ここ数年のPC製品トレンドを見ると、薄型軽量ノートPCやタブレット、その両方を1台でカバーする2in1デバイスが増えつつあり、内蔵ストレージの主流もHDDからSSDに変わりつつある。デスクトップPCでも、自作ユーザーを中心として、システムドライブにSSDを導入しているケースは多い。
その一方で、ノートPCと組み合わせたり、データ持ち運び用に使ったりするポータブルストレージは、実はまだHDDというユーザーも少なくないだろう。せっかくPC内蔵ストレージは高速なSSDを使っているのに、外付けストレージが低速なHDDだと、それが作業効率におけるボトルネックになりかねない。予算や容量の問題はあるが、スピードを重視するならばSSDがベターだ。
実際、筆者は普段からポータブルストレージもSSDを活用している。出張先でノートPCから写真データを一時退避させたり、ベンチマークテストプログラムやテスト用の静止画/動画素材などを保存しておいて、レビュー機材にインストールしたりする用途に使っているのだ。
とはいえ、内蔵ストレージではなく、USB接続のポータブルストレージをHDDからSSDに変更することで、どれだけ快適になるかはイメージしづらいかもしれない。そこで今回はこうしたポータブルストレージの使い方において、実際にSSDとHDDでどれくらいパフォーマンスが違うのかを比べてみた。
テストしたSSDは日本サムスンの新モデル「Samsung Portable SSD T3」だ。USB Type-Cポートを搭載し、PCとの接続インタフェースは「USB 3.1 Gen.1」を用いる。つまり、旧USB 3.0相当(信号速度5Gbps、データ転送速度500MB/秒)の速度だ。製品としてのスペックは「データ転送速度最大450MB/秒、HDDの4倍以上」という。
一方、HDDは2.5インチSSD/HDD用の外付けケース(センチュリー「MOBILE BOX:CMB25U3BL6G」)に、Seagate Technologyの2.5インチHDD「ST500LT012」を格納して使っている。PCとの接続インタフェースはUSB 3.0だ。
基本的には、Core i7-6700搭載のデスクトップPC環境でテストしているが、一部ノートPC(ThinkPad X240)環境でもテストした。データコピーの作業はWindows 10のエクスプローラ上で行い、ストップウォッチで所要時間を計測している。
テストに使用したSSD、HDD、メモリカードなど | ||
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機材 | 内容 | |
ポータブルSSD | Samsung Portable SSD T3 250GB | |
ポータブルHDD | センチュリー MOBILE BOX USB 3.0(CMB25U3BL6G)+500GB HDD(Seagate ST500LT012) | |
SDXCメモリーカード | SanDisk Extreme 64GB(SDSDRX3-064G-A21) | |
USBメモリ | pqi U273V 16GB(USB 3.0対応) | |
ファイルフォーマット | exFAT(SSD/HDD/SDXC)、FAT32(USBメモリ) | |
テストに使用したPC環境 | ||
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フォームファクター | デスクトップPC | ノートPC |
製品名 | 自作PC | ThinkPad X240 |
CPU | Core i7-6700 | Core i5-4200U |
メモリ | PC4-17000 SDRAM 16GB(8GB×2)、CFD販売 W4U2133PS-8G | PC3-12800 SO-DIMM 8GB(8GB×1) |
GPU | CPU内蔵(Intel HD Graphics 530) | CPU内蔵(Intel HD Graphics 4400) |
マザーボード | Fatal1ty Z170 Gaming-ITX/ac | − |
USBコントローラ | Z170チップセット内蔵 | CPU内蔵 |
システムSSD | Samsung 840 PRO 256GB(MZ7PD256HCGM) | Samsung 850 EVO 500GB(MZ-75E500B) |
OS | Windows 10 Pro 64bit(TH2) | Windows 10 Pro 64bit(TH2) |
テストSSDのファイルフォーマット | exFAT(デフォルト) | exFAT(デフォルト) |
