明日(2014年10月17日)、PCプリインストール用の新しいOfficeライセンス「Office Premium プラス Office 365 サービス」(以下、Office Premium)を搭載したPCが発売になる。米Microsoftの日本法人である日本マイクロソフトのアイデアで独自に商品企画され、国内市場のみで提供される個人向けのOfficeだ。
すでに概要は発表されているのでご存じの方も多いだろう。「PCとともに永続的に使えるOffice」という従来のプリインストールソフトウェアのライセンス概念と、加入型サービスであり、関連するオンラインサービスとともに提供される現在のOffice(Office 365)、その両方の特徴を組み合わせたものだ。
今回は発売を明日に控え、なぜOffice Premiumという特殊なライセンス形態が必要だったのか、どういった利点があるのかについて、少しばかり掘り下げておきたい。
Office Premiumで提供する3つのエディションと利用できるデスクトップアプリケーション | |||||||
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エディション | Word 2013 | Excel 2013 | Outlook 2013 | PowerPoint 2013 | OneNote 2013 | Access 2013 | Publisher 2013 |
Office Personal Premium | ○ | ○ | ○ | − | − | − | − |
Office Home & Business Premium | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | − | − |
Office Professional Premium | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
Microsoftは「デバイス&サービス」の会社を目指すとして、ソフトウェア製品の買い切りパッケージから加入型サービスへの切り替えを進め、ユーザーもこれを受け入れている。加入型サービスとしてのOfficeが「Office 365」と呼ばれるものだが、この利用者は四半期ごと100万人ずつ増えているのが現状という。
買い切りパッケージから加入型サービスになることで、Officeとともに使うサービス(用途ごとに提供されるサービス内容も異なる)が提供されることに加えて、アプリケーションソフトとしてのOfficeを、契約期間中は自由に使う権利が与えられる。この際、バージョン番号や利用する端末の種類は問われない。
つまり、MacでもWindowsでも、そしてiPad、iPhone、Android端末でも、目の前にコンピュータスクリーンがあるならば、そこでOfficeが利用可能になるのだ。このところMicrosoftがモバイル端末向けのOfficeを整備してきたのは、端末にインストールするソフトウェア単位で販売、ライセンスしていたのでは、複数端末を使い分けるモバイルの時代にそぐわないからに他ならない。
ところが、米国でリリースされた「Office Mobile for iPhone」と「Office Mobile for Android」が当初日本で利用できず(その後、無償化に伴って解禁)、「Office for iPad」も発表時には日本で利用できない(2014年内に日本語版を提供予定)などの問題が起きた。実は、その理由は日本独自の「PIPC(プリインストールパソコン)版」Officeにあった。
PIPC版Officeは、自宅に仕事を持ち帰って作業したい、あるいは中小企業やホームオフィスなど1台単位で仕事用PCを買う場合でも「仕事に使ってよいOffice」が欲しい、といったニーズを満たすために存在してきた。
通常のOfficeライセンスは任意の2台までのコンピュータにインストールが可能だが、PIPC版のライセンスはプリインストールされたWindowsと同じで、特定コンピュータと紐付けられている。つまり、最初に付属しているPC以外にインストールして使ってはならないライセンスだ。独立したソフトウェアではあるが、購入したPCに内蔵された機能と考えればよいだろう。
ユーザーはPCを買い替えない限り、プリインストールされたOfficeを使い続けることができる。ところが、この仕組みは加入型サービスにはなじまない。Office 365は、そもそもが多種多様な複数端末でOfficeの利用を可能とするサービスであり、しかもサービスを解約すると付随するソフトウェア(具体的にはOfficeのソフトウェア本体)の利用権を失ってしまう。
契約期間を延長していかなければ途中で使えなくなってしまうものを、PCに内蔵する機能の一部として提供するわけにはいかない。一方で、日本では販売されているPCの92.2%にPIPC版Officeが付属しており、利用者からのニーズも高い。
そこで日本からの提案で生まれたのが、新しいライセンスのOffice Premiumだった。
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