

» 2014年01月08日 14時00分 公開

実力テスト:Bay Trail-T世代として高速ではないが、十分な基本性能

 ここからは各種ベンチマークテストの結果を見ていこう(試作機でのテストなので、製品版では異なる傾向を示す場合もある)。

 今回は参考までにAtomベースのWindowsタブレットとして、Atom Z3740(1.33GHz/最大1.86GHz)搭載の8型モデル「Iconia W4-820」(日本エイサー)、Atom Z3770(1.46GHz/最大2.39GHz)搭載の10.1型モデル「ARROWS Tab QH55/M」(富士通)、Atom Z2760(1.5GHz/最大1.8GHz)搭載の10.1型モデル「ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J」(富士通)とテスト結果を比較した。

 WinSATはWindows 8.1で省かれたWindowsエクスペリエンスインデックスのスコアを算出できる機能だ。結果はすべての項目でAtom Z2760搭載のARROWS Tab Wi-Fi QH55/Jを明らかに上回っており、Clover TrailからBay Trail-Tに世代交代したAtom Z3000シリーズの性能を見せつけている。

 Bay Trail-T世代の製品と比較すると、特にCPUスコアの落ち込みが目立つが、過去のテストではCore i5-4210Y(1.5/最大1.9GHz)搭載機で6.2、Core i5-3317U(1.7GHz/最大2.6GHz)搭載機でも6.9というスコアが出ていることから、Iconia W4-820とARROWS Tab QH55/Mのスコアは実際より結構上振れした値として見たほうがよいだろう。

 CPU性能をチェックするCINEBENCHもWinSATと似た傾向で、Venue 8 ProはIconia W4-820の約74%というスコアだ。しかし、Windows 8.1の基本的な操作レスポンスにおいて、この2機種間で気になるほどの体感差はなかった。いずれも過去のAtom搭載機のイメージをいい意味で裏切り、Windows 8.1のストレスがない操作感を実現している。

 ストレージ性能を評価するCrystalDiskMarkは、どれもeMMC(embedded MultiMediaCard)を採用しているため、PC用のSerial ATA SSDほど高速ではないが、ランダムアクセスの性能は標準的なPC用HDDを超えている。Bay Trail-T世代の3機種はいずれもeMMCにSamsung「MCG8GC」を実装していたが、今回のテストではIconia W4-820だけ高速な結果が出た。

 PCの総合的な性能を計測するPCMark 7のテスト結果でも、Clover Trail世代からの進化は一目瞭然だ。ARROWS Tab Wi-Fi QH55/Jをテストした際のPCMark 7のバージョンは1.0.4で、現行の1.4.0よりスコアが少し高めに出ることが多いが、それでも総合スコアで大きく引き離した。このテストではAtom Z3770搭載のARROWS Tab QH55/Mに肉薄している。

 3Dグラフィックス性能を調べる3DMarkでは部分的にIconia W4-820のスコアを上回り、FF14ベンチのスコアでも肉薄したが、最近の3Dゲームを満足にプレイできるほど描画性能は高くない。

 もっとも、Flashゲームの「艦隊これくしょん -艦これ-」用に8型Windows 8.1タブレットを検討している方も少なくないだろう。Venue 8 Proは描画負荷が高いシーンで処理が少しもたつくものの、競合機種と同様、十分にプレイできるレベルだ。

左から、WinSAT、CINEBENCH R11.5、CrystalDiskMark 3.0.3のスコア(ARROWS Tabの2機種は3.0.2でテスト)。
左から、PCMark 7 1.4.0(ARROWS Tab Wi-Fi QH55/Jは1.0.4でテスト)、3DMark 1.2.250(ARROWS Tab QH55/Mは1.1.0でテスト)、FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編のスコア

 液晶ディスプレイの表示を計測したところ、色温度は6616Kと業界標準のsRGB(6500K)に近く、自然な白色だ。ガンマ補正カーブはRGBの各線がそろっていて色ズレはないのだが、特に暗部から中間階調にかけて下向きに大きく補正されている。これは、全体に暗部が浮いて白っぽい表示になることを意味しているが、今回入手した評価機は確かにコントラスト感が低く、発色があっさりして見えた(試作機固有の問題の可能性もある)。色域はsRGBより一回りほど狭く、最近のタブレットとしては標準的かやや上といえる。最大輝度の計測値は350カンデラ/平方メートル弱で、十分明るかった。

液晶ディスプレイの計測結果。ガンマ補正カーブを見ると、RGBの各線がきれいに重なっているが、特に暗部から中間階調にかけて下向きに補正されている(画像=左)。色域の広さを見ると、sRGB(下に敷いたグレーの領域)に比べて緑から黄色の領域は少し広いが、それ以外の領域は狭くなっている(画像=右)

 Webブラウズとテキスト入力を想定したバッテリー駆動時間テスト(BBench 1.01)を実行したところ、輝度40%の状態において、満充電から残り5%で休止状態に移行するまで10時間動作した。公称値の8時間を2時間も上回る好結果だ。試しに、輝度100%の状態でテストしてみたが、それでも7時間という結果だった。携帯して使う小型Windows 8.1タブレットとして必要十分なスタミナといえる。

 他のAtom搭載タブレットと同様、Venue 8 Proはファンレス設計なので、動作時の騒音は発生しない。ボディの発熱については、低負荷時でも正面の右下と背面の左下が温まりやすく、右手で縦に持っているとじんわり熱を感じる(左手で持てば熱くない)。高負荷時にはこの傾向が強まり、8型タブレットでは比較的熱を持ちやすい印象だ。

左から、BBench 1.01によるバッテリー駆動時間テスト、発熱テストの結果。いずれも室温は23度

ベンチマークテストの概要

  • パフォーマンステスト
    • WinSAT(PC総合評価)
    • CINEBENCH R11.5(CPU性能評価)
    • Crystal Disk Mark 3.0.3(ストレージ性能評価)
    • PCMark 7 1.4.0(PC総合評価)
    • 3DMark 1.2.250(3D性能評価)
    • FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編(3D性能評価)

※Windows 8の電源プランは「バランス」で測定

  • 液晶ディスプレイ表示品質テスト
    • i1Pro+i1Profilerでディスプレイの表示を実測し、ガンマ補正カーブを抜粋
    • i1Proが生成したICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで表示し、色域をsRGB(薄いグレーで重ねた領域)と比較

※液晶ディスプレイは1時間以上オンにし、表示を安定させた状態で中央付近を測定

  • バッテリー駆動時間テスト
    • BBench 1.01

※電源プラン「バランス」+輝度40%もしくは100%固定+無線LAN接続+Bluetoothオン。BBench 1.01(海人氏・作)にて「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」と「10秒間隔でのキーストローク」、WebブラウザはInternet Explorer 11を指定し、タブブラウズはオフ。満充電の状態からバッテリー残量が残量5%で自動的に休止状態へ移行するまでの時間を計測

  • 発熱テスト
    • 放射温度計でボディ表面温度を実測(室温23度)

デル株式会社 デル株式会社

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