まずは、ノートPCから約30GBの写真データをPortable SSD T3/HDDへコピーするのにかかる時間(書き込み)を計測した。また、書き込んだファイルを、逆にPortable SSD T3/HDDからノートPCへコピーする時間(読み出し)も計測した。
使用したファイルはデジタルカメラの撮影画像で、複数メーカーのRAWとJPEGが混在しており、ファイル数は2770個、フォルダ数17個だ。
結果は、Portable SSD T3への書き出しが約3分、読み出しが約2分だった。HDDに比べると、書き出しは半分以下、読み出しは3分の1以下の時間で完了している。大容量ファイルのコピーにおける高速化は、はっきりと体感できる圧倒的な差だ。
次は、テスト1の約30GBのファイルがある状態のPortable SSD T3/外付けHDDに、別の外付けSSD(Portable SSD T1)から直接約45GBのファイルをコピーする時間(書き込み)を計測した。
ここでの使用ファイルは、主にベンチマークテストプログラムで、ファイル数は1万2676個、フォルダ数828個だ。
結果は、Portable SSD T3での所要時間が4分弱だった。外付けHDDでは13分以上かかっており、これと比べると1/3程度の時間で終わった。この時間短縮効果は大きい。
テスト1とテスト2でコピーした合計約75GBのファイルがある状態のPortable SSD T3/外付けHDDをノートPCに接続し、SDXCメモリーカード(SanDisk Extreme:SDSDRX3-064G-A21)から直接約2.25GBのファイルをコピーする時間(書き込み)を計測した。
ここでの使用ファイルはデジタルカメラの撮影画像で、ファイル数は568個、フォルダ数は1個。テスト用ノートPCにおけるSDXCメモリーカードのシーケンシャルリード速度は約45MB/秒(CrystalDiskMark 5.1.2の実測値)だ。
テスト結果は、Portable SSD T3での所要時間1分13秒に対し、外付けHDDでは1分23秒と、意外に差が開かなかった。ファイルサイズが比較的小さいことと、ノートPCのSDメモリーカードスロット/SDXCメモリーカードがともにそれほど高速ではないことから、SSDに替えてもそれほど速度の改善はない。
テスト3までにコピーした合計約77.3GBのファイルがある状態のPortable SSD T3/外付けHDDをデスクトップPCに接続し、Portable SSD T3/外付けHDD内にあるPCMark 8のインストールプログラムを実行、インストールが完了するまでの時間を計測した。
PCMark 8のプログラムはZIPファイルで配布されているが、それを解凍した状態で保存してある。PCMark 8フォルダ内には7つのファイル(うち圧縮ファイル3つ)があり、合計サイズは3.85GBだ。
結果は、HDDが1分56秒かかったのに対し、Portable SSD T3では1分19秒で終了した。このテストは、PCMark 8のインストール時に圧縮ファイルが解凍されるため、ストレージ以外の性能も関係するが、1/3程度の時間短縮ができた。
テスト3までにコピーした合計約77.3GBのファイルがある状態のPortable SSD T3/外付けHDDをデスクトップPCに接続し、Portable SSD T3/外付けHDD内にあるPCMark 8のインストールプログラムがあるフォルダをUSBメモリ(16GB、USB 3.0対応)にコピーする時間(書き込み)を計測した。
フォルダ数は2個、ファイル数7個で、合計サイズは3.85GBだ。この環境で使用したUSBメモリのシーケンシャルライト速度は約9.7MB/秒(CrystalDiskMark 5.1.2の実測値)だった。
結果としては、Portable SSD T3とHDDでともに6分30秒以上の時間がかかり、差はわずか7秒だった。コピー先がこうした低速デバイスの場合は、ほとんど差は出ない。
以上、5つのテストでポータブルSSDとポータブルHDDのパフォーマンスを比較した。特に大容量ファイルのコピーでSSDのアドバンテージが発揮されている。SDXCメモリーカードやUSBメモリなど、データをやりとりするメディアが高速でない場合、それに引きずられて十分な性能が出せないこともあるが、日常的なPC作業の時間短縮に大きく貢献するはずだ。
次のページからはPortable SSD T3をより細かくチェックしていこう。
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