「iPhone 6s」と「iPad Pro」に触れて感じた未来の予兆本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

» 2015年09月10日 15時30分 公開
[本田雅一ITmedia]

ついに「プロダクティビティ」を盛り込んだiPadが登場

 もっとも、本誌読者の興味はiPad Proにあるのではないだろうか。

 実際の製品発表を見て、さらに製品を使うまでは確信が持てなかったが、この新製品はモバイルPCユーザーに強く訴求する側面を持っている。「1台のパソコンだけで全てを解決する」ような高パフォーマンスのモバイルPCユーザーにとっては、視野に入らないだろう。しかし、モバイル用に普段使っているデスクトップや大型のノートPCと併用して小型軽量なPCを使っている人は大いに興味を持つはずだ。

 クラウド時代の新しいパーソナルコンピュータの形として登場し、コンテンツプレーヤー、あるいはWebコンテンツ、ウェブアプリケーションにアクセスする窓として新しい市場を開拓したiPadだったが、この2年ほどは伸び悩みが顕著だった。

 理由はさまざまだが、スマートフォンの能力向上や大画面化でミニタブレット需要が縮んだことや、「パソコンの代替」を期待したユーザーが思ったほどには置き換えになっていなかった面あるなど、さまざまな複合的要因があるだろう。

 Appleはこれまでも、マルチタッチ対応のタッチパネル搭載ディスプレイを活用することで、さまざまなプロダクティビティツール(生産性向上のための道具)になると訴求。パフォーマンスを高めるとともに、自社開発のアプリを改良してきた。

 しかし、プロダクティビティツールとしては、いわゆるパソコンのほうが優れた面も少なくない。複雑な作業になるほどパソコンの生産性は際立つため、iPadへの移行に挑戦したがパソコンに戻るというケースも少なくなかった。Microsoftの「Surface Pro 3」が2014年に大きな注目を集めたのも、タブレット型コンピュータの「プロダクティビティ」ツール的な側面に期待が大きかったからではないだろうか。

 新たにAppleが提案したiPad Pro(従来サイズのiPadも併売される)は、そうしたiPadという商品ジャンルに投げかけられた疑問に対するアップルの回答とも言える。

Apple新モデル iPad Proをお披露目する米Appleのティム・クックCEO

対Surface Pro 3における類似性と独自性

 iPad Proは、iPad Airが搭載するディスプレイの長辺方向が短辺サイズと同一という12.9型の大画面を持つ。画素密度はそのままで、そのまま画面が広がったようなものだ。

 マグネットカプリングで取り付け可能なキーボード機能付き画面カバー「Smart Keyboard」はSurfaceシリーズを想起させるが、マグネットを上手に使ってiPadスタンドとキーボードを1枚で実現している点はやや異なる。

 また現地で聞いた話によると、AppleのSmart Keyboardはキートップを支えるパンタグラフ構造などはなく、表層部のファブリック素材がキー全体を支える仕組みだ。水がすき間から浸潤しないことに加え、メカ構造を持たないことで軽量化しやすい利点があるという。

 実際のタッチはメカ構造を持つものに比べると、フィールに劣る印象もあるが、ストロークは十分に確保され、またキーピッチもフルサイズ(約19ミリ)あることから、慣れればミスタイプすることはなさそうだ。

 本体はマグネットでしっかりと固定されるため、膝の上でタイピングできそうな点もSurface Pro 3と同様だが、側面から観察すると分かる通り、台座となる部分が小さいため、膝上での安定感は落ちるのではないか? と感じた。

 またSurface Pro 3と直接のパフォーマンス比較はできないものの、iPad ProがiPad Airの約2倍というプロセッサパフォーマンスがある。Microsoftが提供するOfficeアプリをハンズオンコーナーで使ってみたが、特にパフォーマンス面で困る印象はなかった。

Apple新モデル iPad Pro用に新開発されたキーボード機能付き画面カバー「Smart Keyboard」。主要キーでフルピッチを確保している
Apple新モデルApple新モデル スタンドとキーボードを1枚で実現している
Apple新モデルApple新モデル カバーを折り畳んだ様子(写真=左)。キーボードショートカット一覧(写真=右)

 なお、Microsoftは今回の発表会に登壇し、iPad Proと同時発表された「Apple Pencil」に対応する新バージョンを用意していることを明らかにした。こちらも実際に使ってみたが、十分な応答性の高さだった。WordとExcelを2画面同時に表示しながら作業する場合、パソコンと区別が付かない程度に性能は出ている。

 さて、このApple Pencil。簡単に言えばペンタブレット機能であるため、N-trigを用いるSurface Pro 3の単純な模倣と思うかもしれないが、実際には独自性が高く、視差も小さく、またペンタッチに対する応答も自然な、まさに「電子鉛筆」というにふさわしい優れたフィールを持つものだった。Appleによると独自技術で開発したもので、タブレット側にもデバイスが必要となる。

 ペンチップ部は2つのセンサーで位置検出などを行っており、ペンの角度を検出する能力がある。例えば鉛筆ツールを選び、Apple Pencilを斜めに傾けて軽くこすると、鉛筆で同様に描いたように「薄く塗りつぶす」ことができる。また遅延時間は極めて短く、文字を書いていて全くストレスがないことは報告しておきたい。

Apple新モデル ついにApple純正のペンタブレット機能が登場。「Apple Pencil」は筆圧対応の手書き機能をiPad Proにもたらす

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