ポータブックは究極の“ニッチガジェット”か? 「XMC10」徹底レビューポメラでアレができたらいいのに、をかなえる(3/4 ページ)

» 2015年12月17日 12時17分 公開
[瓜生聖ITmedia]

ポータブックが活躍するシーンは?

 ではそんなポータブックが活躍するシーンはどんなときだろうか。

 もちろん、ポータブックがPCである以上、用途はいくらでもあるわけだが、正直、なんでもこなせるほどのスペックではない。だが、ポータブックはノートPCだけでなく、タブレットだったり、キングジム自身のポメラだったりとも競合する、究極のニッチ製品でもある。既存の機器に対して不満を感じる、次のような人はポータブックが福音となるかもしれない。

1280×768ピクセル表示に対応した8型液晶を搭載するポータブック。どんな場面で活躍する?

1、ビジネスシーンで携帯するPCに不満を持っていた人――ポータブック vs. ノートPC

 そもそも開発者自身が「出張に持っていくPCに必要な機能・性能」を求めて製品化したというポータブックであるから、ビジネスパーソンが出先に持っていくPCとしてよく練られた仕様になっている。

 まず持ち運びの容易さ。ポータブックはA5サイズ、約830グラムというボディ自身の小ささ、軽さだけでなく、極力付属品を持ち歩かなくて済むように考慮されている。その1つがUSB充電だ。

 ポータブックは省電力といってもPCだ。乾電池で20時間以上動作するポメラに比べると、バッテリー駆動時間は5時間以上(JEITA 2.0計測による公称値)と、かなり短くなっている。

 だが、それを補うのがモバイルバッテリー(5V/2A)にも対応したMicro USB充電コネクタだ。スマートフォンやタブレットならいくらでもモバイルバッテリーがあるのに、ノートPCに使用できるものとなると非常に限られてしまう。12V〜19Vの出力に対応する必要があるためだ。さらにノートPC自体のバッテリー容量が4000〜8000mAh程度あるため、14000mAh以上の大型のものになってしまう。

 USB充電が可能だと、スマートフォンなどとACアダプタや充電用USBケーブル、モバイルバッテリーを共有できる。充電するためのアクセサリを持たないわけにはいかないが、スマートフォンなどと個別に用意するよりも荷物は少なくて済む。

2、タブレットに「もう一声」がほしかった人――ポータブック vs. タブレット

 eMMC 32GB、メモリ 2GBでOffice Mobile搭載というスペックは、タブレットが競合となるかもしれない。タブレットとしては8型のディスプレイは小さめだし、約830グラムという重量は重たい。しかし、インテル x64アーキテクチャであるAtom x7-Z8700を搭載し、Windows 10が動作する利点は大きい。Windowsの豊富なアプリケーションが利用できるからだ。メインのWindowsマシンを別に持つ場合はなおさらだ。

 そうなるとタブレットの中でも、同じCPU/OSを搭載するSurface 3が対抗馬として浮上してくる。Surface 3はスペックだけ見ると10点マルチタッチ対応の10.8型ディスプレイ(1920×1280ピクセル)、メモリ 2〜4GB、ストレージ 64〜128GB、バッテリー駆動時間9時間と、ポータブックよりもハイスペックだし、タイプカバーを付けると価格的にもぎりぎり競合する。

 正直、これはならばSurface 3でいい、と思う人は多いだろう。だが、ポータブックにはポータブックの利点がある。

 1つはフルサイズのアナログRGB/HDMI出力を搭載していること。ビジネスでは客先のプロジェクターでプレゼン資料を表示することはよくあるが、その場合にアナログRGBのD-Sub 15ピンケーブルだけがプロジェクタから伸びていることも多い。

 その一方でプロジェクターの買い替えの際にHDMIのみにしてしまったところもある。また、変換アダプタ/ケーブルが必要なタブレットだと、コネクタ部分に荷重がかかり、映像が安定しないこともある。客先でのプレゼンを想定したビジネス用途だと、アナログRGB/HDMI両対応が望ましい。

 もう1つがヒザの上でのタイピングのしやすさだ。Surface 3は背面の一部が立ち上がるキックスタンドを採用しているが、個人的な感想を述べると、これをヒザの上でやるのはなかなか難しい。バランスを崩すと横に倒れたり、タイプカバーが外れて本体を落としてしまったりする。スタンドを立てず、完全に開いてしまうという手もあるが、電車の中でやると「さあ私の画面を見てください」とばかりに御開帳している(と回りの人に思われているような)気分になる。

 その点、ポータブックは自立するため、ヒザの上でも快適に利用できる。ただし、ヒンジの可動範囲が120度程度と狭めなので、置き方次第ではディスプレイが見づらいかもしれない。映り込みのないノングレアパネルは屋外や明るいところでも見やすいものの、油膜のようなざらざら感がある。これも好みの分かれるところだろう。

ヒンジの可動範囲は結構狭く、実測で120度程度。姿勢によっては視野角の問題で画面がやや見づらい

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