林信行の「iPhone 7」先行レビューすべてで輝きを増した10世代目のiPhone(2/3 ページ)

» 2016年09月13日 19時00分 公開
[林信行ITmedia]

工芸品の域に達した仕上げの美しさ

 今回、レビューに当たり貸し出しを受けたのは話題の新色、「ジェットブラック」のiPhone 7と通常の「ブラック」のiPhone 7 Plus。いずれも新色だ。どちらの色も美しく、最初から悩まされるハメになった。

 硯(すずり)の上に薄く平らに伸ばした墨汁のようなジェットブラックのiPhone 7は、高光沢を楽しむ漆黒のアート作品にも通じる無限の美しさを感じさせる。個人的にこれまでのiPhoneの中でも最も美しい部類に入ると感じた。

光沢感が美しい新色ジェットブラック

 これだけ心を吸い寄せられる黒はなかなか作れないだろうと思っていたら、Appleはこのジェットブラックの背面をデザインするために、大量生産品とはおよそ思えない9つの工程、時間にして約1時間の製造プロセスを開発したという。

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 ジェットブラックのiPhone 7の見た目は、光沢感のある黒いエレガントな板。目立つ色と言えば、背面のフラッシュの白色とマナーボタンの奥のオレンジ色だけ。画面を消すとディスプレイは完全に本体の色に溶け込んでどこにあるのかすら分からなくなるし、背面のAppleロゴマークも光を反射させないとどこにあるのか分からない暗い鏡面仕上げだ。製品名やホームボタンさえ、使う時以外は完全に溶け込んでしまう。

 頑丈なアルミ素材でありながら、かつてiPhone 3Gシリーズのような軽さを目でも感じさせる。もちろん、指紋がつきやすいという問題はあるものの、趣味のいいクロスを出して、美しい所作で汚れを拭き取るオーナーの姿を連想させる、そんなエレガントさがある。手にした時の「ヌメっ」と「ヒヤっ」が共存した触感も心地よい。

 ジェットブラックは、5種類あるカラーバリエーションの中で、間違いなく際立った存在だ。しかし、もう1つの新色、通常のBlackも美しい。

ブラックのiPhone 7 Plus

 こちらは、シルバー、ゴールド、ローズゴールドの3色同様、きめ細かな梨地(つや消し)加工が施されており、普段は深い炭のような黒でありながら朝陽の青みや、夕陽の赤みを受けてほのかに色づく楽しさもある。

 もちろん、サラっとした触感のツヤ消し加工のおかげで、指紋もつくにはつくがそれほど気になることはない。また、再設計によって本体の上端と下端に寄せることができたアンテナ部が黒く塗られているため、ジェットブラック同様にほとんど目立たなくなっているのもうれしい。

 ちなみにアンテナ部の配色は、シルバー、ゴールド、ローズゴールドの3色ではこれまで通りだが、位置が端に寄せられたおかげで本体を引き締めてみせるアクセントの役割も果たしている。

均整のとれた形状の美しさも復活


 と、ここまでは外装の仕上げの部分の魅力の話だったが、これに加えて、iPhone 7では製品の形状も洗練され、大きく魅力を増した。既にあげたアンテナ部の小型化とエッジへの配置はその筆頭だが、さらにカメラレンズの配置にも美しさを感じさせる。

 iPhoneシリーズの新たな特徴となりつつある突起したレンズだが、ジェットブラックのiPhone 7では、このレンズがまるで硯の上に一垂らしした墨滴のような、製品の美しさを象徴する見た目上の特徴になっているのではないかと思わせる。

 このレンズを美しく感じさせるのは滑らかに隆起した正円という、その形状はもちろん、本体背面の上端までの距離と左端までの距離がほぼ均等という配置バランスの影響もあるだろう。もちろん、美醜の感じ方は人によって大きな個人差がある。ただその一方で、「多様な人々が共通して美しいと感じるものには『数理的な裏付け』がある」と話すファッションデザイナーの松井エリさんの言葉を思い出さずにはいられない。このiPhone 7を眺めているときに感じるのが、まさにそれだ。

 歴代iPhoneの中で、実はiPhone 4シリーズのレンズがこのように配置されており、精巧さを感じさせる美しさを醸し出していた。しかし、LTEに対応したiPhone 5シリーズ以降はAppleもアンテナとレンズの配置に苦労したのかこのバランスが崩れていた。そして今回、iPhone 7になってようやく内部技術や製造技術が追いつき、再びバランスの美を取り戻すことができたようだ。

 一方、iPhone 7 Plusは、画期的なデュアルレンズの採用により、どうしても正円にすることができなかったこともあるのだろう。滑らかな隆起こそ同じだが、まるでゴーグルの中からのぞくロボットの目のような造形になっていて、こちらはこちらでSF未来的なアピールがある。

デュアルレンズを搭載したiPhone 7 Plus

 見た目の美しさでは個人的にはiPhone 7に軍配が上がるが、iPhone 7 Plusも5.5型サイズの大型iPhoneの中では、傑出した美しさを持つ製品と言っていいのではないだろうか。

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