「iPhone 6s」と「iPad Pro」に触れて感じた未来の予兆本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)

» 2015年09月10日 15時30分 公開
[本田雅一ITmedia]

発表会場のタッチ&トライで分かったこと

 Appleが2015年の年末に向けて販売する一連の新製品を発表したニュースは、既に本誌PC USERでもリポートされている通りだ。Apple自身のWebページや発表イベントの映像を見れば、その概要をつかむことができる。

 筆者は今回、米サンフランシスコでの発表イベント後に各製品を体験できたが、やや保守的なアップデートが続いていたAppleが、久々にイノベーションに挑戦した年だったように感じた。単純に新技術を取り入れるだけでなく、ユーザー体験として、新しい世界観を描こうとしている。

 本誌読者向けには、その中からiPhoneとiPadについて実際の製品に触れながら、それぞれの注目点について書き進めていきたい。

Apple新モデル 専用のキーボードカバーとペンが用意される12.9型大画面の「iPad Pro」

新たなUIの進化を示した「iPhone 6s」シリーズ

 発表イベントの映像だけを見ていた読者は、恐らく「iPad Pro」や新型「Apple TV」のほうに強い印象を感じたかもしれない。しかし、実際に製品に触れてみると、思った以上に「iPhone 6s」シリーズの進化度合いが大きかった。

 なぜなら「3D Touch」と名付けられた新機能の使い方がうまく、成熟感が高まってきていたスマートフォンに、新たな進化の可能性が見え始める、地味ながら可能性を広げる機能であることが、Appleの実装を見て理解できたからだ。

 また、直接のライバルであるSamsung、あるいはAndroidプラットフォームとの差異化という面でも、今後、大きなポイントとなっていくと考えられる。

Apple新モデル iPhone 6をベースに、「3D Touch」などの新機能を追加した「iPhone 6s」

 iPhone 6sシリーズは予想された通り、「より高速なプロセッサ」「より高速なグラフィックス」「より認識速度が速い指紋センサー」などを搭載する「よりよいiPhone 6」に他ならず、全く新しいハードウェアを期待していた読者の中には、残念に感じた人もいたかもしれない。

 しかし、新たに投入した3D Touchという機能は体験すればすぐに理解できるよさが備わっている。3D Touchとは、「Apple Watch」や「新しいMacBook」のトラックパッドに採用されている「Taptic Engine」と「感圧タッチ(Force Touch)」により、ディスプレイに加えた圧力の大きさに応じて異なる動作を可能にしつつ、感触を振動で指先にフィードバックするメカニズムを組み合わせた技術だ。

 指が触れている面積の変化を検出することで、指を押しつける強さを判別するソフトウェア技術もあるが、アップルの技術はもう一歩進んでハードウェアとの組み合わせで、押し下げる強さをより正確に検出できるようだ。

 これにより画面上の指に力を入れて押し下げたときに特定の機能が働き、さらに強く押し込むと、また別の機能へと遷移するという機能が使える。この2段階の操作は、Taptic Engineで指先に押した感覚として伝わる設計だ。

 Taptic Engineがあることで、操作する力のしきい値が明確に体験できるようになり、名前の通り奥行きを指先でコントロールできる。上下左右に加えて深さに指先でアクセスできるような、新しい操作領域を簡単に使いこなせるようになるのだ。

Apple新モデル iPhone 6sシリーズは新たに3D Touch機能を搭載。画面上の指に力を入れて押し下げたときに特定の機能が働き、さらに強く押し込むと、また別の機能へと遷移するという機能が使えるようになった。

 3D Touchによる操作はiOS側でハンドリングされ、「Peek」と「Pop」という2つの操作に割り当てられ、アプリケーションごとの機能へとつながるよう設計されている。加えてホーム画面でも活用されており、アイコンを押し下げることでアプリケーションのアクションメニューが現れ(Pop)、SNSクライアントなら直接ツイートや書き込みを行えたり、メッセージ送信など特定機能へとアクセスできるようになった。

 各アプリケーションの実装は、例えばメールアプリの場合、メール一覧で目的のメッセージをギュッと押し下げると「カツン」と振動が指に伝わり、メッセージをPeek(のぞく)ためのプレビュー画面が表示される。

 そのまま指を離せばのぞき窓は自動的に閉じられ、メール一覧へ自動的に戻る。しかしPeek画面からさらに強く押し下げると、今度はさらに強めの「カツン」が指に伝わり、メッセージを開いたときと同じように振る舞う。

 またPeekの状態から、表示しているメッセージに対するアクションを示すことも可能で、Peekしながら指を左右にスワイプすると、メッセージの削除や未読化といった操作がワンタッチでできる。さらに上にスワイプさせると、メッセージに対する操作アクション一覧が出てくる仕組みだ。

 こうした操作は、基本概念は統一されつつも、アプリごとに実装が異なり、例えばビデオであれば一覧からPeekに入り、さらに強く押し下げると動画が再生される、あるいは新機能の「Live Photos」(前後1.5秒を同時記録した静止画)の再生などが行えた。

 もちろん、高速化やカメラの性能向上、ボディ素材に「Apple Watch Sport」で導入した技術(新しいアルミ素材やガラス表面加工)を導入するといった進化もあるが、3D Touchはスマートフォンとそのアプリに新しい可能性を広げるものになるだろう。

Apple新モデル 「S」入りのiPhoneロゴ以外、背面のデザインに変化は見られないが、ボディの素材は強度の高い「7000シリーズアルミニウム」を採用した
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