“Fiji”と“HBM”の実力を「Radeon R9 Fury X」で知るこれが“4096”の性能だ(1/5 ページ)

» 2015年06月30日 17時33分 公開
[石川ひさよしITmedia]
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ココが「○」
4K解像度で高いスコア
扱いやすい水冷ユニット
ココが「×」
越すに越せないGTX 980 Ti
実売価格10万円

HBMの採用とともにStreamProcessorも増強

 AMDがE3で発表して6月24日から出荷も始まったグラフィックスカード「Radeon R9 Fury X」が搭載するGPUの「Fiji」は、HBM(High-Bandwidth Memori)技術を導入したのが大きな特徴だ。HBMはGDDR5メモリの後継となるだろう広帯域メモリで、「TSV」技術と呼ぶダイスタッキング手法を用い、メモリをGPU、または、CPU上にスタッキングして直接実装する。そのため、従来のグラフィックスカードのように、単独のグラフィックスメモリがGPUの周りを囲う必要がなくなり、スッキリとした基板レイアウトになり、カード長もコンパクトにできる。実際、Radeon R9 Fury Xは、基板サイズを「ショート基板」と呼べる7.5インチにまで詰めている。

“Fuji”を搭載したグラフィックスカードの形態をとる「Radeon R9 Fury X」

 HBMのもう1つの特徴が“広帯域”だ。こちらは。Radeon R9 Fury Xの仕様とともに見ていこう。前世代のRadeon R9 290Xもバス幅を広げたGPUで、512ビット接続というのはGPUでも最大クラスであるのに対し、Radeon R9 Fury Xは4096ビット接続とさらに広いバスで接続している。Radeon R9 290Xのグラフィックスメモリは16チップ構成なので、1チップあたりでは32ビットになるが、Radeon R9 Fury Xは4チップ構成なので1チップあたり1024ビットとなる。

 ただし、バス幅は広いがメモリクロックは抑えている。Radeon R9 290Xの場合は1250MHz、Radeon R9 Fury Xは500MHzだ。GPU上(実際にはインターポーザを介している)に実装するためにGPUパッケージ外に実装する場合と比べて熱設計がシビアになっている可能性もあるだろう。メモリ帯域幅は、Radeon R9 290Xが320GB/secであるのに対し、Radeon R9 Fury Xが512GB/secとなる。Hなお、GeForce GTX 980 TiなどGM200コアのGPUでは、384ビットで7Gbps品のGDDR5メモリを採用しており、メモリ帯域幅は336.5GB/secとなる。これと比較してもFijiのHBMは広帯域といえる。

製品名 Radeon R9 Fury X Radeon R9 290X
ストリームプロセッサ数 4096 2816
テクスチャユニット 256 176
ROPユニット 64 64
Z-Stencil 256 256
最大GPUクロック(MHz) 1050 1000
メモリデータレート(Gbps) 1 5
メモリクロック(GHz) 500 1250
メモリタイプ HBM GDDR5
メモリ接続バス幅(bit) 4096 512
メモリ帯域幅(GB/sec) 512 320
メモリ容量(MB) 4096 4096
最大消費電力(TDP:W) 275 290
DirectXサポート 12 11.2
OpenGLサポート Vulkan 4.3
そのほかAPI Mantle Mantle
PCI Express Gen. 3 3
プロセス(nm) 28 28
浮動小数点演算性能(Tflops) 8.6 5.6
トランジスタ数(億) 89 63
サイズ(平方ミリ) 596 438

 Radeon R9 Fury Xのグラフィックスメモリ容量は、広帯域のHBMを採用したといっても4チップ4Gバイトでしかない。ゲーム「Grand Theft Auto V」の画質設定ではメモリ使用量の目安を表示するが、4K解像度設定では4Gバイトを超えてしまうことも多い。これから増えてくる“4K”環境のゲームでグラフィックスメモリを4GB超を求める場合にどのような挙動になるのかは気になるところだ。

 この点、従来のGPU外実装方式であれば、グラフィックスカードベンダーが、大容量メモリチップを採用し、独自に2Gバイトの倍、4Gバイトの倍、といった倍量モデルをリリースしていたが、GPU上に載ってしまうと、AMDがそのようにバリエーションを用意する必要が出てくる。HBM自体もまだ登場したばかりであるため、倍量のチップをいつ実装するのかという問題もある。現行のFijiで、8チップ構成にしようと思っても実装面積とバスという2つの要因を解決しなければならない。AMDとしても、そこまで用意できればおそらく現行GPUの倍量モデルとするよりは、新GPUとしてリリースするのではないだろうか。このように、グラフィックスメモリの大容量化は、従来よりも難しいだろうと考えられる。

Radeon R9 Fury Xに実装したFijiも仕様をGPU-Zで確認する

 HBMのほかに、FijiではStreamProcessorを大幅に増強した。Radeon R9 290Xでは2816基を搭載したが、Radeon R9 Fury Xでは一気に4096基まで拡大した。合わせて、テクスチャユニットも176基から256基へと増強している。GPUコアクロックも1000MHzから1050MHzと、わずかながら引き上げている。ただし、コアアーキテクチャとしては、Radeon R9 285こと“Tonga”世代と大きく変わるところはない。プロセスルールも28ナノメートルのままだ。トランジスタ数はRadeon R9 290Xの63億に対しRadeon R9 Fury Xでは89億まで増え、ダイサイズもGPUのみで596平方ミリまで拡大した。

 ただし、TDPは、Radeon R9 Fury Xで275ワットとしている。消費電力を抑えている要因としても、HBMの影響は大きい。HBMでは、低クロック動作ということもあり、さらに配線長が短く済むことでムダも少ない。AMDによれば、1GB/secを実現するための電力で計算すればGDDR5比で3倍も効率アップするとのことだ。

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