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米Microsoftの「Build」は、かつてのWindows開発者会議「PDC(Professional Developers Conference)」の流れをくむ、いわば同社のメインイベントだ。多くの参加者はOSやクラウドなど、Windowsに関する最新の話題を期待しているだろう。一方で、過去2年ほどの同イベントを眺めていると、このメインストリームからは少し外れた話題が増えてきた印象がある。
2016年のBuildを取材して、特にいい意味で裏切られたと思ったのが、「Bot Framework」や「Cognitive(認識) Services」といった一連の発表だ。これらはコンピュータを単なる直接的な生産性向上ツールに限らず、「Companion(相方)」として幅広く活用する方向性を示している。
なぜ今、こうした新しいコンピュータの活用方法が注目され、Microsoftや開発者にとって大きな意味を持つようになってきたのだろうか。
NUI(Natural User Interface)は長年にわたってMicrosoftが主要な研究テーマとしているものの1つで、より自然な形でユーザーとコンピュータが対話できるようにすることを目指している。
かつてはキーボードやマウスといった専用の入力装置でPCを操作していたが、スマートフォンやタブレットの比率が増えるにつれ、ペンやタッチパネルといったより直感的な入力方式の利用が広まってきた。
最近では「Kinect」のように3Dカメラを利用したジェスチャー操作や視線移動を利用した「Gaze Tracking」の仕組み、さらには「Oculus Rift」に代表されるVR(仮想現実)対応のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を使った没入型デバイスの登場など、NUIの世界も多様化が進みつつある。
そんなNUIの究極形態の1つが「自然言語インタフェース」だ。ユーザーの問いかけや依頼を適切に認識し、それに対応したアクションを実行する。つまりユーザーはコンピュータに対して話しかける、あるいは文章を送るだけで、コンピュータがその意図をくみ取って処理してくれるのだ。
一般的なサービスとしては、Appleの「Siri」やMicrosoftの「Cortana」という形で既に提供されているが、より言語処理能力を強化し、対応可能なアクションを増やしていくことで、今後さらに便利な仕組みとして活用できるようになるだろう。
CortanaやSiriは「パーソナルアシスタント」という秘書的な位置付けのサービスだが、この仕組み自体は非常に応用範囲が広い。Microsoftではこれを「Conversation as a Platform」と呼び、「自然言語インタフェース」や「認識機能」の構築に必要な要素を複数組み合わせ、デベロッパーが自由にこうした仕組みを作れるフレームワークを用意している。
Build 2016の基調講演で行われたデモでは、Skypeのチャットインタフェース上にCortanaが出現して、あたかもWindows 10やスマートフォンのアプリ上でCortanaを利用するのと同様に、さまざまな処理を行う様子が紹介された。
このCortanaに相当する部分を開発者が自由に構築できるようにし、自身のサービス開発に役立つ仕組みとして提供されるのが「Cortana Intelligence Suite」だ。
「Microsoft Bot Framework」はその構成要素の1つとなる。これは「Bot」サービスを構築するためのフレームワークだ。Botと言えば、古くは「人工無能」などの名称でチャット型サービスではおなじみの存在だが、TwtterやLINEといったSNS型のサービスにおいても多くのユーザーによって作られたBotが活躍している。これらサービスを少しでも利用したことがあれば、Botに遭遇した経験も少なくないだろう。
Cortanaにはパーソナルアシスタントという「ペルソナ」が与えられているが、ここで構築されるBotには開発者によってさまざまなペルソナを与えることが可能だ。使い方次第でさまざまな用途に応用できる。
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