なぜ「削除して終わり」ではいけないのか 炎上で「一発アウト」なSNS時代に思うこと

» 2017年02月11日 06時00分 公開
[波戸みつるITmedia]
日々炎上するSNS時代(いらすとや)

 冷蔵庫に入って炎上、他人の著作物を盗用して炎上、ブログで暴言を吐いて炎上……SNS時代ともいえる現在のインターネットでは「炎上」の話題に事欠かない。

 炎上は企業も個人も問わない。何かしらたたける要素があれば、法的な解釈は置き去りにSNSで拡散されていく。

 日々そのような炎上案件を見ていると、「それでは延焼してしまうだろうに」と思ってしまうような対応が見受けられる。

 それは「説明や謝罪などのしかるべき対応もなく、炎上ツイートや当該記事をただ単に削除して終わりにする」というものだ。

 「拡散される火元を消せば炎上はなくなるだろう」と思ったがゆえの行動なのかもしれないが、それは誤解だ。なぜなら、今のWebには「Web魚拓」と呼ばれるページ保存サイトがある。その時点でのWebページがWeb魚拓サービスに保存されるので、後からページを削除しようが「魚拓」が半永久的に残るため、「削除」という対応をしても、決してなかったことにはできないのだ。(ただし、ツイートなど後から編集できないものに関しては、新たな誤解を生むことを避けるために、条件付きで削除することがベストな場合もあるだろう。)

Webメディアが記事を消さない理由

 立場が少々異なる話をするが、Webメディア(少なくともアイティメディア)は極力記事を削除しない。それは一度公開したものを削除したところでなかったことにはならないし、そもそもそれ以前に、編集記事には責任を持たなければならないからだ。

 もしも記事内で事実誤認など間違いがあれば、それは記事内で修正し、適宜おわびをする。記事を消すのは「その発言に責任を持ちません」と言っているのと同じだし、消してしまうと後から記事を見に来た人に事情も伝わらない。間違ってしまったことを笑われようと、その記事を正しい形に修正していくのが編集者の責任だと理解している。

 例えば、記事に誤報である可能性が出てきたら「調査中」であることを書く。修正すべき点が分かったら修正する理由を明記した上でどこをどう修正したかを明確にする。必要であれば追加で取材した内容をその記事に追記していく。などが商業メディアとして正しい対応だ。

 SNSの炎上とはやや違う文脈だが、ニコニコ動画には「消すと増えます」という有名なフレーズもある(動画を版権元都合で削除するとかえって注目を浴び、同じ動画が複数のユーザーからアップロードされること)。ネット上の情報は消えることはなく、増えるものだと考えるべきだ。

個人が間違えたらどうする?

Twitterが炎上してしまった時は?(いらすとや)

 そんなことを言っても、それはメディアの話で、個人がそこまで責任を持つ必要があるのかという問いもあるだろう。アカウントやブログを消せば、それ以上現実の情報までたどられまい……と考える気持ちも分かるが、炎上すると往々にして削除より魚拓のほうが早い。それも、個人情報につながる部分ほど確実に保存されているものだ。

 であれば、個人であっても「単に削除して終わり」にするのではなく、ブログ記事であれば内容を追記して修正したり、ツイートであれば削除後に事情説明や謝罪を行って、その旨を自分のプロフィールページ上部にしばらく固定表示しておいたりするなど、より誠実な対応方法について考えた方が良いはずだ。

 もちろん、炎上の程度にかかわらず、探ってさらせる情報は全てさらすという行為自体にも問題はあると思う。「こいつは罪を犯したから何をしてもいい」はSNS時代の私刑だ。一度犯した失敗が長期に渡ってネット上を漂い続け、検索結果に表示され続ける現代は、回復の利かない「一発アウト」の息苦しさがある。

 こうした問題をどう解決するべきかは、私の中にも答えがない。ただ、私自身、真偽不明な情報や、言い分に疑問を感じる商品について、問題を提起する記事を過去にいくつも書いているので、「この案件の問題点は何か」に加えて、「落とし所はどこなのか」を考えることをいつも意識している。

 炎上は良くも悪くもSNS時代の産物だ。できれば無縁でいたいものだが、不意に訪れる不測の事態に陥ったときに、自分ならばどう振る舞うかを考えておくことは、ネット上で発信する全ての人にとって重要な意味を持つのではないだろうか。

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