2016年のGoogleを振り返る AlphaGoから虚偽ニュース問題までITはみ出しコラム(1/2 ページ)

» 2016年12月29日 06時00分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 米Googleも、もう創業18年です。2015年には持ち株会社制に移行し、親会社のAlphabetともども大人になってきてはいますが、まだまだ人工知能(AI)や仮想現実(VR)など、IT企業の先頭集団でチャレンジし続けています。

 海外ニュース担当の筆者は、2016年もGoogleについて250本以上の記事を書きました(ちなみにFacebookは130本くらいでした)。2016年のGoogleについて、幾つかのトピックにまとめて振り返ってみます。

google Googleの1年を振り返ります

「AlphaGo」の衝撃でAI技術を見せつける

 GoogleのAI技術を世界に知らしめた囲碁プログラム「AlphaGo」。印象深いのは3月に行われた韓国トップ棋士の李世ドル九段との歴史的な対局ですが、1月にもプロ棋士と対戦して完勝しています。後から考えると、李世ドル氏が1勝できたのはものすごいことだったのかもしれません。

google 1 李世ドル氏がAlphaGoに勝利した対局の棋譜

 米Googleのスンダー・ピチャイCEOは4月、「Googleは“モバイル第一”から“AI第一”の世界にシフトする」と宣言しました。実際に2016年は宣言通り、AIやら機械学習やらディープラーニングやらニューラルネットワークやらに関連する取り組みがたくさん発表されました。

 AIでトップ棋士と囲碁をしたり、気持ち悪い絵を描いたりするだけでなく、読唇(どくしん)など、すぐに社会で役立ちそうな技術も開発しています。

 GoogleはAIにかなり前から取り組んでいますが、2016年は「Googleフォト」「Google Now」「Google翻訳」など、実際のサービスにどんどんAIを採用していったのが目立ちました。

 極め付きは「Googleアシスタント」です。Appleの「Siri」やAmazon.comの「Alexa」、Microsoftの「Cortana」と競う技術なのに、この味気ない名前はちょっとかわいそうですが、ログインしたユーザーの全サービスでの行動履歴を把握しているのはGoogleアシスタントの強み。今後どこまで便利になっていくのか楽しみです。

大企業病? カリスマ的リーダーを失い、Nestを持て余す

 GoogleでAIの中心になっている組織は、2014年に買収した英DeepMindです。ここは今のところ、かなり独立した運営でうまくいっているようです。

 残念なのは、AR技術の「Google Tango(旧Project Tango)」や組み立て式スマートフォンの「Project Ara」など、とんがったプロジェクトを推進してきた先端技術開発チームのATAP(Advanced Technology & Projects)でカリスマ的なリーダーだったレジーナ・デューガン氏がFacebookに引き抜かれてしまったことです。

 その後、Project Araは中止になりました。Google Tangoについては、2017年1月開催のCESで幾つか新端末が発表されるとのうわさもあるので、期待したいところです。

 組織の問題については、もう1つ、スマートホーム企業のNest Labsがあります。2014年に買収したNestはGoogle傘下ではなく、Alphabetのいわゆる「その他」の1つです。普通に考えれば「Android Wear」や「Google Home」などIoT的な事業とNestを一緒にしたいところですが、そうはなっていないところがもやもやしていました。

 そのうち、Nest Labsのトニー・ファデルCEOとNestが買収した企業の従業員との軋轢(あつれき)などのうわさが聞こえてきたと思ったら、結局ファデル氏はCEOを退任してしまいました。現在は元Motorolaのマルワン・ファワズ氏が後任を務めています。

 Googleはロボット事業も順風満帆とは言えません。Alphabetは1月、Googleの“ムーンショット”部門「Google X」をAlphabetのその他部門「X」にし、ロボット事業もXに統合しましたが、不気味かわいいワンコ型ロボットでおなじみのBoston Dynamics(2013年買収)は別扱いでした。そして、3月には売却を検討しているといううわさが出ましたが、今のところ売却していません。

 Xでの自動運転車プロジェクトでも、立ち上げメンバーの最高技術責任者が退社したり、大量に人が切られたりして、大丈夫なのかと思いましたが、Alphabetが12月になって自動運転プロジェクトを「Waymo」という独立子会社にしたと発表しており、当面は存続しそうです。

google 2 Googleの親会社であるAlphabetは、自動運転車プロジェクトを「Waymo」としてスピンアウトしました

AndroidとChromeは融合するのか?

 Android関連では個人的に「Nexus」ブランドの終了「Pixel」ブランドの誕生、そしてPixelがなかなか日本で発売されないというのが一番残念なことでした。Chrome OSがAndroidに統合されるかも……といううわさも気になるところです。

 google 3 AndroidとChromeが統合される日は来るのでしょうか

 Android TVやAndroid Wearについては華やいだ話がなく(というか、Android Wear自体が大丈夫なんだろうかという状態)、1年が終わろうとしています。こちらもCESに期待です。

 12月になって、「Android Things」というGoogleにしては分かりやすい名前のOSが発表されました。名前の通り、IoT(Internet of Things)向けのAndroid OSで、「Project Brillo」がベースだそうです。

 ここでGoogleの動向に詳しい方は、「あれ、OSプロジェクトのFuchsiaは? あれもIoT向けなのでは?」と思ったことでしょう。実はBrilloはNestのプロジェクトだったので、これまた社内調整が必要な案件なのかもしれません。

 恐らく2017年にリリースされるであろう次期Androidは、アルファベットの順番でいくと「Android O」です。Androidの開発コード名に欠かせないお菓子の名前は、オレオなのかオレンジピールなのか、楽しみではあります(オレオになったら、2月にライセンス契約が終了になった山崎製パンは残念だろうなぁ……)。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年03月29日 更新
  1. ミリ波レーダーで高度な検知を実現する「スマート人感センサーFP2」を試す 室内の転倒検出や睡眠モニターも実現 (2024年03月28日)
  2. Synology「BeeStation」は、“NASに興味があるけど未導入”な人に勧めたい 買い切り型で自分だけの4TBクラウドストレージを簡単に構築できる (2024年03月27日)
  3. ダイソーで330円の「手になじむワイヤレスマウス」を試す 名前通りの持ちやすさは“お値段以上”だが難点も (2024年03月27日)
  4. 「ThinkPad」2024年モデルは何が変わった? 見どころをチェック! (2024年03月26日)
  5. ダイソーで550円で売っている「充電式ワイヤレスマウス」が意外と優秀 平たいボディーは携帯性抜群! (2024年03月25日)
  6. 日本HP、個人/法人向けノート「Envy」「HP EliteBook」「HP ZBook」にCore Ultra搭載の新モデルを一挙投入 (2024年03月28日)
  7. 次期永続ライセンス版の「Microsoft Office 2024」が2024年後半提供開始/macOS Sonoma 14.4のアップグレードでJavaがクラッシュ (2024年03月24日)
  8. サンワ、Windows Helloに対応したUSB Type-C指紋認証センサー (2024年03月27日)
  9. 日本HP、“量子コンピューティングによる攻撃”も見据えたセキュリティ強化の法人向けPCをアピール (2024年03月28日)
  10. そのあふれる自信はどこから? Intelが半導体「受託生産」の成功を確信する理由【中編】 (2024年03月29日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー