Astropadを使う準備は簡単だ。まず、iPadにアプリをインストールし、Mac側にはAstropadのWebサイトで配布されている無料のソフトウェアをインストールする。あとは、同じWi-Fiネットワーク上で両方のアプリを立ち上げればいい。これだけで、iPadがMacの液晶ペンタブレットに早変わりする。
Lightningコネクタを使った有線接続にも対応しているが、無線でもそれなりに使えるし、なんといっても取り回しの自由度が素晴らしい。Wi-Fiが届く範囲であれば、お絵描き環境をどこにでも持っていける。ちょっと仕事場を抜け出してリビングで絵を描いたり、トイレに持ち込んだりもできるのだ。ケーブルがなくなるだけで、とたんに「紙のノート」感が増す。
肝心のApple Pencilを使った描き味についてだが、予想以上に筆圧の表現がなめらかで、非常に好感触。細い線がしっかりと出るので、Gペンのような強弱のある表現も自在だ。Cintiq 13HDとの比較だと、筆圧設定を標準よりやや固めにした状態に近いと感じた。
Cintiqとは違ってホバリング時にはカーソルは表示されない。しかし、iPad Proのディスプレイは視差が極めて少なく、紙に描くようなダイレクト感があり、絵を描く上では気にならない。画面側の性能と、ペンの性能──双方がハイレベルなiPad Proには、液タブとしての高いポテンシャルを感じる。普段使っているクリスタをiPadで操作すると、「クリスタがiPadでネイティブに動いたらマジでやばいことになるな……!」と胸が高鳴る。
ちなみにこのAstropad、無線接続だと高速のペン操作にしっかりと追従しないのがちょっと困る。この問題は、有線接続だとそこそこ解消されるが、完璧とはいえない。じっくりペンを入れるようなシーンでは問題ないが、シャシャシャと書くとタイムラグやミスタッチが気になってくる。また、有線・無線を問わずキャンバスの移動などの際にブロックノイズがでる。環境によるのかもしれないが、改善してほしいポイントだ。
とはいえ、誤操作の原因となる一本指のタッチ操作を受け付けないようにする工夫があったり、ブラシサイズの変更をはじめとする各種のショートカットがあったりと、絵を描くための配慮が随所にある。タッチインタフェースとペン操作をストレスなく使い分けることができ、個人的にはワコムのタッチ対応モデルより使いやすいと感じた。
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